慢性痛治療の専門医による痛みと身体のQ&A

痛風

Q:痛風とはどのような病気ですか?

痛風とは、尿酸の結晶が関節に沈着することで炎症が起こる疾患です。

痛風の主な症状は急性な関節炎症で、通常は足の親指の付け根に痛みや腫れが現れます。この痛みは非常に強烈で、患部が赤くなり、触れると非常に痛いです。足関節、足の甲、アキレス腱のつけ根、膝関節、手関節にも発作が起こることがあります。急性な発作が終わると、しばしば関節内に沈着した結晶が残り、慢性的な痛みや関節の損傷が残ることがあります。

Q:痛風の原因は何ですか?

体内の尿酸の生成が過剰であるか、または尿酸の排泄が不十分である場合、血中の尿酸濃度が上昇し、高尿酸血症となります。これが痛風の基本的な原因です。おもに以下のような要因があります。

食事: 尿酸の生成に食事が影響を与えることがあります。特に、高脂肪食やプリン体が豊富な食品(内臓、赤身の肉、ビールなど)の摂取が高尿酸血症を引き起こす可能性があります。

生活習慣要因: 肥満、アルコールの過剰摂取、特にビールは高尿酸血症のリスクを増加させる可能性があります。

腎機能障害: 腎臓が正常に機能していない場合、尿酸の排泄が妨げられ、高尿酸血症が発生しやすくなります。

Q:尿酸値とは何ですか?

尿酸値とは、血液中に存在する尿酸の濃度を示すものです。尿酸はプリン体が分解されて生成される物質です。プリン体は細胞の増殖などの際に体内で生成されるほか、干物や甲殻類、ビールなどの食品からも体内に取り入れられます。高尿酸血症が痛風の主な原因の一つであるため、尿酸値の測定は痛風の診断や管理において重要な検査となります。また高尿酸血症を放置すると腎機能障害、腎臓・尿管結石などの病気を引き起こしますので、早期発見が重要となります。

Q:痛風発作の原因は、血液中の尿酸の値が増えることだと聞きました。なぜ尿酸が増えると痛風発作が生じてしまうのですか?

血液中の尿酸の値が増えると(尿酸の濃度が高くなると)、尿酸がナトリウムなどの塩基と一緒になり、尿酸塩という「結晶」となって関節に溜まります。理科の実験を思い出していただきたいですが、塩化ナトリウム(いわゆる塩)とか砂糖が結晶となるのと同じようなものです。濃度が高くなると結晶はできやすいです。尿酸結晶は、顕微鏡で見るとトゲトゲした針状のものになります。血液中の尿酸値が高いと、この結晶が身体の内部で生じてしまいます。特に、尿酸塩の結晶ができやすいのが、足や膝の関節の軟骨です。関節の軟骨にトゲトゲした結晶が付着してしまいます。

結晶が関節に付着しただけでは痛風発作は起きないのですが、この結晶が何かの拍子に壊れると(動作などで)、内部の成分が外に漏れだします。この漏れ出した成分に白血球という細胞が気づいて異物と認識して攻撃し始めます。そうなると白血球は仲間の白血球をたくさん呼び込み、炎症物質がたくさん放出され、一気に強い炎症が起きます。 このようにして、赤く腫れた状態になり、かつ強い痛みが生じます。

Q:尿酸値が高くなる主な原因は何ですか?

血液中の尿酸は、プリン体と呼ばれるものが肝臓で分解されて生じます。
プリン体は、体内で生成されるものが7割で、残り3割は日々の飲み物や食事に由来します。このため、ビールや高プリン体の食品を摂取すると、尿酸値が上がりやすくなります。

女性の場合、女性ホルモンが尿酸値を下げてくれるので、一般的には、痛風になりにくい傾向があります。

尿酸値が高くなる原因には以下のようなものがあります。

1. 遺伝的要因:
遺伝的な傾向により、尿酸代謝が乱れやすくなる場合があります。

2. 食事:
プリンを多く含む食品の摂取が尿酸値の上昇につながります。特に、レバーや内臓、ビール、白子やあん肝などの食品には多くのプリンが含まれています。

3. アルコールの摂取:
アルコールは、尿酸の排泄を妨げることがあります。特にビールは、尿酸値の上昇につながることが知られています。

4. 腎臓機能の低下:
腎臓が正常に機能しない場合、尿酸の排泄がうまくいかず、尿酸値が上昇する可能性があります。

5. 体重:
過体重や肥満の場合、尿酸の生成が増加し、尿酸値が上昇する傾向があります。

6. 病気や薬物:
糖尿病や高血圧などの疾患、また一部の薬物(特に利尿剤や抗がん剤など)の使用も、尿酸値の上昇に影響を与える場合があります。

これらの要因が組み合わさることで、尿酸値が高くなることがあります。

Q:痛風の前兆や初期症状はありますか?

痛風の前兆や初期症状として関節の違和感やむずむずする感じを訴えることがあります。

Q:痛風は遺伝しますか?

痛風は遺伝的要因、環境的要因の両方によって起こりますが、ある研究では、遺伝的要因の影響が少なくないことが分かりました。近親者に痛風患者がいる人は、食事や生活習慣を改善することで痛風リスクを低下させることが大切です。(1)

Q:女性は痛風にならないのでしょうか?

女性は痛風になりにくいとされています。これは、女性ホルモンが尿酸の排泄を促進するためと言われています。そのため女性は閉経後に痛風の発症リスクが上昇することがあります。(2)

Q:病院ではどのような検査をしますか。また何科にいけばいいですか?

痛風の検査をするには、症状のあらわれ方や、症状のある部位を診察し、血液検査で尿酸値を測定したり、尿検査、超音波検査、レントゲン検査、CT検査などを行います。診断が困難なケースでは、注射をして関節滑液中の尿酸塩結晶を調べることもあります。

痛風では内科(一般内科、膠原病・リウマチ科)や整形外科を受診してください。

Q:痛風の発作から1カ月たちましたがまだ痛いです。腫れも引きません。痛みはいつまで続きますか?

通常、痛風の急性な発作は1~2週間で改善します。痛風の発作の痛みや炎症が1ヶ月以上続いている場合は、適切な薬物療法が行われていないか、または処方された薬を正しく使用していない可能性、関節内に沈着した尿酸結晶が慢性的な炎症を引き起こしている可能性、痛風以外の関節疾患や他の健康問題が症状を引き起こしている可能性があります。
そのため、早めに医師に相談することが重要です。

最近では、長引く痛風の痛みに対して、動注治療という5分ほどで終了する安全で身体に負担の少ない治療法が開発されました。
詳細は下記症例をご参照ください。

月に一度のペースで繰り返していた痛風発作が動注治療で改善した症例

Q:以前痛風になりました。痛くて辛くてもう二度となりたくありません。痛風を予防するために良い食べ物や、逆に食べてはいけないものを教えてください。尿酸値を下げるにはコーヒーが良いと聞きましたが、本当ですか?

痛風の食事療法としては、適正なエネルギーの摂取、プリン体・果糖の過剰摂取の回避、腎機能に応じた適切な飲水が勧められます。

良い食べ物としてはプリン体が少ない食品、乳製品、卵、米などの穀物、豆類、豆腐、きのこ類などがあります。コーヒーを飲むと痛風を発症しにくくなるとい報告があります(3)。

食べてはいけないものとしてプリン体の高い食品、鶏レバー、干物、白子、エビ、アンコウ、ビールなどのアルコール類、果糖が多い甘未飲料、果物ジュースなどがあります。

Q:尿酸値をさげるのにどういう薬を飲んだらいいですか。

尿酸値をさげる薬には尿酸の生成を抑える薬、尿酸の排泄を促進する薬などがあります。
尿酸値を低下させることは痛風の治療や腎不全の進行予防に有用とされています。(4)
具体的な治療法は医師による診断が必要ですので医療機関の受診が必要です。

Q:痛風の発作が起きました。早く治すには何をすればいいですか?何も治療しないとどうなりますか?

痛風発作は無治療の場合、最初の3日間の疼痛の強さは変わらず7日後も大半で疼痛が持続すると報告されています。痛風発作は薬物治療が効果的であり早く治すにはできるだけ早く薬物治療を開始する事が重要です。治療薬には非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)、コルヒチン、グルココルチコイドがあります。治療薬は市販されていないものが多いため早期の病院受診が必要です。薬物以外の治療として、患部の挙上と負担を避けること、局所の冷却をすること、水分摂取などがあります。

急性の発作が改善したら尿酸降下薬を開始し痛風発作の予防を行うことが重要です。(4)予防のための治療をしないで放置すると、半年から1年で発作が再発するとされています。

Q:痛風が再発しているようです。病院に行く前に痛み止めを飲みたいのですが、市販薬は何を選べばいいですか?

痛風発作の痛み止めは非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)が主に使用されますが痛風に適応があるNSAIDsは市販されていません。そのため、市販のNSAIDsを使用する場合は、ロキソプロフェンやイブプロフェン、NSAIDsが使用できない場合はアセトアミノフェンを使用してください。

Q:痛風発作を繰り返して癖のようになっています。尿酸値を下げるよう努力していますが、それでも発作が起きてしまいます。内服薬以外で、痛風発作が起きないようにする方法はありますか?

痛風の治療をしているものの、発作を繰り返してしまう方が一部いらっしゃいます。そのような場合、痛風の炎症が起きやすい環境ができてしまっていると考えられます。

最近になって、この痛風発作が繰り返し起きることを防ぐ方法として、動注治療という簡便な治療が開発されました。

動注治療とは一般的な点滴で用いる極めて細いチューブ(サーフロー)を用いて、足首の動脈に抗生物質を直接注入する方法です。所要時間は5分ほどで身体に負担の少ない治療です。

詳しく知りたい方は下記の治療実例も参考にしてください。

月に一度のペースで繰り返していた痛風発作が動注治療で改善した症例

<参照>
(1) New evidence that 'gout' strongly runs in the family(2013年12月2日 ノッティンガム大学)
(2) Gout and Nucleic Acid Metabolism Vol.26 No.2 (2002):119‐124
(3) ACR Open Rheumatology Vol.4 Issue6(2022):534-539
(4) 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版

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痛みをもたらす病気・けが

執筆 奥野祐次(医師)

医師 奥野祐次

医療法人社団 祐優会 総院長
オクノクリニック 院長
慶応義塾大学医学部卒業
慶応義塾大学医学部医学研究科修了

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