奥野祐次先生の学術・論文

THESIS
2017年6月27日発表

変形性ひざ関節症へのカテーテル治療の2-4年成績とMRI変化

 

この論文は2017年に私、奥野祐次が米国のJournal of Vascular and Interventional Radiologyという医学雑誌に投稿した論文です。

この雑誌は米国で発行されていて、カテーテル治療を専門にする医師から最も高く評価されているもので、ここに掲載されることで世界各国の医師から読まれることになります。運動器カテーテル治療が世界で普及するためにも重要なことです!

今回はこの論文の内容をご紹介いたします

 

論文のタイトルは「軽度から中程度の変形性ひざ関節症の方にカテーテル治療を行なった後の、中期成績とMRIの変化」となっています。

中期成績というのは、何かの治療をしてから2-4年ほどの経過した状態を調べた、というものです。

新しい治療には様々な憶測が生じます。「本当に安全なの?」「効果は持続するの?」などなど。治療を開発し普及するためにはこのような疑問の一つ一つをしっかりと検証することが大切です。

 

今回の研究では2012年から2016年までにカテーテル治療を受けた変形性関節症の患者さん72名(両ひざ治療した人もいるため、95関節)を対象にしています。

レントゲンで最も重度の変形のある人は含まれておりません。軽度から中等度の変形のある患者さんを対象にしています。

それらの方を治療したのちに、1,3,6か月後などの短期間の成績とともに、2年、3年、4年後という比較的長い期間の経過を観察して報告しました。

評価した項目は、痛みのスコア、ひざを日常生活でうまく使えているかなどの質問スコアを評価し、さらに治療2年以上経過した人にはMRIを撮影しています。

 

 

この図は、この論文内にて私が報告している、ひざの血管の走行をまとめたものです。

ひざの動脈がどこから出てどのように走っているかをまとめています。

ひざを栄養する(ひざ関節に向かっていく)動脈は全部で8本あり、治療時はこれらの動脈ひとつひとつをチェックして進めていくことになります。

8本もあるなんて!!と感じた人もいるかもしれませんね。

 

この図は論文の中に出てくるもので、血管撮影した写真の例を示しています。

2枚の写真がありますが、いずれも同じ患者さんのもので、左は治療前、右は治療した後の写真になります。治療前には矢印で示したところに、もやもや血管があるのがわかります。

 

 

さて、研究結果です。

まずは痛みのスコアや日常生活スコアは、治療後1,3,6か月後の短期間のうちにはっきりと変化が見られています。治療前と比べてスコアが50%以上改善した場合には「臨床的な成功」と定義していますが、治療6か月後では全体の86.3%が「治療成功」の状態でした。

 

さらに3年後の時点でも、「治療成功」の状態を保っている人は79.8%いました。つまり3年経過しても多くの人は好い状態を保っていたということになります。

この図はカプラン・マイヤー曲線といいまして、時間の経過に従って良い状態の患者さんの割合がどのように変化したかを示しています。横軸が時間(年単位)で、縦軸は「治療成功」の人の割合です。

これで見ると、治療後2年、3年、4年と経過を追っても、線が下方に下がっていくのではなく、横ばいでキープしているのがわかります。

また、「KL1-2」や「KL3」と書いてあるのは、レントゲンの分類です。「KL1-2」は「軽度の変形のある人」で、KL3は「中等度の変形のある人(まずまず変形している)」ということになります。変形が軽度の人は、より良い成績を保っているのがわかります。

 

さらにこの論文では、治療後2年経過した人に、MRIの検査を行なっています。

「運動器カテーテル治療をしたら、その後に何か不具合が生じてしまうことはないの?」「軟骨がどんどんすり減ってしますのでは?」などと疑問に思うかもしれません。新しい治療が本当に良い治療なのか検証するために、そのような点も評価することが重要です。

 

上の図のように、同じ患者さんで治療前とともに治療2年後にも撮影させていただき、軟骨や半月板などを含めた変化をスコアにとり記録しています。

 

結果はこちらの表にまとめられています。

英語ばかりですので読みにくいと思いますが、要点を説明しますと

Cartilage(軟骨)、Marrow (骨髄)、Menisci(半月板)、Ligament(靭帯)などの膝を構成する重要な要素のスコアは、治療前と比べて2年後で大きな変化は見られませんでした(つまり、これらの構造は保たれていた)。

また、Synovitis(滑膜の炎症)に関してははっきりとスコアが改善されていました。また骨棘(レントゲンで見れるような骨のとげ)は若干増える傾向にありました(年月が経つと増えるのは当然)。

これらのことから、カテーテル治療をしてから2年経過しても、「予測しなかったような不具合」は生じていないことがわかりました。むしろ変形の進行を抑えているかもしれない可能性もあります。

これは非常に有用な点ですが、より多くの人数の患者さんで調査してみないといけない内容だと思われます。

 

以上のように簡単に見てきましたが、運動器カテーテル治療は「長引くひざの痛み」の代表的な病気である「変形性ひざ関節症」の患者さん(特にレントゲンでそこまで重症ではない人)にとっては、とても有用な治療である可能性が示されています。

 

今後もこれらの研究が私たちだけでなく世界から報告されて、治療の安全性や有用性が確立されることを願っています!!

 

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