慢性痛治療の専門医による痛みと身体のQ&A

偽痛風(ぎつうふう)NEW

Q:偽痛風とは何ですか?

偽痛風(ぎつうふう)とは、発作の症状が痛風発作に似ていることからつけられた名前です。正式には、ピロリン酸カルシウムという名前の結晶が関節内にできてしまい、そこに対する炎症が生じて発生する急性の発作です。

痛風は中年の男性の方に多いですが、偽痛風は女性で高齢の方に多いです。最もなりやすいのは80代の女性の方です。急激に何の前触れもなく、関節の痛みが発生します。
発作が起きやすい関節は膝関節が最も多く、それ以外に肩、肘、手首、股関節、足の関節です。また珍しい部位として首や腰などにも起こることがあります。

偽痛風の発作は早ければ2~3日、長いと1週間位で落ち着くことがありますがそれ以上かかることも稀にあります。また発作は繰り返すことがあります。短期間だと1ヵ月ほどで繰り返したり、長いと2~3年後に症状を繰り返すことがあります。

Q:偽痛風と痛風の違いは何ですか?

偽痛風と痛風は、どちらも急性の関節炎を引き起こす疾患ですが、それぞれ原因となる結晶や症状、好発部位、発症の年齢などに違いがあります。

痛風の場合は、尿酸値が高いと言う特定の血液検査の異常が検出されますが、偽痛風の場合は血液検査では異常が出ないことが多いです。
また痛風はアルコールを制限や食生活に気をつけることが予防に役立ちますが、偽痛風では生活習慣で予防する方法はあまり報告されていません。

痛風は、足の親指の関節(第一中足趾関節)に最も発症し膝、足首、手指の関節、肘など他の関節にも発症することがあります。偽痛風は、膝関節に最も多く発症し足首、手首、股関節などの関節にも炎症が起こることがあります。痛風と比べると、偽痛風は足の親指の関節に症状が出ることは少ないです。

また、痛風発作には前兆があることが多く、何かモヤモヤとした感覚を感じるため、発作前兆時に発作を軽減させる薬を内服することで発作の強度を抑えることが可能な場合があります。これに対して、偽痛風では前兆が無いことがほとんどで、予防的な投薬は一般的にはできません。

Q:偽痛風の主な症状は何ですか?

偽痛風の症状は何の前兆もなく、突然かつ急激に関節または関節周囲が赤く腫れ、関節を動かせなくなるほどの急性炎症を起こします。発作がよくでる部位は膝関節で足首、股関節などの関節にも発症します。

偽痛風の発作の期間は、個人と関節炎の程度により異なりますが、治療が早ければ2~3日長くかかっても1週間ぐらいで落ち着く場合が多いです。

Q:偽痛風はどのように診断しますか?

偽痛風の診断は、レントゲン検査で関節の軟骨に石灰化が起きていることを確認します。
最も確実な診断方法は、炎症が起きている関節から摂取した関節液の中に、ピロリン酸の結晶の存在を確認する方法です。膝関節は大きな関節なので、関節液を摂取しやすく診断がしやすいですが、手首や足などの関節では関節が小さく、関節液を簡単に採取できないため、確定的な診断は難しい場合があります。

また、偽痛風は細菌感染によって生じる化膿性関節炎や痛風、関節リウマチなどと症状が似ているため、血液検査をしてこれらの原因疾患がないことを確認することも重要です。

偽痛風の診断

Q:偽痛風になる原因は何ですか?

偽痛風はピロリン酸カルシウム結晶の関節軟骨や周囲組織への沈着を原因とします。沈着する原因は分かっていませんが平均年齢70歳程度と高齢者に多く加齢はリスク因子の1つとされています。若年(55歳以下)症例では代謝性疾患(低マグネシウム血症、副甲状腺機能亢進症、ヘモクロマトーシスなど)に続発する例、遺伝性、外傷後の発症が多いです。

Q:偽痛風の発作は繰り返しおきますか?

偽痛風は繰り返し発作を起こすことがあります。加齢や関節の損傷などが進むにつれて、発作の再発リスクが高くなることが多いです。

代謝性疾患(副甲状腺機能亢進症、ヘモクロマトーシス、低マグネシウム血症など)がある場合、結晶の沈着が進むため再発しやすくなります。特に関節内にピロリン酸カルシウム結晶が多く沈着している場合、炎症が起きやすく発作が繰り返される可能性が高まります。

Q:偽痛風の発作を防ぐには何をしたらいいですか?

偽痛風の発作予防として欧米では痛風と同様のコルヒチンを投与することがありますが、日本人では欧米人より副作用が多く注意が必要です。痛風と異なり食事療法による予防効果はないと考えられています。このため、偽痛風は予防の方法は確立されておらず、発症したら対処することが基本となっています。

偽痛風の痛みを治すにはどうすればいいですか?

偽痛風発作の痛みには、ステロイドの関節注射や湿布、消炎鎮痛剤の内服等が行われます。通常はそこまで長引かないことから、これらの対象療法で炎症が静まるのを待てば、後は症状を残すことなく日常生活に戻れることが多いです。たまに症状を何度も繰り返したり、発作の期間が長くなったりする場合があります。

このような際は、痛みのカテーテル治療や動注治療と言う炎症に伴い不要にできた異常な血管を減らす治療が有効なことが知られています。

興味のある方は、こちらの治療実例も参考にしてください。

痛風発作後の長引く膝の痛みに有効だったカテーテル治療

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痛みをもたらす病気・けが

執筆 奥野祐次(医師)

医師 奥野祐次

医療法人社団 祐優会 総院長
オクノクリニック 院長
慶応義塾大学医学部卒業
慶応義塾大学医学部医学研究科修了

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