慢性痛治療の専門医による痛みと身体のQ&A

変形性膝関節症

Q:ひざが痛くて病院でレントゲンを撮ったら、骨と骨の隙間が狭くなっているといわれました。

変形性膝関節症という状態になっているかもしれません。

関節には骨と骨の間に軟骨があるのが普通です。軟骨があることで骨同士がぶつかってしまうのを防いでいます。ところが年齢とともに関節に炎症が起きると軟骨がすり減ってしまいます。すると骨に負担がかかり、骨の形も綺麗ではなくなり、ボコボコしたいびつに変形するため、変形性関節症と言います。

変形の度合いによって治療方法も異なります。早期の状態であれば進行を予防することもできます。一度専門の医療機関を受診することをお勧めします。

Q:変形性膝関節症にはどのような症状がありますか?

痛くて正座ができない、階段を降りるときに痛い、椅子から立ち上がる時に痛みが走るなどの症状が代表的です。また炎症が強いときには夜寝ているときもチクチク、ズキズキと痛いという場合もあります。骨の変形が激しい場合、歩くたびに骨がぶつかり合って痛むようになります。

早期であれば予防もできますから、ひざの痛みが長引いているようでしたら一度専門の医療機関を受診することをお勧めします。

Q:病院に行ったところ「レントゲンではそれほど悪くない」といわれたのですが、膝はとても痛いです。どうしてなのでしょうか?

レントゲン検査での骨の変形と、痛みの強さは、必ずしも一致するわけではありません。つまりレントゲンではそこまで変形していないのに強く痛い、という人もいれば、レントゲンでそこそこ変形しているのに痛くない、という方もいます。

実は変形性膝関節症の痛みは、骨の変形だけが原因ではありません。骨の変形はかなり重度になると(ひどい変形)痛みを発生させますが、重度になる手前の段階では痛みの原因にはならないのです。では骨の変形以外で何が痛みの原因になっているのでしょうか?

一つの原因は炎症です。膝の関節の周りに炎症が起きていると痛みの原因になります。また、最近では関節のまわりに異常な血管がたくさんできて、痛みの原因になることがわかってきました。

変形性ひざ関節症のカテーテル治療について私(医師:奥野祐次)が書いた論文概要はこちら(2-4年成績とMRI変化)

Q:変形性膝関節症と言われました。これ以上変形が進まないような予防法はありますか?

あります。

変形性膝関節症はどうして変形してしまうかというと、いくつかの原因があげられます。そのうちの一つは体重です。やはり体重が重いほうが膝に負担がかかり、軟骨がすり減ってしまう。これは簡単にイメージできますね。

しかし体重だけではありません。実はカロリーの高い食事自体が(体重は重くなくても)身体に炎症を起こし、炎症によって痛みや変形が進んでしまうことが知られています。基本的に人間の体は炭水化物や脂質などでカロリーを取りすぎると炎症が起きやすくなります。そして炎症が起きた時には、「炎症性サイトカイン」という物質が放出されます。複雑そうな名前ですが、体の組織を傷つけてしまう物質と理解してください。

ひざに炎症が起きると、膝の軟骨が炎症性サイトカインによって傷つけられ、すり減っていきます。ですから炎症を起こさないことが重要です。

また、すでに炎症が起きているなら、速やかに炎症を抑えることも重要です。炎症が起きると膝に痛みが生じますから、痛みがあるということは炎症が起きているとも言えます。炎症を抑える治療をすると痛みの改善にもなりますし、将来のさらなる変形の進行への予防にもなるのです。

また、別の予防策としては、15秒指圧というものがあります。やり方は後述する「自分でできる対処法」のところで詳しく述べます。

あとは太ももの筋肉を鍛えることも予防には役に立ちます。別の項目で詳しく述べています。

Q:天気の悪い日に膝の痛みが強くなります。なぜですか?

天候によって膝の痛みが変化する、特に雨が降るまえなどに痛みが増したりする人はとてもたくさんいらっしゃいます。

上の質問で答えたように、変形性膝関節症の痛みの原因として重要なのは骨だけではありません。血管も重要です。

下の図のように、変形性膝関節症では、痛い場所に異常な血管が増えてしまっています。血管が増えると神経線維も一緒になって増える傾向があるため、この血管が増えているところには神経も増えており、血液の流れが増えるとズキズキと痛み出してしまいます。

さて、特に雨の日には気圧が下がります。人間の血管は気圧の低下によって拡張する傾向があるため、異常な血管への血液の流れも増加して、痛みが増すようになります。

天候によって痛みが変化する、という方は、血管が原因の痛みである可能性があります。ぜひ専門の医療機関を受診してみてください。

Q:変形性膝関節症には筋トレや運動をしたほうが良いと聞きました。具体的にどのようにすればよいのでしょうか?

「筋トレ」と聞くと、かなりハードなことをしたほうが効果が出ると思われてしまうかもしれません。そのため、お医者さんや治療者に「筋トレをしなさい」と言われて無理をして頑張りすぎてしまい、逆に膝を痛めてしまうひとも少なくありません。

変形性膝関節症の方にお勧めする筋トレは、「膝小僧を上げる」運動です。椅子に腰かけ、足を前に出します。膝は完全に伸ばすか、痛くて伸ばせない人は痛くない範囲で伸ばします。次にひざのお皿の上端を指で触ります。そのまま太ももの前面に力を入れてみてください。すると膝のお皿が少し上に上がるのが当てている指で触れるとおもいます。これを10回1セットとし、1日に2セットすれば十分です。

あまり激しすぎるトレーニングは禁物です。特に階段を上らなきゃとか、長い距離を歩かなきゃなど思い込んではいけません。そのような激しい負担は、膝が痛いときには反対に膝にさらなる炎症を起こしてしまうので避けてください。

Q:変形性膝関節症になっています。自分でできる対処法はありますか?

自分でできる対処法としてお勧めなのは15秒指圧です。

変形性膝関節症では、膝のまわりのどこかに「押すと痛いポイント」があります。指一つ分くらいの狭い場所がひとつあるいは複数あることが多いです。明らかに他の場所よりも痛いポイントのことです。膝の内側が痛い人は内側に、外側が痛い人は外側に、自分で膝の周りを親指でいろいろな場所を押してみるとこの「押すと痛いポイント」を発見できるのではないでしょうか?

この痛いポイントが発見できれば、そこをじっと15秒ほど押し続けます。そんなに強い力でなくてもいいです。押し始めた時は痛みがあると思いますが、じっと押し続けていると痛みが引いていくのがわかると思います。

Q:ヒアルロン酸の注射は通常5回までということですが、近くの整形外科で毎週したほうが良いと言われ、もう20回以上打っています。大丈夫なのでしょうか?

ヒアルロン酸は数回試してみて効果が得られないのであれば、何度も打ち続けることはお勧めしません。

2013年にアメリカの整形外科学会は「変形性膝関節症へのヒアルロン酸注射を推奨しない」と明言し、さらに5年たった現在でも、ヒアルロン酸については「効果が証明できておらず、推奨しない」のままです。

ところが日本ではなぜかヒアルロン酸を打つという診療がいまだに続いています。

ヒアルロン酸の注射で改善しないという方は、専門の医療機関の受診を検討してください。

Q:変形性膝関節症と診断され、レントゲンでは手術するほど悪くはないと言われました。しかし痛みが治らず1年以上経過します。さまざまな治療をしましたが治らないのですがなぜでしょうか?

レントゲンではそこまで悪くないのに膝が痛い、しかも治療をしているのに治らない、という場合は、いま受けている治療が「痛みの原因」に正しくアプローチしていないからかもしれません。先ほどの記事でも述べていますが、変形性膝関節症の痛みの原因は「異常な血管とその周りに増えた神経」です。この痛みの原因にアプローチしないと痛みは治りません。今までの治療で効果がない場合は、ぜひ専門の医療機関を受診されることをお勧めします。

Q:変形性膝関節症にサポーターは効果的ですか?

ある程度の効果が期待できることがありますが、一概にすべての人にお勧めできるものではありません。変形性膝関節症の痛みは人によって異なります。膝を支える筋肉が不足して膝がぐらぐらしてしまい痛みが増しているときには、サポーターをしたほうが楽かもしれません。一方で膝のぐらぐらはあまりなく、膝の前の方に炎症が強い場合はサポーターによって痛みが増してしまうこともあります。またサポーターにもいろいろな種類があります。

重要なのは付けてみて楽になるか、あるいは痛みが増してしまうか。痛みが増してしまうなら続けないほうが良いと思います。

実際には専門の医療機関で相談し、一人ひとりに合う方法を指示してもらうことが望ましいです。

Q:変形性膝関節症で手術を勧められました。手術とはどういったものがありますか?

手術の種類としては3種類に分けられ、関節鏡手術、高位脛骨骨切り術、人工膝関節置換術というものがあります。

関節鏡手術とは、膝に4か所ほどの穴をあけて、関節鏡と呼ばれる細いスコープで膝関節内を観察し、滑膜や軟骨ねずみといった痛みの原因となりうるものを掃除する手術です。初期の状態なら痛みが取れる方もいますが、関節の変形はそのままなので、時間とともに再発する場合があります。

高位脛骨骨切り術とは、脛骨(すねの骨)の一部を切り、O脚を矯正する手術です。人工骨の埋め込みや、金属プレートによる固定が必要となるため入院期間が長くなります。比較的活動量の多い方には最近はよく行われている手術です。

人工膝関節置換術とは、変形が重度の人に行われます。変形してしまった自分の関節を金属のインプラントの関節に置き換える手術です。変形が末期の患者さんが対象となります。しかし術後も一定の割合で痛みが残ってしまうことがあり、問題となっています。

かかりつけのドクターに手術をすすめられたら、自分の膝の変形の進行具合と、どの手術が適しているのか、術後の生活はどうなるか、痛みが残ってしまう確率は?などといったことを詳しく聞くことをお勧めします。

Q:変形性膝関節症があり、手術を受けようか悩んでいます。手術以外の方法で改善されることはありませんか?

ひざの人工関節や骨切りの手術は身体への負担が大変大きいため、確かに慎重に選択したほうが良いです。手術以外の方法としては、様々な治療を組み合わせる「集学的治療」が効果的です。

集学的治療とは、ひざの痛みを解消するためのいくつかの「手術以外の方法」を組み合わせることです。

例えば、このサイトで説明しているように、ひざの周りに生じた異常な血管を減らすためのカテーテル治療を取り入れ、さらにそれだけでなく骨のダメージも生じていることがあれば、骨を強くする薬を加える、さらに脳のセロトニンという物質を多く出すための生活習慣を見直す、さらに食事管理を積極的にして体重を落とす、などを組み合わせて、なるべく手術をしないで痛みを取る治療です。

集学的治療にご興味のある方は、痛みの専門医療施設にて相談してみてください。

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痛みをもたらす病気・けが

執筆 奥野祐次(医師)

医師 奥野祐次

医療法人社団 祐優会 総院長
オクノクリニック 院長
慶応義塾大学医学部卒業
慶応義塾大学医学部医学研究科修了