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有痛性外脛骨(外脛骨障害)
Q:足の内側のアーチのところが腫れていて押すと痛く、有痛性外脛骨と診断されました。これはどういう病気ですか?
足の内側のアーチの中央付近が少し膨らんでいて、その部位が痛くなるのが有痛性外脛骨です。思春期の女性、激しいスポーツを行う方、10歳くらいの若年者に多いといわれています。
安静にしたりリハビリをしたりすることで改善させることが多いですが、中には治りにくくなり、足底板や松葉づえを短期間用いたり、ステロイドの注射をしたり、外脛骨の除去手術を受ける人も一定数いらっしゃいます。
Q:有痛性外脛骨で痛みがあります。そもそも「外脛骨」とはなんですか?
外脛骨は英語では「accessory navicular」と呼ばれます。足の内側のアーチの中央部に生じる過剰骨(本来よりも余計にできた骨)のうちの一つで、外脛骨があること自体は異常ではなく、正常な異形(normal variant:通常とは形が異なっているが病的ではないもの)のひとつです。
人間の身体は成長の過程で、まずは軟骨の塊ができて、次にその内部が骨化していきます。さらにその過程で近くの骨同士が癒合(くっつく)することがあり、ひとつの骨となることがあります。幼少のころに舟状骨という足の内側の骨が出来上がる過程で、本来1つにまとまるはずの骨が別々に分かれたままになってしまうことで、舟状骨の隣に「外脛骨」ができてしまいます。文献によると5-14%の人に外脛骨があるとされています。
この外脛骨ができること自体は異常ではなく、通常のことです。
しかし、一部の人ではこの外脛骨が痛くなってしまいます。その原因については後述しますのでお読みください。
Q:有痛性外脛骨の症状は?
足の内側のアーチの中央部に痛みと腫れ、発赤を伴います。また膨らんだ部位を押すと痛みが出ます。痛い方の足でつま先立ちをすると痛みがでることが多いです。また歩行時の痛みを訴える方が多いです。また症状が強いと夜寝ていても痛い、あるいは足を少し動かしても痛いなどの症状になることもあります。
Q:有痛性外脛骨はどうやって診断しますか?
外脛骨を圧迫して、痛みがあるかどうかを診ます。
また、レントゲンを撮って、外脛骨があるかどうか、その部位を押して痛みが一致するかどうかを診ます。荷重時のレントゲンやMRI、超音波の検査をすることもあります。
外脛骨の分類として、Veitch分類が用いられます。
Type I : 外脛骨が後脛骨筋腱内に存在し、舟状骨とは分離している
Type II : 舟状骨と線維性に結合 このタイプに痛みが出やすいことが知られています。
Type III : 舟状骨に連続し、一部になっている
このうち、Type IIが疼痛の原因になることが圧倒的に多いです。
Q:有痛性外脛骨の原因はなんですか?なぜ痛くなってしまうのですか?
前述のように外脛骨のType2で痛みが出ることが多いです。後脛骨筋腱が舟状骨に付着する部位にあり、後脛骨筋に力が加わるとType2では特に刺激が加わります。過度の運動により外脛骨が過剰な刺激を受けると、外脛骨と舟状骨の間に炎症を生じ、痛みが生じると考えられています。
また捻挫や打撲などの外傷がきっかけで、これまで痛くなかった外脛骨に炎症が起き、「有痛性外脛骨」となることも知られています。
なぜ痛みが出てしまうかについては、患部が腫れたり発赤があることから、炎症が起きていることが考えられます。このような炎症が生じている部位では異常な血管が生じてしまい、神経と一緒になって増え、痛みの原因になることが報告されています。腫れたり赤くなるのも異常な血管ができている証拠と言えます。
リスク因子(これがあると有痛性外脛骨になりやすい)としては、
・扁平足
・サイズのきつめの靴を履いてプレーするスポーツ(陸上、サッカー、バスケットボール、ラグビー、バレーボール、剣道、新体操、バレリーナなど)
・走る、跳ぶ、急に止まるなどの動きの多い競技
・体幹の筋力が弱い
・女性
などが挙げられています。
Q:現在高校2年です。足首を捻挫した後から有痛性外脛骨になり、半年が経過しますが、一向に治りません。なぜ改善しないのでしょうか?
実は有痛性外脛骨では、痛みの原因を根本的に治す治療をしないと良くなりません。
前述したように、ほとんどの場合、「外脛骨」はあっても痛くないのですが、痛みの症状が出る有痛性外脛骨では、外脛骨の周囲に炎症が起きてしまい痛みの原因になっています。このような炎症になっている際は、外脛骨の周囲に異常な血管ができてしまい、それとともに神経が増えるために痛みの原因になっていると考えられます。
最近は治りにくい有痛性外脛骨への新しい治療として、点滴のように非常に細いチューブを用いた運動器カテーテル治療という方法があり、注目されています。
詳しく知りたい方は、このページの下の記事も参考にしていただき、また以下の治療実例のページも参考にしてみてください。
Q:有痛性外脛骨に有効なテーピングやサポーターはありますか?
有痛性外脛骨炎の症状を持つ人の多くは、土踏まず(内側縦アーチ)が低く、踵が内側へ倒れやすい状態となっています。
テーピングでは、踵が内側へ倒れないようにするように貼ることが有効です。外側のくるぶしの下から踵に向かって斜めにテーピングを貼り、踵の後ろ側を通って、内側のすねの真ん中くらいの位置まで貼ります。
また、土踏まず(内側縦アーチ)をサポートするテーピングも有効です。足の裏に貼るテーピングです。細めのテーピングを使用します。1本目は、かかとから足の親指の付け根まで貼ります。2本目は、かかとから足の中指の付け根まで貼ります。3本目は、かかとから足の小指の付け根まで貼ります。このように貼ることで、外脛骨への刺激が緩和されやすくなります。
Q:有痛性外脛骨に有効なインソールはありますか?
有痛性外蹴骨では、踵が内側に倒れてしまい、土踏まずのアーチが低くなることで足の衝撃緩衝能力が低下していることが見受けられます。これにより、外脛骨へのストレスが大きくなると考えられています。踵の内側(母趾側)を高くして踵が内側へ倒れないようにし、土踏まず(内側縦アーチ)を高くするようなインソールを使用すると衝撃緩衝能力が上がり、症状を軽減するのに有効です。
ただし、効果には個人差があるので、専門の医療機関への受診を検討されてください。
Q:有痛性外脛骨に有効なセルフケアはありますか?
舟状骨に付いている筋肉の柔軟性を良くすることで過剰な負荷を軽減することができます。
具体的には、すねの内側から後ろ側にかけてマッサージをすることで負担を減らすことができます。ポイントは強く押しすぎないことです。筋肉をつまんで揺らすようにすることで筋肉やそれらを覆う筋膜、骨膜までほぐれやすくなります。
次に、ここからは後脛骨筋への負担を軽くするためのセルフケアを紹介します。
■足のアーチを引き上げる練習(足部内在筋機能強化)
足趾を曲げるというより地面に押し付けるイメージで足のアーチを引き上げます。
■足首を前に倒すストレッチ(足関節背屈制限の改善)
足関節背屈可動域制限の改善のため、膝を前方へ押し出すように行い、下腿後面をストレッチしてください。膝は足部よりも外側へ行くように意識します。
■ふくらはぎを柔らかくする(後脛骨筋・腓骨筋群の柔軟性改善)
足の裏を内側に向けるように背伸びをします。小趾を意識して踏んでください。痛みがあったり難しい場合は座位で行いましょう。
■股関節を意識したスクワット(中臀筋を始めとする股関節の機能改善)
膝にチューブを巻いてのスクワットです。膝にチューブを巻いてスクワットを行います。チューブが膝を内側に引っ張る力に負けないように膝は正面を向けたまま行いましょう。
Q:有痛性外脛骨には、後脛骨筋が関係していると聞きました。どうしてですか?
有痛性外脛骨の発症には舟状骨に付着する(くっつく)後脛骨筋という筋肉への負担が原因として挙げられます。
後脛骨筋は下の図の色で示したようにふくらはぎの筋肉のひとつで、舟状骨にそのはじがくっついていて、足のアーチ(土踏まずのところが)を支えることや足を内側に向けること(内反といいます)などの作用があります。
通常の場合は、後脛骨筋にそこまで過度な負担はかからないのですが、偏平足(へんぺいそく:足裏の土踏まずにアーチがなく、土踏まずがべたっと地面についている状態)の人では、距骨が内側にでっぱり、舟状骨が反対に外に逃げてしまう状態となり、それらに引っ張られる形で、後脛骨筋に通常以上に負担がかかります。
Q:中学2年です。有痛性外脛骨と診断されました。どのようなことをすると悪化してしまいますか?
痛みがあるのに、スポーツを続けると、さらに悪化することがあります。
また、前述の様に、有痛性外脛骨の痛みは、すねの奥にある後脛骨筋の腱が過剰にストレスを受けることが原因と考えられますので、ふくらはぎからアキレス腱の内側に緊張を感じることがあります。この時に、過剰な後脛骨筋のストレッチを行うと、痛みが悪化することがあります。また、患部を直接マッサージすることも悪化をさせると考えられますので控えましょう。
詳しく知りたい方は専門の医療機関の受診も検討してください。
Q:中学1年です。有痛性外脛骨の痛みが続いています。安静にしているとどれくらいの期間で治りますか?
有痛性外脛骨は安静にしていても改善に時間がかかるとされます。3-4ヶ月はかかる方が多く、またそれでも症状が改善しない場合もあります。半年から数年かかることも珍しくありません。
最近では有痛性外脛骨で生じている異常な血管を標的とした運動器カテーテル治療によって早期に回復できる方が増えています。治療についてはぜひこちらの記事「運動器カテーテル治療とは?」も参考にしてみてください。
Q:手術について教えてください。どのような手術ですか?競技復帰はいつできますか?
手術は、安静や鎮痛などの保存療法で疼痛が改善しない場合に行われます。過剰な骨である外脛骨を摘出する手術、外脛骨が不安定な場合には外脛骨と隣の舟状骨を固定する骨接合術やドリリング法などがあります。
手術後は約3週間ギプス固定、4週目から荷重開始、6週で全荷重、8-10週で症状改善~スポーツへの復帰を目指すことになります。
ただし、手術を行っても、骨の出っ張りが残ったり、偽関節ができたり、痛みが残ってしまって充分な改善が得られなかったり、治療期間が延びてしまう危険性もあるといわれています。最近では後述するような5分ほどでできる動注療法という新しい治療もあります。
Q:有痛性外脛骨でドリリング手術を受けましたが、その後も骨がくっつきませんでした。また痛みも続いています。手術以外に改善させる治療方法はありますか?
前半でも述べたように、有痛性外脛骨では外脛骨の周囲に炎症が生じており、異常な血管が増えていて治りにくい痛みの原因になっていることが知られています。手術をした後にもこのような異常な血管が残ってしまい、痛みが続く方も珍しくありません。最近では、点滴と同じような非常に細いチューブを使って、異常な血管を減らす新しい治療があり、日帰り治療でできるため広まっています。詳しく知りたい方は以下の治療実例を参考になさってください。