慢性痛治療の専門医による痛みと身体のQ&A

椎間板性腰痛NEW

Q:椎間板性腰痛には、どのような「痛み方の特徴」がありますか?

前屈みになる時や、座っている姿勢が続く時に痛みが強くなるのが特徴です。

朝の洗顔での前屈みや、車の運転中などに強い痛みが出やすくなります。また、長時間のデスクワークや中腰の姿勢などで腰への圧迫感が強まり、「いっそ立っているほうが楽だ」と感じるほど、座り続けることが苦痛になる方もいらっしゃいます。

腰の奥がズーンと痛い、座る姿勢から立ち上がる時に痛い、朝よりも使っているうちに痛みが強くなる、などの症状も多く見られます。

Q:椎間板性腰痛と椎間板ヘルニアとの違いは何ですか?

大きな違いは「椎間板そのものが痛い」のか、「飛び出した椎間板が神経を圧迫している」のかという点です。

椎間板ヘルニアの場合、椎間板の中身が飛び出して神経を圧迫するため、腰の痛みに加えてお尻から足にかけて電気が走るような痛みや、足のしびれが生じることが多くなります。

一方で、椎間板性腰痛は「クッションである椎間板そのものが傷んで痛い状態」であり、腰の奥の痛みや、長時間座る・前かがみになる・立ち上がるときの痛みが中心になります。基本的には足先までビリビリしびれるといった強い神経症状を伴うことはありません。

Q:自分が椎間板性腰痛かどうか、セルフチェックする方法はありますか?

以下の特徴に複数当てはまる場合、椎間板性腰痛の可能性があります。

□ 腰の奥がズーンと痛い
□ 前かがみになる姿勢で痛い
□ 長時間座っていると腰がつらくなる
□ 座っている状態から立ち上がる時に痛い
□ 足先の強いしびれや麻痺はないが、腰そのものが痛い

ただし、腰痛は原因が多く、筋肉や椎間関節、仙腸関節などの問題や、内臓由来の痛みが隠れていることもあります。安静にしていても痛みがどんどん強くなる場合や、足に力が入らない、発熱があるような場合は、早めに専門医に受診して確認することが重要です。

Q:整形外科でMRIを撮っても「大きな異常はない」と言われましたが、痛みはひどいです。なぜでしょうか?

腰痛でお悩みの方が病院を受診すると、一般的なMRI検査では「ヘルニアや脊柱管狭窄といった異常は見当たらない」「正常に近い」と言われてしまうことが非常に多くあります。

しかし、画像を注意深く見ていくと、腰の椎間板の内部や周囲に「モヤモヤ血管(異常な新生血管)」と呼ばれる異常な血管の増加が見られることがあります。実は、この見えない炎症による異常な血管の増加が、長引く激痛の本当の原因になっているケースが少なくないのです。

一方で気をつけなければならないのが、画像上の「異常」が必ずしも痛みの原因ではないという点です。例えば、MRI画像で椎間板が傷んで「黒く(変性して)」写っていたとしても、それが痛みの原因とは限りません。

なぜなら、腰が全く痛くない健康な方であっても、年齢やこれまでの負担の蓄積によって椎間板が黒く写ることはよくあるからです。

つまり、画像で椎間板が黒くなっていても、本当の痛みの原因は「別の場所にできたモヤモヤ血管」や「他の筋肉・関節の問題」であることも多いのです。

そのため、画像の結果(椎間板が黒いかどうかなど)だけにとらわれることなく、実際の「症状の出方」や「痛む動作」「診察での身体の反応」などをパズルのように組み合わせ、痛みの本当の原因を正確に突き合わせる「総合的な診断」が非常に重要になります

仕事に大きな支障が出ていた腰痛が、劇的に改善したカテーテル治療の症例

Q:椎間板の中に「血管」ができると聞きましたが、それが痛みの原因ですか?

その通りです。正常な椎間板の内部には、基本的に痛みを感じる神経は多くありません。

しかし、長年の中腰姿勢や繰り返しの負担によって椎間板に微細な損傷や亀裂が生じ炎症が続くと、本来少ないはずの「異常な血管」が「神経」と一緒になって椎間板の中に入り込んで増殖してしまいます。この増えた異常な血管と神経の周りでは慢性的な炎症が起きており、神経が過敏になっているため、長引く激痛の原因となってしまうと考えられています。

Q:椎間板性腰痛の治療法はありますか?

椎間板性腰痛の治療には、大きく分けて「一般的な保存療法」、「痛みの原因へ直接アプローチする注射や手術」、そして長引く痛みに向けた「新しい根本治療(カテーテル治療)」などの選択肢があります。

1 基本となる「保存療法」

まずは、薬で痛みを和らげながら、理学療法(リハビリ)や体幹トレーニング、姿勢・動作の指導を受ける方法が基本となります。 椎間板性腰痛で気をつけたいのは、「痛いから動かない」という状態が続くことで筋力が低下し、結果的に「さらに腰に負担がかかる」という悪循環に陥ってしまうことです。 そのため、痛みをうまくコントロールしながら、無理のない範囲で体を動かし、腰を支える力を少しずつつけていくことが非常に重要です。具体的には、太ももの裏(ハムストリング)のストレッチを行って骨盤を前傾させて正しく立てる柔軟性を高めたり、四つ這いのエクササイズで腰を支える筋肉(多裂筋など)の働きを高めることが有効とされています。

2 痛みの発生源に直接アプローチする「ブロック注射(椎間板ブロック)」

リハビリなどの保存療法を行っても強い痛みが引かない場合、痛みの原因となっている椎間板そのものに、局所麻酔薬やステロイド薬を直接注射する「椎間板ブロック」という方法が検討されることがあります。痛みの原因となっている場所に直接薬を届けることで、一時的に強い炎症や痛みをピンポイントで抑える効果が期待できます。

3 ダメージのある組織を除去する「内視鏡手術」

注射やリハビリなどの治療を尽くしても改善せず、日常生活に大きな支障をきたしている場合には、外科的な手術が選択肢となることがあります。近年では、背中から内視鏡と呼ばれるカメラ付きの細い管を挿入し、痛みの原因となっている椎間板の傷んだ組織(ダメージのある部分)だけを削り取って除去するような、従来の手術よりも体への負担を減らした低侵襲な手術も行われるようになっています。

4 長引く腰痛に対する「カテーテル治療」

しかし、こうしたリハビリや注射を続けても痛みがなかなか改善せず、長年お悩みの方も少なくありません。また、「できれば手術は避けたい」という方も多くいらっしゃいます。 本来、正常な椎間板の内部には痛みを感じる神経や血管は存在しません。しかし、長年の負荷によって椎間板が損傷すると、その修復過程で異常な血管が神経とともに椎間板の内部にまで入り込んで増殖し、これが長引く激痛(モヤモヤ血管による痛み)の原因になることが分かっています。

従来の治療を続けても満足のいく結果が得られずにお困りの場合は、我慢せずに、この痛みの原因である異常な血管を直接減らす「腰のカテーテル治療」などの新しい治療の選択肢もぜひ検討してみてください。

仕事に大きな支障が出ていた腰痛が、劇的に改善したカテーテル治療の症例

ドクターが自ら腰痛のカテーテル治療を受けた密着動画をご紹介しますので、こちらもぜひご覧ください。

カテーテル治療の密着&ドクターによる解説
カテーテル治療 その後の結果

Q:椎間板性腰痛の日常生活で「避けるべき姿勢」などはありますか?

椎間板性腰痛では、前かがみになる姿勢や、長時間座り続けること、中腰の姿勢の繰り返しなどが腰への圧迫感を強め、痛みを悪化させやすいです。デスクワークの際も同じ姿勢を続けず、適度に立ち上がったり、座ったままのストレッチを取り入れて、腰回りが固まるのを防ぐよう工夫してみてください。

Q:椎間板性腰痛に効果的な「ストレッチ」や「リハビリ」を教えてください。

椎間板性腰痛を予防・改善するためには、日頃の「こまめなケア」に加えて、腰への負担を減らす「正しい姿勢(アライメント)」と、それを支える「柔軟性と筋力」を取り戻すことが重要になります。

そもそも椎間板への負担は、骨盤が後ろに倒れ(骨盤後傾)、腰の自然な反りが失われた状態で丸まった姿勢を繰り返すことで大きくなります。そのため、以下の4つのステップを意識したリハビリやストレッチが効果的です。

1 デスクワーク中のこまめなケア(筋肉の緊張をほぐす)

長時間のデスクワークなどで同じ姿勢が続く方は、筋肉が固まってしまうのを防ぐために、30分に1回程度座ったままできる簡単な運動をおすすめします。 姿勢の軸を保ったまま、座面からお尻を片方ずつキュッと交互に持ち上げる動きを5回ずつほど行うと、腰回りの筋肉が伸び縮みしてほぐれます。 また、お腹(おへそからみぞおちの間の中心部分)を優しく指で押さえて皮膚を動かすようにマッサージするのも効果的です。お腹側の筋肉が硬くなると前屈み姿勢になりやすく、背中側の筋肉が引き伸ばされて腰に負担がかかるため、ここを柔らかく保つことで腰痛の予防や痛みの軽減につながります。

2 骨盤を正しく立てる練習(アライメントの改善)

椎間板への負担を減らすには、丸まってしまった骨盤をしっかり「前に傾けて立てる(骨盤前傾)」ことが重要です。座った状態で、骨盤を後ろに倒した状態から、グッと前に傾けて骨盤を立てる練習(骨盤前傾エクササイズ)を行ってみてください。この時、背中の筋肉だけでなく、お腹の奥の筋肉(腸腰筋など)も使って骨盤の姿勢をキープすることが大切です。

3 太ももの裏(ハムストリング)のストレッチ

実は、骨盤をしっかりと立てるためには、太ももの裏側にある「ハムストリング」という筋肉の柔軟性が必要です。ここが硬いと、骨盤が下に引っ張られて後ろに倒れてしまいます。生活に取り入れやすい方法として、「椅子に座ったまま行うストレッチ」があります。骨盤をしっかりと立てて腰の自然な反りを保ったまま、片方の膝をまっすぐ伸ばしてみてください。この時、腰が丸まってしまうと効果が半減したり逆に腰を痛める原因になるため、痛みのない範囲で「骨盤を立てたまま」行うことがポイントです。

4 腰を支えるインナーマッスルの強化

痛みが落ち着いてきたら、腰回りを安定させる筋肉(多裂筋など)を働かせる運動も取り入れましょう。例えば、四つ這いの姿勢になってから、片足を後ろにまっすぐ上げる運動などは、腰を支える筋肉を無理なく目覚めさせるのに効果的です。

ただし、ストレッチや運動中に痛みが出る場合(特に骨盤を立てようとして痛む場合など)は無理をしてはいけません。まずは専門の医師や理学療法士にご相談いただき、「痛みが強いときは無理をせず、少し良くなったら正しい動きを取り戻す」というステップを踏むことが、根本的な改善への近道です。

Q:ブロック注射や痛み止めが効きません。椎間板性腰痛の根本的な治療はありますか?

異常な血管(モヤモヤ血管)が増えてしまって生じている腰痛は、椎間板ブロック注射やリハビリ、一般的な痛み止めでは改善が難しいのが特徴です。
根本的な治療としては、この痛みの原因となっている異常な血管を標的として減らす「カテーテル治療」が有効であることが知られています。

カテーテル治療は、足の付け根などから直径1mmに満たない極細のチューブ(カテーテル)を血管の中に入れ、痛みを発生させている腰の患部まで進め、異常な血管(モヤモヤ血管)を減らすお薬を流す治療です。

全身麻酔ではなく局所麻酔で行い、点滴の針のような小さな傷しかつかないため、体への負担が非常に少ないのが特徴です。治療自体は30分ほどで終わり、終わった後1時間ほど休憩すればご自身の足で歩いて帰宅できる「日帰り治療」です。日常的に患者さんを苦しめていた腰の強い痛みが劇的に改善するケースも多くあります。

仕事に大きな支障が出ていた腰痛が、劇的に改善したカテーテル治療の症例

著者プロフィール

奥野祐次 M.D., Ph.D.(医師・医学博士)

オクノクリニック 総院長

専門分野:慢性疼痛、モヤモヤ血管に対する血管内治療、カテーテル治療・動注治療、画像診断(MRI・エコーを活用した精密な痛みの診断)

2006年3月、慶應義塾大学 医学部 卒業。2008年より放射線科医として血管内治療に従事し、2012年3月、同大学大学院医学研究科博士課程を修了(研究テーマ:「病的血管新生」)。同年4月より江戸川病院にて運動器疾患に対する血管内治療を専門に担当。2014年には同院「運動器カテーテルセンター」センター長に就任。2017年10月、神奈川県・センター南にて「オクノクリニック」を開院。
現在東京を中心に全国10院を運営するオクノクリニックの総院長。運動器カテーテル治療の専門医として、長年にわたり痛みに悩む患者の治療に取り組んでいる。

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奥野祐次(医師)

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