奥野祐次先生の学術・論文

THESIS
2018年12月16日発表

幻肢痛への運動器カテーテル治療の一例報告

 

今回紹介する論文は「幻肢痛」という、治療が大変難しいとされている痛みを持った患者さんに、運動器カテーテル治療を行なったという一例報告です。

 

一例報告とは、一人の患者さんの経過について、「このような治療をして、こういう経過をたどりました」と報告するタイプのものです。

 

この論文はCVIRというヨーロッパで最も有名な放射線科カテーテル専門医学誌に掲載されました。

 

 

 

今回報告した患者さんは40代の男性の方で、17年間、幻肢痛の痛みに悩まされていました。

 

幻肢痛とは、何らかの理由で切断されてしまった足や手に痛みを感じる現象(本来、すでになくなったはずの手や足を痛いと感じる現象)を言います。

 

最適な治療法はまだないとされており、現場でも未解決の問題の一つと言えます。

 

 

今回報告した患者さんは、交通事故で右足の膝から下を切断しなくてはならなくなり、切断から半年ほどしてから幻肢痛を感じるようになります。それから10年ほどしてから痛みがさらに増し、神経ブロックや神経焼灼術を繰り返し、さらに鏡をつかって残っている反対の足を見ながら治療を行なうミラー療法や、様々な飲み薬、麻薬の張り薬などをしましたが、それでも強い痛みが出てしまい、夜は2-3時間痛みが続き、眠れない日々が続いていました。

 

痛みが発生してから17年ほど経ったときに、私たちのモヤモヤ血管に対する運動器カテーテル治療のことを知り、受診されました。切断面に圧痛(押すと痛い現象)を認めたため、切断面に生じた異常な毛細血管が原因と考え、治療をお勧めし受けていただきました。

 

 

治療の最中には、原因となっているモヤモヤ血管に薬剤を流しているときに普段の痛みが再現されており、やはり血管と神経が一緒に増えていることが原因と考えられました。そして治療当日から大幅に痛みが減少していると感じてご帰宅されています。

 

その後、夜間の痛みで眠れないことは一切なくなり、普段感じていた痛みも10→1程度に改善されました。

治療から2か月後に受診した際は切断面の腫れがなくなり、義足のサイズが合わなくなったとおっしゃっていました。さらに6か月後にはドライブやパラグライダーなどの趣味も痛みなくできるまで改善しています。

 

 

幻肢痛は未だに有力な解決方法がなく、困っている方も多い疾患です。

幻肢痛の人のすべての人にモヤモヤ血管ができていると言いたいわけではもちろんありませんが、解決できない人の中には私たちの治療が役に立てるのではないかと考えています。

 

今回の治療報告から一人でも多くの人が痛みを適切に処置できる可能性が広がることを願っています。

 

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