奥野祐次先生の学術・論文

THESIS
2017年4月27日発表

五十肩の運動器カテーテル治療の3年経過報告

運動器カテーテル治療を受けてから3年後にはどうなっているのか?
すごく気になりますね。

医療の世界では「長期成績」と呼びますが、長く時間が経過した時にどのような変化があるのか、他の治療と比べてどうなのか?を検討することは極めて重要です。

私たちは2012年から2013年の間に運動器カテーテル治療を受けた五十肩の患者さんを経過観察し、3年間の変化を記録してまとめた論文を2017年に発表しました。

投稿したのは世界のカテーテル治療医に最も親しまれているJVIRという医学雑誌です。

今回の研究では、「何をしても良くならない」しかも「症状が強い状態が続いている」という、重度の肩関節周囲炎(通称「五十肩」)の患者さん25名を治療し、治療3年後まで経過をフォローした研究になります。

 

 

 

このような研究では、全員の人をしっかりフォローすることはほとんど困難です。必ず2,3割の患者さんが、経過観察困難(連絡が取れなくなったり、研究から離脱をご希望される)のが普通です。

私たちの研究では1人の方が個人的な理由で治療後すぐに離脱していますが、それ以外の24名の患者さんを3年間追跡調査することが可能でした。研究にご協力いただいた患者さんに感謝いたします。

右の図は、肩関節に向かう動脈がどこから出るか、どの部位に向かうかを示した模式図です。

肩には6本の動脈が関与しています。私たちはこれらすべてをチェックして治療していくことになります。

 

 

 

それでは研究結果を見ていきましょう。

まず重要なことは「安全性」です。副作用がなく治療できるかどうか。

結論から言うと、25名の方の中で重度な副作用が起きた方は1人もいませんでした。中程度の副作用もなく、あったのは軽度のものでした。それらには、治療中の軽度の痛み(薬剤を注入するときに痛みを感じる人が一部います)が5名で最も多く、他は一時的な発熱や、カテーテルを入れた手首の痛みがそれぞれ1名に見られた、という内容でした。全体として「安全に治療でき、大きな副作用はなかった」と言える内容です。

 

続いて、痛みの改善について。

まず、全員の人が「夜、寝ていて痛みで起きてしまう」あるいは「寝返りすると痛い」などの夜間痛という症状をもっていました。

この夜間痛が最もつらいことの一つなわけですが、今回の患者さんでは治療後1週間以内に67%の人が夜間痛の改善しており、1か月後には87%と9割近い人で夜間痛が改善しています。

「何をしても治らなかった」という状態の人達ですから、まずこのことは喜んでいただいた部分になります。

 

さらに3年の経過の中で、痛みの再発はあったか調べました。その経過が下記の図になります。

 

こうしてみてみると、3年の経過(横軸)の中で、痛みの強さ(縦軸、上の方ほど痛い)は減少する一方で、再び痛くなった、という再発は見られませんでした。

今回の調査は3年まででしたが、その期間でいえば多くの人が再発しない、ということがわかりました。

 

また、五十肩は腕が上がらなくなる(可動域制限と呼びます)病気ですが、この可動域制限は3年経過するとどうなったのでしょうか?上がらないままでは困ってしまいます。

それらを調べた結果が下の図です。

少しわかりにくいと思いますが、結論から言いますと、運動器カテーテル治療を受けた後は、すぐに腕が上がるようになるわけではないものの、徐々に可動域は改善し、半年後にはほぼ正常の状態になっている。1年後には病気になる前と全く同じと言っていいほどの状態になっていることがわかりました。

今回の研究で3年後のフォローをしたときに患者さんがよくおっしゃっていたのが

「どちらの肩を悪くしたのか、思い出すのに時間がかかる、あるいは覚えていない」ということでした。

痛みがなくなっているのは当然ながら、可動域の制限もほとんどなく動かせていて、日常生活に支障がないことから来る感想なのだと感じています。

 

さて、今回の論文紹介は以上です。

ひとくくりに「五十肩」と言っても、重度の方は非常に長い間苦しんでいます。

そのような方への有望な治療として普及されることも願っています。

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