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恥骨結合炎(恥骨炎)
Q:走り終わってから恥骨が痛くてたまりません。調べたら恥骨結合炎を知りました。恥骨結合炎はどんな症状ですか?
主に鼠径部痛、下腹部痛を呈する疾患で男性のサッカー選手など下肢を使うアスリートに多く、グロインペイン症候群として加療されていることがあります。
症状としては鼠径部の柔軟性低下、鼠径部や恥骨部の鈍い痛み・圧痛があり、重症例では走ったり、蹴ったり、方向転換、立ち上がり動作などの日常的な動作でも鋭く刺すような痛みが生じます。非感染性な事が多いですが、感染契機に炎症を来す場合には発熱も伴うことがあります。
Q:恥骨結合炎になる原因は何ですか?
スポーツ以外にも帝王切開などの婦人科手術や泌尿器科手術など骨盤に関する侵襲的処置の合併症としても知られています。恥骨結合には腹直筋や内転筋等の複数の筋肉が付着し、これらの慢性的なストレスによって炎症が起こるとされています。炎症部位には異常な血管が増えています。血管と神経は、対になって一緒に増える性質があるため、痛みが生じます。
■恥骨結合炎・恥骨炎になる原因■
・スポーツ(サッカー、ラグビー、アメリカンフットボール、中・長距離ランナー)
・婦人科・泌尿器科手術
・妊娠・出産
・感染
・外傷
・リウマチ性疾患
・筋肉のアンバランス
Q:診断方法について教えてください。
まず触診にて恥骨結合部の圧痛を確認します。次に非侵襲的な検査として超音波検査を行う事もありますが、炎症像が上手く描出されないことが多いです。MRI検査は骨髄浮腫をよく反映し、恥骨結合の不整や炎症の範囲も把握することが出来、周囲の付着する筋肉の損傷なども把握出来るため診断に必須な検査です。
また、レントゲン検査やCT検査では恥骨結合の不整や拡がりで炎症の可能性が示唆されますが、初期には変化が見られないことがあります。
Q:治療方法について教えてください。
保存的加療として安静、抗炎症薬の投与、ストレッチ、股関節周囲のマッサージ、筋肉強化、鍼灸など多岐に渡ります。
重症例や保存的加療で改善が乏しい症例では恥骨結合の楔状切除などの外科的介入が行われる事もありますが(2)、術後慢性的な痛みや感染症、会陰部の腫れなどを引き起こす可能性があり、強くおすすめできません。
最近になって、このような治りにくい恥骨結合炎・恥骨炎に効果的な運動器カテーテルという治療法も普及しています。
詳しく知りたい方は以下の治療実例のページもご覧ください。
Q:治療期間はどれくらいでしょうか?
保存的加療を行って約3ヶ月でスポーツ復帰できることが多いですが、難治性の方は数年単位で痛みが続くこともあります。5~10%の方で改善が乏しく外科的介入を検討される事があります(2)。
Q:恥骨結合炎に効くストレッチ方法はありますか?
■大内転筋ストレッチ
両足の裏を合わせて股関節を開いて座ります。
痛みのない範囲で、できるだけ膝を曲げ、膝は床に近づけるようにします。
股関節(脚の付け根)から曲げるように、体を前に倒します。
そうすると太ももの内側が伸びて張ってきます。
伸びて気持ちいい感じがするところでゆっくり呼吸をしながら20秒間止めます。
痛みの出ない範囲で行うようにしてください。
背中が丸くならないように注意してください。
■長内転筋ストレッチ
両足の裏を合わせて膝が90°くらいになるように曲げて座ります。
痛みの出ない範囲で膝を床に近づけます。
股関節(脚の付け根)から曲げるように、体を前に倒します。
そうすると太ももの内側が伸びて張ってきます。
伸びて気持ちいい感じがするところでゆっくり呼吸をしながら20秒間止めます。
痛みの出ない範囲で行うようにしてください。
背中が丸くならないように注意してください。
■薄筋ストレッチ
膝を伸ばしたまま、痛みの出ない範囲で股関節を開いて座ります。
太ももの裏に痛みが出る場合は、軽く膝を曲げても構いません。
股関節(脚の付け根)から曲げるように、体を前に倒します。
そうすると太ももの内側が伸びて張ってきます。
伸びて気持ちいい感じがするところでゆっくり呼吸をしながら20秒間止めます。
痛みの出ない範囲で行うようにしてください。
背中が丸くならないように注意してください。
■腹直筋ストレッチ
うつ伏せになります。
ゆっくり上体を起こします。
痛みが出ない範囲で胸を正面に向けるようにし、お腹につっぱり感を感じたところでゆっくりと10秒間呼吸しながら保持します。
Q:恥骨の痛みがなかなか改善されません。ストレッチやアイシング以外に根本的に治療する方法はありますか?
早期に正しく治療されなければ、スポーツ選手としてのキャリアが絶たれたり、プレーの将来が不透明になったりする可能性があります。
前述した通り、保存的加療で改善しない場合は外科的介入が検討されますが侵襲性は比較的高く、術後の安静期間も数ヶ月要する場合もあります。最近では、術後の安静期間も短い運動器カテーテル治療が注目されています。この治療は、局所麻酔でとても細くて柔らかい点滴のようなチューブ(カテーテル)を血管に進めて、炎症の原因となっている異常な血管を見つけます。その後、その異常な血管に小さな粒子を投与します。投与後はカテーテルは抜きますので、体の中には何も残りません。カテーテルを挿入した場所を用手止血して治療は終わり、日帰り治療となります。
詳しく知りたい方は以下の治療実例のページもご覧ください。
<参照>
(1) Topol GA, Reeves KD (2008). "Regenerative injection of elite athletes with career-altering chronic groin pain who fail conservative treatment: a consecutive case series". Am J Phys Med Rehabil. 87 (11): 890–902.
(2) Via AG, Frizziero A, Finotti P, Oliva F, Randelli F, Maffulli N. Management of osteitis pubis in athletes: rehabilitation and return to training - a review of the most recent literature. Open Access J Sports Med. 2019;10:1-10.