慢性痛治療の専門医による痛みと身体のQ&A

関節リウマチ

Q:関節リウマチと診断されました。どんな病気ですか?

関節リウマチは、関節の滑膜と呼ばれる部分が炎症を起こし、進行すると骨や軟骨が破壊されて痛みがでる病気です。人間の体には外敵(細菌やウイルスなど)から体を守るための免疫という機能が備わっており、その機能が異常に働いて自分自身を攻撃してしまう事が、関節リウマチの病態と考えらえれています。

有病率は0.5-1.0%といわれ、決して稀な病気ではありません。好発年齢は40-60歳前後で女性に多い(男性の4倍)病気で、女性は生涯1-3%が罹患する病気と言われています。

Q:手の指が痛くて関節リウマチかと心配しています。他の病気とどのように見分けますか?

指の関節のどの場所が痛いかで判別がつく場合があります。指の第1関節(指先の関節)が痛いのであれば、関節リウマチではなくヘバーデン結節という病気かもしれません。手や指の関節で、関節リウマチで障害を受ける関節は、第2関節から手首までの関節(PIP関節、MCP関節、手関節)であって、第1関節(DIP関節)はほとんど障害を受けないことがわかっているからです。へバーデン結節に関しましての詳細はこちらをご参照ください

また、関節リウマチの診断は、関節症状だけではなく、関節の痛みの部位が肩などの大きな関節か、手指などの小さな関節に起こっているのか、採血で測定された自己抗体反応(自分の体の免疫細胞がどれくらい活動しているのか)、リウマチの活動度を測る炎症反応、その他に症状が起こっている期間を総合して判断します。このためそのような検査を受けることも重要です。

Q:関節リウマチの原因は何ですか?ストレスですか?遺伝ですか?こういうことをすると悪化するなどありますか?お酒やタバコは大丈夫ですか?

関節リウマチは自己免疫疾患です。自己免疫とは本来炎症を起こすことでウイルスや、細菌などの外敵から身を守るシステムです。自己免疫のシステムは関節に起こると痛みや腫脹の原因となり、それが慢性的に継続すると、関節を破壊するようになります。それが関節リウマチの原因であると言われています。

遺伝的要因としてはHLA-DR4と遺伝子が関節リウマチの発症および重症化の因子として知られており、家族や血縁で発症の確率が上がります。

環境要因としては過労やストレス、喫煙や、ほかに口腔内の不衛生も発症要因と考えられています。特に喫煙は多くの研究で炎症を増悪させることが証明されており、炎症が続くと動脈硬化を進行させることがわかっており、心筋梗塞や脳梗塞などの他の病気にならない為にも中止が必要です。アルコールも、過量摂取で炎症を増悪させることが知られています。

Q:リウマチ因子が高いという結果が出ました。関節リウマチの可能性が高いということでしょうか?

採血での関節リウマチの診断としては抗リウマチ抗体(リウマチ因子)と、抗CCP抗体があります。

抗リウマチ抗体は 健常若年者で最大4%、高齢者では最大25%で陽性(通常、弱陽 性〜中等部陽性)を認めます。そのため陽性であったとしても、あなたは関節リウマチです、ということはできません。

また、早期では感度が50%程度と言われ、陰性と判定されたとしても、関節リウマチは否定できません。他の検査や、症状、痛みの部位、疼痛期間などにより総合的に判断します。

また抗CCP抗体ですが、特異度が極めて高く、陽性であった場合はリウマチであると診断できます。しかし感度は低いため、検査が陰性でも関節リウマチでないと言えません。抗CCP抗体陽性があると関節破壊のリスクが高いと言われています。

Q:1か月前から手指が痛くなりました。朝起きた時だけでなく1日中痛みます。関節リウマチでしょうか?どのように検査して診断するのでしょうか?どの検査を受けたら良いですか?エコーの検査は有用ですか?

関節リウマチの診断には、リウマチ学会による分類基準に当てはめて診断するのが一般的です。診断には関節の痛みの部位が肩などの大きな関節か、手指などの小さな関節に起こっているのか、また採血で測定された自己抗体反応(自分の体の免疫細胞がどれくらい活動しているのか)やリウマチの活動度を測る炎症反応、その他に症状が起こっている期間を総合して判断します。

小さな関節に腫脹、圧痛を認めたり、症状の出現部位が多かったり、また症状の期間が長い(6週間以上)ほど、関節リウマチと診断されやすくなります。採血で測定されるマーカーは診断に有用ですが、発症早期では陽性にならない事があり注意が必要です。

関節リウマチは進行すると骨が変形することが特徴ですが、レントゲン検査では感度が悪く(進行しないと診断できない)、被曝の問題があり、何度もできる検査ではありません。またMRIは検査費用が高価であるという問題があります。

最近では超音波を用いて、炎症を起こしている滑膜を観察することが、早期の診断や治療後の経過を見る上で有用であることがわかっています。

Q:関節リウマチと診断されました。薬は一生飲み続けないといけないのでしょうか?

関節リウマチへの薬剤治療でもっとも中心となる(最も多くの人が用いている)薬剤はメトトレキサートです。メトトレキサートは強い副作用が生じて続けられなくなった場合を除いて、基本的には飲み続けていくことが多い薬剤です。

メトトレキセートの他に、生物学的製剤と呼ばれる薬剤があります。こちらは一部の人がやめられる可能性があります。ただし一部の人にのみといったところが現状です。生物学的製剤を減らしたり中止したりできる可能性がある人は、生物学的製剤で十分な効果が得られており、関節炎がなくなって、寛解と呼ばれる状態になった人だけです。少し効果はあるが、 関節に腫れが残っている人、X線検査で骨破壊が進んでいる人は、治療の手を緩めるわけ にはいかず、減量や中止はできないというのが現在の主流の考え方です。では、十分に効果があり、寛解になった人が全員止められるかというとそうでもありません。半分の患者さんは1年後も官界状態が続きますが、残りの半分の患者さんはリウマチ症状が再燃してしまい、また生物学的製剤を再開する必要があることになることが知られています。

Q:私と私の姉がリウマチです。親戚にも関節リウマチの人がいます。遺伝のようなものはあるのでしょうか?私の子どもたちに気をつけるべき事があれば、教えてください。

遺伝的要因としてはHLA-DR4が関連していると述べましたが、家族や血縁での発症について、スウェーデンの研究グループによると、親が関節リウマチの場合の子供の関節リウマチ発症リスクは3.02倍になり、兄弟姉妹が関節リウマチの場合の関節リウマチ発症リスク4.64倍、親と兄弟姉妹が関節リウマチの場合の関節リウマチ発症リスクは9.31倍になると言われています。

家族や血縁で関節リウマチの方がおられましたら、発症には喫煙や、過労、ストレス、口腔内の不衛生などが原因ですから、そのような環境要因から暴露をさけるのが望ましいでしょう。

Q:関節リウマチで食事で気を付けたほうが良いことはありますか?

関節リウマチに対する食べ物で絶対に摂取した方が良い、やめておいた方が良い、というものはありません。関節リウマチは自己免疫疾患であるため、炎症を起こしにくいお食事が望ましいと思われます。(動物性脂肪を控える、野菜を多く摂取する、など。)

Q:関節リウマチの生物学的製剤にはどんな種類がありますか?

生物学的製剤の開始基準としては、日本リウマチ学会のTNF(腫瘍壊死因子)阻害薬使用のガイドラインがあります。生物学的製剤の適応は、発症早期で疾患活動性が高く、比較的若年で合併症がないものが望ましい、とされています。

また、人間にはサイトカインと呼ばれる本来は体を正常に機能させるために必要なタンパク質があり、炎症の原因となっていることがわかっています。生物学的製剤はそのサイトカインを抑制させる働きがあり、その種類はサイトカインのなかのIL-6の働きを妨げるもの、 TNFαの働きを妨げるもの、また免疫細胞であるTリンパ球の働きを抑えるもの(CTLA4)に大別されます。現在はTNFαの働きを妨げる薬の種類がもっとも多く、このお薬から開始する事が多いです。

Q:右肘にだけ症状のある45才の主婦です。メトトレキサートの処方を始めて10ヶ月内服しました。レントゲンや血液検査の数値も改善しているのですが、痛みが消えません。主治医にはレミケードをすすめられましたが選択する決心がつきません。他に痛みを改善させる方法はありますか?

関節リウマチで炎症反応やレントゲンが改善されても痛みが残ってしまっている人もいらっしゃいます。そのような場合、以前アクティブであった関節リウマチの炎症によって生じた異常な血管が残存しており、血管と神経が一緒になって増える性質があることから、異常な血管の周囲に神経線維も増加して、治りにくい痛みの原因になっている可能性があります。

最近ではそのような異常な血管をカテーテルで塞ぐ治療も開発されており、関節リウマチの患者さんにも安全に受けてもらえるようになっています。ご興味のある方はこちらのページ(モヤモヤ血管とは?)も参考にしてみてください。

Q:関節リウマチになり服薬を始めましたが、私はメトトレキセートが効かないタイプのようです。医師からは生物学的製剤を勧められましたが費用面もわからず決心がつきません。他に良い方法はありますか?

生物学的製剤は、とても高価なのが難点と言えます。3割負担の場合、自己負担額は年間で約45万円にもなります。JAK阻害剤はさらに高く3割負担でも年間約60万円。また、皮膚に痛みのあるヘルペス(帯状疱疹)などの副作用が出る場合もあり、100人のうち5~6人にヘルペスが出たという報告があります。

他に痛みを改善させる方法として、最近では炎症で生じた異常な血管を、カテーテルで塞ぐ治療も開発されており、関節リウマチの患者さんにも安全に受けてもらえるようになっています。ご興味のある方はこちらのページ(モヤモヤ血管とは?)も参考にしてみてください。

Q:生物学的製剤(エンブレル)を始めましたが、効果が不十分です。今後どうしたらよいでしょうか?

現在発売されている生物学的製剤は、いずれも概ね4割程度の患者さんで著効し、7-8割の患者さんで一定以上の効果があることが分かっています。逆に言えば生物学的製剤でも全ての患者さんに有効なわけではありません。思ったほどの効果が得られなかった場合、明確な指針はありませんが、現時点で以下のような選択肢が考えられます。

1)使用している生物学的製剤の増量、投与期間短縮
レミケードとシンポニーという薬は標準使用量以上の増量が可能です。また、エンブレルは半量から開始した場合には標準使用量(週50mg)までの増量が可能ですが、それ以上の増量は認められていません。

2)他の生物学的製剤への変更
最初に始めたのがTNF阻害薬(レミケード、エンブレル、ヒュミラ)の場合、少なくとも2剤目までは同じグループである他のTNF阻害薬への変更も充分に有効であると報告されています。

3)併用している抗リウマチ薬の追加、増量
特にリウマトレックスの増量、プログラフの追加、増量が有効であることが報告されています。

4)関節手術の併用
生物学的製剤を使用しても一つないしは少数の関節炎のみが残る場合には、手術によって病巣を除去することも効果的です。

5)異常血管へのカテーテル治療の併用
痛み症状の原因は「異常に生じた血管とその周囲の神経線維」と考えられており、関節リウマチの滑膜組織で生じた異常な血管を標的としたカテーテル治療の有効性も報告されています。詳しくはこちらのページも参考にしてください。また治療実例をご覧になりたい方はこちらもご参照ください。

Q:関節リウマチでメトトレキセートを内服しています。妊活を希望しています。妊活できますか? やめるとしたらどれくらいやめる必要がありますか?

メソトレキセートは服用により流産や奇形の頻度が上がる事がわかっています。男性の服用によってもその頻度があがります。男女ともに妊娠を計画する場合は3ヶ月間の服用中止が必要です。また授乳中も、母乳に移行するため、服用はできません。

詳しくは主治医にお問い合わせください。

Q:関節リウマチでメトトレキセートを始めました。副作用が心配です。どんな副作用があり得ますか?

メトトレキサートは葉酸の働きを阻害することで効果をあらわします。副作用として葉酸の働きが弱くなるとおこる症状、口内炎、吐き気、下痢、肝機能の異常が出現することがあります。これらの副作用は、メトトレキサートの投与量が多くなるにつれておこりやすくなりますが、葉酸を補給してあげるとある程度は防ぐことができます。

またその強い免疫抑制効果から、副作用として感染症にかかる事が挙げられます。感染症とは、通常の健常人がかかる感染症だけではなく、ウイルス性肝炎や、結核などの既往がある方が再燃(再び悪化すること)することがあります。他には間質性肺炎(咳や息切れなどの症状)、血球減少(出血しやすくなる)などがあります。

以上のことから、投与前には全身状態の検査(潜在的な感染症に罹患していないかも含め)が必須になります。

Q:関節リウマチと診断され、メトトレキセートの内服が始まりましたが副作用(吐き気)で使用できません。今後どのようにしたらいいでしょうか?

メトトレキサート製剤で嘔気があり使用できない場合、費用負担が増えてしまいますが、生物学的製剤で治療をするのが、最も有力な選択だと思います。特にIL-6を抑制するアクテムラまたはケブザラは、メトトレキサートが使用できない場合に有効性が証明されています。治療費は1か月あたり3割負担の方で3〜4万円程度かかってしまいます。

より安価な方法としては、ケアラムやリマチルなどの内服がある程度期待できます。メトトレキサートよりは副作用は少ないとされ、ケアラムは肝機能障害、リマチルは腎臓の障害がたまに出ることがあります。

また、最近では痛みのある部位に増殖した異常な血管を標的としたカテーテル治療という新たな治療法があり、安全に受けられるようになっています。詳しくはこちらのページも参考にしてみてください。治療実例をご覧になりたい方はこちらもご参照ください。

Q:メトトレキサートを始めました。ずっと飲んでいないといけませんか?少しでもやめてしまうと問題でしょうか?

メトトレキサートを内服して効果がでている場合、2週間ほどの休薬をしてもリウマチが悪化することはないとされています。ステロイドとは異なり、中止しても副作用はでません。食欲低下や風邪や肺炎、尿路感染症などで熱がでてしまったときなどには薬を飲むのを1-2週間はやめてもよいでしょう。

Q:関節リウマチで治療中です。メトトレキセートを使うことで、関節の腫れは落ち着いてきました。医師からも採血結果が良いと言われますが、「痛み」が十分に改善されません。何か良い方法はありますか?

メトトレキセートにより炎症状態が落ち着いたものの、関節の疼痛が残存する事があります。関節リウマチの痛みのコントロールに、NSAID(非ステロイド性消炎鎮痛薬)や、ステロイドの内服を併用して、痛みをコントロールする手術(滑膜切除術、人工関節置換術)を行う事があります。

また、最近では痛みのある部位に増殖した異常な血管を標的としたカテーテル治療という新たな治療法があり、安全に受けられるようになっています。詳しくはこちらのページも参考にしてみてください。また治療実例をご覧になりたい方はこちらもご参照ください。

Q:生物学的製剤(レミケード・エンブレル)を勧められています。使いたいけれど1ヶ月に7万円かかると言われました。一度使い始めたらずっと使わなくてはならないのでしょうか?

生物学的製剤によって寛解になった人は、生物学的製剤を止められる可能性があります。ですが、生物学的製剤で寛解状態が6か月以上続いた人が生物学的製剤を中止した場合、半分の患者さんは1年後も良い状態を維持していますが、残りの半分の患者さんは再燃してしまい症状がぶり返してしまうことが知られています。その場合、また生物学的製剤を再開することになってしまいます。つまり、効果が十分に出ていても必ず止められるとは言えないのが現実です。

Q:関節リウマチの人は寿命が短くなりますか?

関節リウマチでは多関節炎と関節破壊による関節機能障害、抑うつ、間質性肺炎などの臓器障害、感染症に代表される治療薬の副作用などがみられ、それらのために患者さんのQOL(Quality of Life)が低下することや、平均余命短縮の可能性も指摘されています。環境要因としては喫煙が関節リウマチの関節破壊の進行にも関連することが示されているので、禁煙するなども重要です。副作用ともうまく付き合いながら、上手に治療をしていくことが望ましいです。

Q:生物学的製剤は必ず効果がありますか?

関節リウマチに対する生物学的製剤が使われるようになって16年経過しようとしています。この間に使われるようになった生物学的製剤として、レミケード、エンブレル、アクテムラ、ヒュミラ、オレンシア、シンポニー、 シムジア、インフリキシマブBSの8種類が代表的です。これらはどれも有効性に大きな差はないとされており、どれも7割の患者さんに効果があるとされています。反対に言うと残りの3割の人には効果が期待できないということになります。このため「必ず効果がある」といえるものではありません。

Q:関節痛の症状が強くなりメトトレキセートが徐々に増量されています。副作用も心配です。生物学的製剤以外に関節痛の症状をコントロールするために良い方法はありますか?

仕方なくステロイドを使用する場合もあります。しかし、感染症を誘発するなどさまざまな副作用があるので、長く使えるものではないんです。使う場合は、半年で止めるようにしています。

また、炎症を起こしている滑膜を取り除く手術や、軟骨が破壊されている場合は関節を固定する手術などがあります。関節の破壊が進んでいる場合は、人工関節に取り換える手術が行われることもあります。

また最近は関節リウマチで増えてしまった異常な血管が炎症と痛みを引き起こすことがわかっており、それに対するカテーテル治療も併用できる方法です。ご興味のある方はこちらのページも参考にしてみてください。また治療実例をご覧になりたい方はこちらもご参照ください。

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痛みをもたらす病気・けが

執筆 奥野祐次(医師)

医師 奥野祐次

医療法人社団 祐優会 総院長
オクノクリニック 院長
慶応義塾大学医学部卒業
慶応義塾大学医学部医学研究科修了

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