奥野祐次先生の学術・論文

THESIS
2017年7月1日発表

テニス肘への運動器カテーテル治療の治療成績について

2017年の7月に私、奥野祐次の書いたテニス肘への運動器カテーテル治療の治療成績についての論文が、肩や肘の整形外科医が世界で最も権威のある医学雑誌に掲載されました。
今回はその論文の内容を解説します!

今回掲載された医学雑誌は、Journal of Shoulder and Elbow Surgeryという名前のもので、肩や肘の疾患を扱う整形外科医は誰もが知っている米国の雑誌です。
このような広く知られている医学雑誌に運動器カテーテル治療についての研究が取り上げられることは大変素晴らしいことです!
どの論文にもタイトルがあります。この研究のタイトルはというと、「治りにくいテニス肘の患者さんへ運動器カテーテル治療を行ない、2年間の術後経過」ということになります。

ここでいう「治りにくい」という定義は、「痛くなり始めてから6ヶ月以上が経過しており、かつ、これまでに3か月以上ほかの治療(理学療法や注射)をしながらも改善していない人たち」という意味です。
この研究では24人の患者さんが運動器カテーテル治療を受けています。
多くの人が治療を受けるまでに1年以上もの間、痛みを抱えていました(平均17か月)


つまり治りにくい痛みを抱えていたということです。平均年齢は52歳。
24人のうち全員が過去に理学療法を受けており、24人中22人はステロイド注射を行なっていましたが効果はなかったという方たちです。
このような患者さんに運動器カテーテル治療を行ない、治療後1か月、3か月、6か月、1年、2年と、術後の経過を観察しました。観察する項目は、痛みの強さのスコア、肘が上手く使えるかについてのスコア、握力などです。
また、術前のMRI検査と術後2年経過した時のMRI検査の結果も比較しました。

↑カテーテル治療前後の血管撮影写真。左が治療前で右が治療後。
治療前の写真での黒く染まっているとことが痛みの原因となっているモヤモヤ血管です。
治療後には消えていることがわかります。

結果です。

まず、24人のうち22人の患者さんが治療してから2年後まで経過観察を終えました(研究というのは途中で脱落する人が一定数いるのが普通で、2人だけしか脱落していないというのは良い数字です)。

痛みのスコア、肘の使いやすさのスコアは統計的に明らかに改善していきました。

治療後半年の段階で治療が十分に成功した人の割合は88%(全員が治りにくいテニス肘であったことを考えると、非常によい結果といえます。途中脱落の人は治療失敗として扱っています)でした。

また、重篤な合併症(重い副作用)が現れた人は当然ながらいませんでした(もともと運動器カテーテル治療は800名以上の人に行なわれても重度の副作用がなかったことから当然といえます)。

さらに握力が明らかに改善し、正常な状態に近づいていることも確認しています。

また、今回の研究では、治療後2年のMRIを検査し、治療を受ける前の時のものと比較していることも大きな特徴です。

MRIを比較してみて判明したことは、まずカテーテル治療をすることで腱や軟骨、靭帯といった組織に副作用などが長期的にみても観察されないことがわかりました。また、治療前のMRIでは、痛みの出ている腱が腫れていたり腱が部分的に切れてしまっている様子が見られるわけですが、2年後のMRIではこれらの様子は悪化するのではなく、むしろ改善していることがわかりました。

つまり、炎症や腫れだけでなく、断裂の所見も軽減されていました。

これは実際には今後の慎重な検討が必要ですが、組織の修復が治療後に促されたことになります。

このような結果を踏まえて、私たちの結論としては、運動器カテーテル治療は治りにくいテニス肘の治療として、痛みの改善だけでなく握力などの機能的な面の改善や、組織の修復に対してもポジティブな作用をもたらす可能性がある治療であることが示唆された、とまとめています。

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