慢性痛治療の専門医による痛みと身体のQ&A

オスグッド病

Q:小学生の息子がスポーツをしていると膝が痛いと言い、膝のお皿の下の方にある骨が突出してきたので、病院に行ったところオスグッド病と診断されました。どんな病気なのでしょうか?

オスグッド病は、思春期の急激な成長の最中に生じる疾患で、12〜14歳の男児と10〜13歳の女児によく見られます。女の子の方が成長期に早くはいるために、このような年齢差が生じます。

サッカー、バスケットボール、フィギュアスケート、バレエなどランニング、ジャンプ、素早い方向転換を伴うスポーツに参加する子供たちによく見られます。

膝蓋骨(しつがいこつ)の少し下のすねの骨に腫れと痛みが生じることが、オスグッド・シュラッター病の特徴的な症状です。 痛みはランニング、ひざまずく、ジャンプなど特定の動作で悪化し、休息すると和らぎます。

通常、片方の膝だけに発生しますが、両方の膝に見られることもあります。不快感などの症状は数週間から数か月続くことがあります。成長期が終わると治まることがほとんどです。子供の成長期が終わるまでは、いったん改善したとしても再発する可能性があります。

Q:オスグッド病の原因はなんでしょうか?激しいスポーツをやっているとなるのでしょうか?

オスグッド病は、成長期により急激に身長が伸びる最中に、膝蓋腱の脛骨上部の付着部に負荷がかかる動作を繰り返すことが一つの原因となります。特にダッシュやジャンプ、方向転換などを頻繁に伴うスポーツをすると発症しやすくなり、具体的にはサッカー、バスケットボール、バレーボール、バレエ、フィギュアスケートなどが代表的です。

膝関節の屈曲を伴う動きにより大腿四頭筋の筋力がすねの骨(脛骨)にかかり、成長軟骨部が剥離(はがれてしまう)することで生じると考えられています。このような負担が繰り返しかかることで、膝蓋腱付着部に小さな傷ができます。するとこの傷を治すために血管がその周辺にできます。通常であれば2週間ほどで治る小さな傷ですが、激しいスポーツを繰り返しすることで同じ部位に負担がかかり、小さな傷が治ることなくどんどん「余計な血管」が増え、それと一緒に神経線維も増えるため痛みや腫れの原因となります。

また余計な血管が増えると、人間の身体の性質として、その部位に石灰が沈着することが知られており、本来はなかった骨ができていきます。このため、痛みのある部位に骨の塊や隆起(骨のでっぱり)が生じる可能性があります。

Q:オスグッド病はどういう症状がでるのでしょうか?

オスグッド病は、膝下の脛骨に痛みを伴う骨隆起が生じますが、代表的な症状としては、
・膝のお皿の少し下に位置する、スネの骨が突き出てくる。
・膝のお皿の下あたりが赤く腫れ、熱があり痛む。
・スポーツをすると痛み、休むと治る。スポーツを再開するとまた痛むことを繰り返す。
などがあります。

また、症状は片方の膝にのみ生じることがほとんどですが、中には両膝に症状が出る人もいます。

Q:オスグッド病は、どのように診断しますか?成長痛とは異なるのでしょうか?

オスグッド病は、成長痛と異なりレントゲン検査で分かります。膝と脚の骨を観察し、膝蓋腱が脛骨に付着している領域をより詳細にチェックします。さらに、膝の圧痛、腫れ、痛み、発赤を確認します。

オスグッド病はスポーツに起因する障害なので、成長痛とは異なる疾患です。オスグッド病は膝の下のお皿に痛みを感じます。しかし、成長痛は膝だけではなく、足首やふくらはぎなど足全体の痛みがあります。また、成長痛の場合はレントゲンで変化はきたしません。

Q:痛くて正座やスクワットができないのですが、オスグッド病の治療法はありますか?治らないのでしょうか。

オスグッド病は通常、特に治療をしなくても症状は改善します。症状は通常、子供の骨の成長が止まった後に消えます。

ただし、ひざまずく、ジャンプする、走るなど、状態を悪化させる動きを繰り返してしまうと、長引く可能性があるため、このような動作は適切に制限し安静にしたほうが望ましいです。また、患部を氷で冷やすと痛みや腫れに対して効果があります。

また、以下に示すようなストレッチなどのセルフケアも取り組んでください。またリハビリをすることで膝の前面への負担を減らし、改善につながることもあります。

しかし、上記のような治療法で十分に改善しない場合、あるいは極端に痛みが長く続いたり、痛みが強い場合は、カテーテル治療という特殊な治療法もあります。

この治療法については、こちらの記事「運動器カテーテル治療とは?」も参考にしてください。

Q:オスグッド病になり膝の下のすねの骨にでっぱりができてしまいました。痛みはなくなったのですが、このでっぱりは治らないのでしょうか?

オスグッドで生じる骨の隆起については、痛みが治った後も10代のころはしばらく残ってしまうことが多いです。しかし一生残るわけではなく、徐々に目立たなくなります。また、骨の隆起があっても痛みがないのであれば膝の機能(膝を正常に動かすこと)に問題は生じないので、見た目が気になるかもしれませんが、様子を見ていただくことが良いかと思います。

Q:オスグッド病を予防するおススメのリハビリやストレッチはありますか?

■太ももの前側と後ろ側の筋肉をほぐすストレッチ

太ももの筋肉が硬くなると、膝のお皿の下に負担がかかり、痛みにつながりやすくなります。太ももの前側と後ろ側の筋肉をほぐすことが必要です。
前側の筋肉をほぐす方法は、座った状態で太ももの前側の筋肉を手で軽くつかみます。

太ももの前側と後ろ側の筋肉をほぐすストレッチ

つかんだまま横方向に揺らします。揺らすことで筋肉がほぐれてきます。だいたい30秒~1分ほど、1日に2~3回しましょう。

■太ももの後ろ側の筋肉のストレッチ

太ももの後ろ側の筋肉のストレッチです。しゃがんだ状態で両手で両方の足首をつかみます。その状態でおなかを太ももにくっつけたまま、膝を伸ばしてできるだけお尻を高く上げます。そうすると、太ももやふくらはぎの後ろ側が伸びて張ってくると思います。その姿勢で20~30秒伸ばします。

太ももの後ろ側の筋肉のストレッチ
太ももの後ろ側の筋肉のストレッチ 悪い例
おなかが太ももから離れないようにしましょう。

■骨盤のストレッチ

骨盤の動きが悪くなることで膝への負担にもなります。椅子に座った状態で、背中を丸めたり伸ばしたりする運動も効果的です。背中を丸める時は、おへそを後ろに引っ込めるように骨盤を後ろに倒します。伸ばすときは、背中を反らせるというよりも、背骨を上に引っ張るように背中を伸ばすと良いと思います。1日に10往復程しましょう。

骨盤のストレッチ

Q:オスグッド病のテーピング治療はどうすればいいですか?

角を丸く切ると剥がれにくいです。

角を丸く切ると剥がれにくい

膝のお皿の下(痛みの出る部分)を通るように、脛に1周巻きましょう。

膝のお皿の下(痛みの出る部分)を通るように、脛に1周巻きましょう

このように幅は1.5倍の厚みを作り巻くことで痛みのある部分の緊張を和らげることができます。

テーピングの幅

Q:オスグッド病の子供におすすめのサポーターはありますか?

膝に専用のサポーター(膝蓋腱バンド)を装着することで、脛骨粗面の緊張を和らげることができます。

専用サポーター

Q:オスグッド病の症状が治るにはどれぐらいの期間かかりますか?運動すると悪化しますか?

通常、骨の成長が止まると、症状は自然に解消されます。成長期に併せるので、症状の改善には個人差があり、6か月で改善する子供もいれば、1年経ってようやく改善する子供もいます。オスグッド病は成長痛と異なり、スポーツによる膝のオーバーユースが原因のため、痛みを我慢して運動を続けると悪化することがあります。

Q:オスグッド病は大人になっても再発する可能性はあるのでしょうか?

オスグッド病が発症するのは成長期だけです。成長期が終わり、脛骨粗面の成長軟骨が硬くなると、オスグッド病が発症することはありません。ただし、オスグッド病の後遺症として脛骨粗面の隆起、同部位の圧痛(押すと痛い状態)、運動時の痛みなどが大人になっても残存することがまれにあります。このような場合は、以下に記載しているカテーテル治療などの治療法があります。

Q:オスグッド病になって3か月が経ちましたが激しい運動を安静にしていましたが治りません。膝を曲げるととても痛いのですが、何かおすすめの治療法はありますか?

練習をひかえ安静にしているのに治らないという場合は、いま受けている治療が「痛みの原因」に正しくアプローチしていないからかもしれません。先ほどの記事でも述べていますが、痛みの原因は「余計にできた血管とその周りに増えた神経」です。

この痛みの原因にアプローチしないと痛みは治りません。3か月経過しているのなら重症である可能性がありますから、ぜひ専門の医療機関を受診されることをお勧めします。

重症で注射でも改善が十分ではない場合は、カテーテル治療という特殊な治療法があります。痛みの原因になっている異常な血管を標的とした治療で、完治を目的としたものです。詳細はこちらの記事「運動器カテーテル治療とは?」も参考にして下さい

慢性痛についてのお問い合わせ・診療予約

オクノクリニック [新規予約受付時間]10:00-16:00[休診日]日曜日

オクノクリニック [新規予約受付時間]10:00-16:00[休診日]日曜日
オクノクリニック公式サイトはこちら

痛みをもたらす病気・けが

執筆 奥野祐次(医師)

医師 奥野祐次

医療法人社団 祐優会 総院長
オクノクリニック 院長
慶応義塾大学医学部卒業
慶応義塾大学医学部医学研究科修了

プロフィールはこちら