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膝関節血腫
Q:【動画】膝関節血腫とはどんな病気ですか?
膝関節血腫とは、出血によって膝関節が腫脹し、痛みや動かしにくさの原因となる疾患です。靭帯断裂や半月板損傷などの外傷で起きる単発のものと、繰り返し生じる反復性のものがあります。
反復性のもので最も多いのは膝の人工関節置換術を受けた後に発症するもので、手術をした症例の0.3%-1.6%で起こると言われています。比較的頻度は低いですが、術後に慢性の痛みを引き起こす重要な疾患です。また人工関節の手術をしていなくても、血友病などの血が固まりにくい状態の人にも発症します。
動画でも解説しています
・膝関節血腫が起こりやすい場所
・なぜ膝に血が貯まるのか?(膝のじん帯の損傷、血液サラサラの薬を飲んでいる、血友病、人工関節など)
・治療方法(保険診療で受けられる血管塞栓術など)
Q:膝の人工関節の手術をした後に、繰り返し血液が溜まってしまい、何度も抜いていますが、すぐにまた溜まります。繰り返す膝関節血腫の原因は何ですか?
膝関節血腫のうち、繰り返す反復性のものは、人工関節置換術後に肥厚した滑膜と人工関節の繰り返しの衝突することが原因として一番多いです。人工関節の手術以外に、外傷や、易出血傾向(血友病や、抗凝固薬の内服など)が重要な原因として指摘されています。関節腔内に溜まった血液が炎症を惹起し、滑膜炎、新生血管の増生を促進させて、さらなる出血につながり、悪いサイクルに入ることが原因の一因とされています。
Q:膝関節血腫の症状はどういうものがありますか?
膝の痛み、腫脹、発赤、曲げにくさ(可動域制限)などがあります。放置しておくと、関節炎が持続し、関節破壊につながります。
Q:膝関節血腫はどうやって診断しますか?
レントゲンで膝蓋骨や大腿四頭筋腱の変異、また関節液を認めます。超音波やMRIでの血腫の存在の確認により診断が可能です。肥大した滑膜の存在は、反復性関節内血腫の原因として重要な所見です。
図は、反復性血腫に関する論文からの引用です。赤丸で囲った部分に、出血を認めます。出血がひどくなると、図Aのように、単純レントゲンで診断できることもあります。
Q:膝関節血腫はいつ治りますか?何度も繰り返したり、放っておいたりするとどうなりますか?
外傷などで生じた単発の膝関節血腫は、一般的には2週間から3週間ほどで自然に治ります。反復性の膝関節血腫は、より長期にわたる可能性がたかく、数か月ないし数年かかることも珍しくありません。
繰り返し血腫が生じ長期に関節内に血液が溜まっている場合は、血の塊がさらなる炎症を起こし、関節の軟骨などの組織がダメージを受けます。また、炎症がさらなる出血を引き起こすため、長期化する原因になります。
そのような場合は、この後で紹介する選択的血管塞栓術を受けることをお勧めします。この治療について詳しく知りたい場合は、下記の治療実例も参考にしてください。
Q:膝関節血腫の治療は?
膝関節血腫の治療としては、以下のようなものが一般的です。
・安静
・血腫吸引(関節内に針を進めて血液を抜く治療)
・圧迫
・アイシング
・鎮痛薬
・抗凝固薬の中止
上記の治療でも効果が無く、出血を繰り返す場合は選択的動脈塞栓術(後述)や手術が選択されます。手術は炎症を起こしている滑膜を切除することが多いですが、確実な治療ではない事、膝関節の機能性が落ちる事が懸念点としては挙げられます。
選択的動脈塞栓術というのは、出血している血管を塞栓(血管を詰める)治療です。特に海外では多く報告があります。図は、反復性血腫に対して、カテーテル治療を行なった症例の報告から、引用しています。
図G黄色の矢印は、肥厚した滑膜に増殖した血管を認めています。黒く染まっている部分が増殖している新生血管で、こちらから出血をしていることが疑われましたので、こちらに塞栓物質を注入して、図Hのように、血管が減少しているのがお分かりいただけると思います。
Q:膝関節血腫を繰り返して困っています。カテーテルによる選択的動脈塞栓術はどんな治療ですか?
日帰りで30分から1時間でできる、負担の少ない治療です。
はじめに足の付け根を局所麻酔して、とても細くて柔らかいチューブ(カテーテルと呼びます)を血管に挿入し、血管の中を膝の近くまで進めて、出血の原因となっている異常な血管を見つけます。その後、その異常な血管に小さな粒子を投与して、出血している血管を塞き止めます。
「血管を塞ぐ」と聞くと怖いイメージを持つかもしれませんが、出血の原因になっている異常な血管だけを塞ぐため、虚血(血液がいきわたらなくなる)のような副作用は生じません。
考えられる合併症としては、造影剤によるアレルギー、術後の疼痛の悪化(数日で治ることが多い)が挙げられますが、重篤な合併症はありません。保険診療で受けていただけます。
詳しく知りたい方は、こちらの治療実例も参考にしてください。