慢性痛治療の専門医による痛みと身体のQ&A

変形性膝関節症NEW

Q:ひざが痛くて病院でレントゲンを撮ったら、骨と骨の隙間が狭くなっているといわれました。

変形性膝関節症という状態になっているかもしれません。

関節には骨と骨の間に軟骨があるのが普通です。軟骨があることで骨同士がぶつかってしまうのを防いでいます。ところが年齢とともに関節に炎症が起きると軟骨がすり減ってしまいます。すると骨に負担がかかり、骨の形も綺麗ではなくなり、ボコボコしたいびつに変形するため、変形性関節症と言います。

軽度の変形性膝関節症患者のレントゲン
軽度の変形性膝関節症患者のレントゲン
軽度の変形性膝関節症患者のMRI
軽度の変形性膝関節症患者のMRI

変形の度合いによって治療方法も異なります。早期の状態であれば進行を予防することもできます。一度専門の医療機関を受診することをお勧めします。

Q:変形性膝関節症にはどのような症状がありますか?

痛くて正座ができない、階段を降りるときに痛い、椅子から立ち上がる時に痛みが走るなどの症状が代表的です。また炎症が強いときには夜寝ているときもチクチク、ズキズキと痛いという場合もあります。骨の変形が激しい場合、歩くたびに骨がぶつかり合って痛むようになります。

早期であれば予防もできますから、ひざの痛みが長引いているようでしたら一度専門の医療機関を受診することをお勧めします。

■初期の症状
変形性膝関節症の初期では、レントゲンでは「ほとんど異常なし」と言われる状態です。レントゲンでは異常なしと言われますが、時として非常に強い痛みが出ることがあり得ます。
初期のころの代表的な症状は以下のようなものです。

・なんとなく動かしにくい
・腫れぼったい
・正座はなんとかできるがすると痛くなる
・ズキズキ、刺すような、重だるい、などの痛み
・階段を降りるときに痛い(時として非常に強い痛み)
・平地は大丈夫だが階段の昇り降りが痛い
・椅子から立ち上がるときに痛い。

この、レントゲンでは異常が見られない初期のうちに、炎症に伴う異常な血管が増えているのでこの段階で異常な血管を減らし、将来の変形を防ぐことが得策です。

■進行期の症状
進行期の場合はレントゲンで関節の隙間が狭くなる変化が出てきます。また、すり減った軟骨の下にある骨は、レントゲンでの「白さ」が増して、骨にストレスがかかっていることが見て取れるようになります。

この時期の症状は
・刺すように痛い、ズキズキ痛い、チクチク痛い
・痛くて正座ができない
・階段の昇り降りが非常に痛い
・寝ている時も痛い、寝返りで反対の膝があたると痛い
・熱をもった感じがある、お水がたまって抜いてもすぐたまる、強く腫れる

■末期の症状
末期は、レントゲンでは「かなりひどい変形がある」と指摘される状態です。

進行期の症状にくわえて、
・足がO脚になる
・平地を歩くだけで痛い
・長い距離が歩けない
・体重がかかるたびに痛い
などの症状が出現します。

年代別の症状や原因と治療方法を動画でも解説しています。

Q:変形性膝関節症の病態と原因は何ですか?

変形性膝関節症は、以前は、車のワイパーやタイヤが経年ですり減っていくのと同じように、関節の軟骨が物理的に少しずつ摩耗していくものと考えられていました(これを関節軟骨のwear and tear 理論と呼びます)。 しかし実際の病態はそれほどシンプルではなく、同じ人の膝でも片方だけが非常に早くすり減ったり、反対側は軟骨が減らずに保たれていたりするのが分かってきました。

また、軟骨のすり減りが進むスピードも時期や年齢によって一定ではないことが分かっており、中年になって関節に水がたまったり腫れたりすると、非常に速いスピードですり減りが一気に進むこともわかってきました。

これらのことから、今では主に2つのことが関節の変形の原因として考えられています。

■過去の靭帯や半月板のけが
ひとつ目は、昔のひざの損傷が、時間が経って悪い影響を与えることです。特に半月板(はんげつばん)や前十字靭帯(ぜんじゅうじじんたい)は膝の重要な要素ですが、このような靭帯や半月板に過去の損傷がある人は、普段から膝に不自然なストレスがかかりやすくなり、その結果、膝関節の軟骨が異常に速いペースですり減り、骨の変形が進むことがわかっています。

■更年期によって生じる炎症
もう一つは中年以降に生じやすい「炎症」の存在です。40代50代になると関節の滑膜(かつまく)が炎症をおこします。特に女性の更年期前後にその傾向は顕著になります。
炎症が起きた滑膜から軟骨を壊してしまうサイトカインという物質がたくさん放出されることで軟骨が急ピッチにすり減ってしまいその結果、骨の変形が進むことがわかってきました。そうすると、ひざの骨にさらに余計な負担がかかり、2年~3年という比較的短い期間で関節が変形していくことがもう一つの病態として認識されてきました。

まとめると変形性膝関節症の病態は、単純な経年劣化のすり減りはなく
① 過去の靭帯や半月板のけが
② 更年期によって生じる炎症
のふたつが変形を加速させていることが分かっています。

Q:病院に行ったところ「レントゲンではそれほど悪くない」といわれたのですが、膝はとても痛いです。どうしてなのでしょうか?

レントゲン検査での骨の変形と、痛みの強さは、必ずしも一致するわけではありません。つまりレントゲンではそこまで変形していないのに強く痛い、という人もいれば、レントゲンでそこそこ変形しているのに痛くない、という方もいます。

実は変形性膝関節症の痛みは、骨の変形だけが原因ではありません。骨の変形はかなり重度になると(ひどい変形)痛みを発生させますが、重度になる手前の段階では痛みの原因にはならないのです。では骨の変形以外で何が痛みの原因になっているのでしょうか?

一つの原因は炎症です。膝の関節の周りに炎症が起きていると痛みの原因になります。また、最近では関節のまわりに異常な血管がたくさんできて、痛みの原因になることがわかってきました。これについてはこちらの記事「治りにくい痛みの原因、「モヤモヤ血管」とは?」も参考にしてください。

変形性ひざ関節症のカテーテル治療について私(医師:奥野祐次)が書いた論文概要はこちら(2-4年成績とMRI変化)

正常な膝と、変形性膝関節症の膝
正常な膝と、変形性膝関節症の膝

Q:変形性膝関節症と言われました。これ以上変形が進まないような予防法はありますか?

あります。

変形性膝関節症はどうして変形してしまうかというと、いくつかの原因があげられます。そのうちの一つは体重です。やはり体重が重いほうが膝に負担がかかり、軟骨がすり減ってしまう。これは簡単にイメージできますね。

しかし体重だけではありません。実はカロリーの高い食事自体が(体重は重くなくても)身体に炎症を起こし、炎症によって痛みや変形が進んでしまうことが知られています。基本的に人間の体は炭水化物や脂質などでカロリーを取りすぎると炎症が起きやすくなります。そして炎症が起きた時には、「炎症性サイトカイン」という物質が放出されます。複雑そうな名前ですが、体の組織を傷つけてしまう物質と理解してください。

ひざに炎症が起きると、膝の軟骨が炎症性サイトカインによって傷つけられ、すり減っていきます。ですから炎症を起こさないことが重要です。

また、すでに炎症が起きているなら、速やかに炎症を抑えることも重要です。炎症が起きると膝に痛みが生じますから、痛みがあるということは炎症が起きているとも言えます。炎症を抑える治療をすると痛みの改善にもなりますし、将来のさらなる変形の進行への予防にもなるのです。

また、別の予防策としては、15秒指圧というものがあります。やり方は後述する「自分でできる対処法」のところで詳しく述べます。

あとは太ももの筋肉を鍛えることも予防には役に立ちます。別の項目で詳しく述べています。

Q:変形性膝関節症でしてはいけない運動は何ですか?

代表的な動作として草むしりや庭いじりのように、膝を深く曲げた状態で長時間作業を続ける動作です。このような動作は、膝が完全に曲がって太ももとふくらはぎが接する「深屈曲」の状態をつくり、膝に大きな負担がかかります。さらに症状が悪化するので、してはいけない動作になります。また、同じようにしゃがんだ姿勢で行う床掃除などの長時間の作業は膝に大きな負担がかかります。

激しめのダンスやひざに強い痛みを伴う運動もひかえるほうがいいでしょう。また、階段の昇り降りも、日常的に行う必要がある場合は注意が必要です。とくにエレベーターのない環境で階段を頻繁に使用することが日課になっている場合、膝に無理な負担をかける可能性があります。膝が痛いにもかかわらず筋力をつけようと階段を昇り降りする動作は、かえって症状を悪化させることになります。

膝の変形や痛みが強いときに山登りや下山といった動作も膝に大きな負担をかけます。無理な登山や負荷の高いハイキングなど膝を使う動きは控えることが大事です。

Q:変形性膝関節症でしたほうがいい運動はありますか?

プールでのウォーキングはおススメです。浮力で自分の体重をフルにかけることなく膝の関節を動かすことができる方法で、理想的な運動になります。またジムにあるような自転車を漕ぐエアロバイクも変形性膝関節症の改善によい運動です。

膝に限らず、人間の身体のあらゆる関節は、健康な状態を保つためには「動かす」ことが必要になります。変形性膝関節症の場合、膝に体重がかかると痛く動かすことが負担になります。ですがそれをあまりに恐れて、動かさない状態が続くと、どんどん関節が固まってしまい症状が悪化するためプールのウォーキングで痛くない範囲で少し動かす運動が推奨されます。

Q:天気の悪い日に膝の痛みが強くなります。なぜですか?

天候によって膝の痛みが変化する、特に雨が降るまえなどに痛みが増したりする人はとてもたくさんいらっしゃいます。

上の質問で答えたように、変形性膝関節症の痛みの原因として重要なのは骨だけではありません。血管も重要です。

下の図のように、変形性膝関節症では、痛い場所に異常な血管が増えてしまっています。血管が増えると神経線維も一緒になって増える傾向があるため、この血管が増えているところには神経も増えており、血液の流れが増えるとズキズキと痛み出してしまいます。

さて、特に雨の日には気圧が下がります。人間の血管は気圧の低下によって拡張する傾向があるため、異常な血管への血液の流れも増加して、痛みが増すようになります。

天候によって痛みが変化する、という方は、血管が原因の痛みである可能性があります。ぜひ専門の医療機関を受診してみてください。

Q:右膝だけが痛いですがどうしてですか?

変形性膝関節症で片方の膝だけ変形が進むことはよくあります。

過去に片方の膝だけ怪我(半月板損傷と靭帯断裂の大きく分けて二つ)をした場合、その傷をうけた膝だけが変形が進み痛いという病態がおきます。過去の怪我がない人は両膝に痛みが生じ、変形も左右で同じくらいのペースで進むことが多いです。

Q:変形性股関節症の改善によいマッサージやストレッチ、トレーニングはありますか?

■変形性膝関節症に対するマッサージ
太ももの前側、膝蓋骨(ひざのお皿・写真の青い丸)の上が硬いと、動作時にひざの動きが悪くなり、負担が大きくなってしまいます。

ひざのお皿の上の筋肉を手でつかんで少し持ち上げます(写真の赤い丸)。
少しずつつかむ部位を変えながら、太ももの前側をマッサージして柔らかくしていきます。
一部位につき5秒程度つかみます。

マッサージ

■変形性膝関節症のトレーニング
ひざへの負担を軽減させるためには、股関節周囲の筋肉を強くすることをおすすめします。
椅子に座り、座面に手を置きます(写真の青い丸)。体幹が少し前傾するような姿勢になります。

椅子に座り、座面に手を置きます(写真の青い丸)。体幹が少し前傾するような姿勢になります。

ひざを曲げたまま、足の裏が5〜10cm床から離れるように上げて(写真の赤い矢印)、ゆっくり下ろします。
片側ずつ10回しましょう。股関節前側のにある筋肉のトレーニングです。

足の裏が5〜10cm床から離れるように上げて(写真の赤い矢印)、ゆっくり下ろします。

脚を上げた時に体が後ろに倒れないように気をつけてください。

悪い例
悪い例

■変形性膝関節症に対する可動域運動
ひざへの負担を軽減させるために、足関節の動きを良くすることも大切です。椅子などに片足を乗せます。床で片膝立ちの姿勢でも構いません。

椅子などに片足を乗せます。床で片膝立ちの姿勢でも構いません。

内側と外側のくるぶし(写真の青い丸)を結んだ線上の真ん中あたり(足関節の前側)に両側の親指を当てます。

内側と外側のくるぶし(写真の青い丸)を結んだ線上の真ん中あたり(足関節の前側)に両側の親指を当てます。

両側の親指を当てたまま、ひざを前に倒していきます(写真の赤い矢印)。
無理なく動かせる範囲までゆっくり前に倒したあと、元の姿勢に戻します。これを10回繰り返します。
足関節が曲がる支点が親指を当てたところになりますので、足関節の可動域が広がりやすくなります。   

両側の親指を当てたまま、ひざを前に倒していきます(写真の赤い矢印)。

Q:変形性膝関節症には筋トレや運動をしたほうが良いと聞きました。具体的にどのようにすればよいのでしょうか?

「筋トレ」と聞くと、かなりハードなことをしたほうが効果が出ると思われてしまうかもしれません。そのため、お医者さんや治療者に「筋トレをしなさい」と言われて無理をして頑張りすぎてしまい、逆に膝を痛めてしまうひとも少なくありません。

変形性膝関節症の方にお勧めする筋トレは、「膝小僧を上げる」運動です。椅子に腰かけ、足を前に出します。膝は完全に伸ばすか、痛くて伸ばせない人は痛くない範囲で伸ばします。次にひざのお皿の上端を指で触ります。そのまま太ももの前面に力を入れてみてください。すると膝のお皿が少し上に上がるのが当てている指で触れるとおもいます。これを10回1セットとし、1日に2セットすれば十分です。

あまり激しすぎるトレーニングは禁物です。特に階段を上らなきゃとか、長い距離を歩かなきゃなど思い込んではいけません。そのような激しい負担は、膝が痛いときには反対に膝にさらなる炎症を起こしてしまうので避けてください。

Q:変形性膝関節症になっています。自分でできる対処法はありますか?

自分でできる対処法としてお勧めなのは15秒指圧です。

変形性膝関節症では、膝のまわりのどこかに「押すと痛いポイント」があります。指一つ分くらいの狭い場所がひとつあるいは複数あることが多いです。明らかに他の場所よりも痛いポイントのことです。膝の内側が痛い人は内側に、外側が痛い人は外側に、自分で膝の周りを親指でいろいろな場所を押してみるとこの「押すと痛いポイント」を発見できるのではないでしょうか?

この痛いポイントが発見できれば、そこをじっと15秒ほど押し続けます。そんなに強い力でなくてもいいです。押し始めた時は痛みがあると思いますが、じっと押し続けていると痛みが引いていくのがわかると思います。

この15秒指圧について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

自分でできる長引く痛みへの対処法、「15秒指圧」とは?

Q:膝が痛いときの立ち上がり方はどうすればいいですか?

①まず、椅子の深い位置から少し前にお尻をずらします。
②両方の足を少し手前に引くようにします。
③頭と、体をお辞儀をするように少し前に曲げ(倒し)、足に体重がかかったタイミングで立ちます。
④また、痛みがある場合は①~③を意識しながらも、まずは、手摺、肘掛け、テーブルなどの支持(支え)を使いましょう。
⑤日頃からの大腿四頭筋のトレーニングも大事です。

Q:変形性膝関節症で、将来の変形の進行を抑える方法はありますか?

方法はふたつあります。

1.炎症があるならばなるべく炎症を抑える
変形性膝関節症にはどのような症状がありますか?でも説明したように炎症が起きることで膝の変形は非常に速いスピードで進みます。だいたい2年か3年でかなり変形が進んでします。強い炎症がおきると膝に水がたまり、その状態を放置すると2年ぐらいで変形が進んでしまいます。

膝に熱がある、腫れている、強く痛い、などの炎症がおきている自覚症状を感じたら、炎症を抑える専門医のところに行き早急に治療をすることが重要になります。

2.良い歩き方を獲得する・体重を減らす
O脚や体重の増加などが原因で、歩くときに膝に力学的なストレスがかかるとされています。これを「内反モーメント」といい、膝の変形を進める原因になります。

内反モーメントは一部のクリニックで測定することができますので、その数値が異常に大きいと分かった場合は足底版(インソール)や歩き方の指導をうけることで、内反モーメントを小さくする対策をしてください。また膝の負担を減らすには体重を落とすことも推奨されています。

膝の変形の原因となる「内反モーメント」を上手に減らすことで、将来の変形の進行を防ぐことができます。

Q:ヒアルロン酸の注射は通常5回までということですが、近くの整形外科で毎週したほうが良いと言われ、もう20回以上打っています。大丈夫なのでしょうか?

ヒアルロン酸は数回試してみて効果が得られないのであれば、何度も打ち続けることはお勧めしません。

2013年にアメリカの整形外科学会は「変形性膝関節症へのヒアルロン酸注射を推奨しない」と明言し、さらに5年たった現在でも、ヒアルロン酸については「効果が証明できておらず、推奨しない」のままです。

ところが日本ではなぜかヒアルロン酸を打つという診療がいまだに続いています。

ヒアルロン酸の注射で改善しないという方は、専門の医療機関の受診を検討してください。

Q:変形性膝関節症と診断され、レントゲンでは手術するほど悪くはないと言われました。しかし痛みが治らず1年以上経過します。さまざまな治療をしましたが治らないのですがなぜでしょうか?

レントゲンではそこまで悪くないのに膝が痛い、しかも治療をしているのに治らない、という場合は、いま受けている治療が「痛みの原因」に正しくアプローチしていないからかもしれません。先ほどの記事でも述べていますが、変形性膝関節症の痛みの原因は「異常な血管とその周りに増えた神経」です。この痛みの原因にアプローチしないと痛みは治りません。今までの治療で効果がない場合は、ぜひ専門の医療機関を受診されることをお勧めします。

Q:変形性膝関節症にサポーターは効果的ですか?

ある程度の効果が期待できることがありますが、一概にすべての人にお勧めできるものではありません。変形性膝関節症の痛みは人によって異なります。膝を支える筋肉が不足して膝がぐらぐらしてしまい痛みが増しているときには、サポーターをしたほうが楽かもしれません。一方で膝のぐらぐらはあまりなく、膝の前の方に炎症が強い場合はサポーターによって痛みが増してしまうこともあります。またサポーターにもいろいろな種類があります。

重要なのは付けてみて楽になるか、あるいは痛みが増してしまうか。痛みが増してしまうなら続けないほうが良いと思います。

実際には専門の医療機関で相談し、一人ひとりに合う方法を指示してもらうことが望ましいです。

Q:変形性膝関節症で手術を勧められました。手術とはどういったものがありますか?

手術の種類としては3種類に分けられ、関節鏡手術、高位脛骨骨切り術、人工膝関節置換術というものがあります。

関節鏡手術とは、膝に4か所ほどの穴をあけて、関節鏡と呼ばれる細いスコープで膝関節内を観察し、滑膜や軟骨ねずみといった痛みの原因となりうるものを掃除する手術です。初期の状態なら痛みが取れる方もいますが、関節の変形はそのままなので、時間とともに再発する場合があります。

高位脛骨骨切り術とは、脛骨(すねの骨)の一部を切り、O脚を矯正する手術です。人工骨の埋め込みや、金属プレートによる固定が必要となるため入院期間が長くなります。比較的活動量の多い方には最近はよく行われている手術です。

人工膝関節置換術とは、変形が重度の人に行われます。変形してしまった自分の関節を金属のインプラントの関節に置き換える手術です。変形が末期の患者さんが対象となります。しかし術後も一定の割合で痛みが残ってしまうことがあり、問題となっています。

かかりつけのドクターに手術をすすめられたら、自分の膝の変形の進行具合と、どの手術が適しているのか、術後の生活はどうなるか、痛みが残ってしまう確率は?などといったことを詳しく聞くことをお勧めします。

Q:変形性膝関節症があり、手術を受けようか悩んでいます。手術以外の方法で改善されることはありませんか?

ひざの人工関節や骨切りの手術は身体への負担が大変大きいため、確かに慎重に選択したほうが良いです。手術以外の方法としては、様々な治療を組み合わせる「集学的治療」が効果的です。

集学的治療とは、ひざの痛みを解消するためのいくつかの「手術以外の方法」を組み合わせることです。

例えば、このサイトで説明しているように、ひざの周りに生じた異常な血管を減らすためのカテーテル治療(詳細はこちらのページ「運動器カテーテル治療とは?」を参照してください)を取り入れ、さらにそれだけでなく骨のダメージも生じていることがあれば、骨を強くする薬を加える、さらに脳のセロトニンという物質を多く出すための生活習慣を見直す、さらに食事管理を積極的にして体重を落とす、などを組み合わせて、なるべく手術をしないで痛みを取る治療です。

集学的治療にご興味のある方は、痛みの専門医療施設にて相談してみてください。

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痛みをもたらす病気・けが

執筆 奥野祐次(医師)

医師 奥野祐次

医療法人社団 祐優会 総院長
オクノクリニック 院長
慶応義塾大学医学部卒業
慶応義塾大学医学部医学研究科修了

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