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ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)
Q:肘の内側が痛く、病院に行ったらゴルフ肘と言われました。どんな病気ですか?
ゴルフ肘は、正式名称を「上腕骨内側上顆炎」と呼び、肘の内側の腱に痛みや炎症が生じる病気です。肘から手首にかけての内側に痛みがでることが特徴です。
「ゴルフ肘」という名前がついていますが、必ずしもゴルフだけが原因になるわけではなく、テニスのフォアハンドや野球の投球動作、トレイやお盆で重いものを運ぶ、くぎを打つ、パソコンのタイピングなどの負担でも生じます。また、そのような特別な負担が無くても発症することもあります。
男性よりも女性に多く、40~50歳代の中高年の人がかかりやすいとされています。
手のひらを上に向けたとき、肘の内側の部分(上腕骨内側上顆)についている円回内筋や手関節の屈筋群(橈側手根屈筋、尺側根屈筋)の腱が損傷したり炎症を起こしたりすることで、痛みを感じます
Q:テニス肘とゴルフ肘はどう違うのですか?
肘の外側に痛みが生じるテニス肘(上腕骨外側上顆炎)という病気もあります。テニス肘の方が発生頻度は高く、ゴルフ肘の7~10倍とされています。原因になったスポーツで疾患の名前が決まるわけではありません。
原因がゴルフのしすぎであっても、外側に炎症や痛みがあればテニス肘ですし、テニスの練習で痛めたとしても、内側に痛みや炎症があればゴルフ肘となります。
Q:ゴルフ肘の症状はどんなものがありますか?
肘の内側部分を押すと痛みがあります。痛みは前腕や手首にまで及ぶことも多いです。カバンなどを持ち上げたり、何か物を握ったり、手首をひねったり、肘の曲げ伸ばしをするときに痛みが生じます。トレイやお盆のようなものを持つ、ロープのようなものを引っ張る、顔を洗う、ドアを開けるなどの際に痛みが出ます。
朝起きた時や長時間肘を動かさなかった時に、固まってこわばることがあります。また、肘を伸ばせない、十分に曲げられないなどの、可動域制限が生じることがあります。
Q:ゴルフ肘の原因は何ですか?
肘の内側に負担のかかる動作を繰り返すことや長時間の酷使が原因となります。ゴルフやテニス、野球などのスポーツの際に、下記のような動作をしたときに起こりがちです。
■ゴルフクラブを振るとき(ボールや地面にゴルフクラブが接触する直前と接触した瞬間)
■テニスのフォアハンドでラケットを振るとき
■野球の投球動作のうち、①(後期挙上相)と②(加速相)で肘に負荷がかかるとき
上記の3つのスポーツのほか、ボーリング、ロッククライマー、アーチェリー、重量挙げの選手でゴルフ肘が起きる場合もあります。
また、スポーツの技術が不適切な初心者にもよく起こります。運動前のウォーミングアップが不十分なとき、肩や手首の筋肉が弱っているときに起こる場合もあります。
スポーツ選手以外でも、日常生活動作で、何かを持ち上げたり、腕で投げたり、振ったりするような仕事をしている人(大工や肉屋、仕出し屋の店員など)にみられることもあります。
このような運動による原因以外では、喫煙や糖尿病が危険因子となる場合もあります。
リスク因子
・反復する動作を1日に2時間以上費やす
・喫煙
・肥満
Q:ゴルフ肘の診断にはどんな検査をしますか?
ゴルフ肘の診断は、病歴と下記のような身体検査(誘発試験)で評価することが可能です。
■身体検査(誘発試験)
痛みのある肘をテーブルの上に乗せて、手のひらを上に向けます。
医師に手を上から押さえられた状態で、手首から先を上げるよう指示を受けます。指示にそって動作を試みたとき、ゴルフ肘では、肘の内側に痛みを感じます。
ゴルフ肘以外の病気も疑われる場合、以下の検査で鑑別診断を行うことがあります。なかでも、磁気共鳴画像法(MRI)検査、超音波検査(エコー検査)が最も有効であるとされています。
Q:ゴルフ肘はどうやって治療しますか?
■初期治療
ゴルフ肘では、安静にして、痛みを感じる動作を避けることが大切です。6週間は安静にすることを推奨しています。また、安静に加えて以下のような保存治療をしていくことで、ほとんどの方の症状は軽快します。
・患部を冷やす
・痛みをおさえる薬(抗炎症薬、NSAIDs、アセトアミノフェンなど)を使用する
・装具(肘バンド)やキネシオロジーテープを使用することでストレスを軽減する
・理学療法(リハビリ)に通う
■追加治療
初期治療で効果がみられない場合は、下記のような治療の追加が有効です。
・ステロイド注射
ステロイド注射は回数の制限が重要です。1回か多くても2回にとどめることをお勧めします。ステロイド注射は炎症を抑制する作用は強いですが、一方で投与部位に損傷を与えてしまう可能性もあります。多数回にわたって繰り返すと腱の損傷部位が増え脆弱化する可能性があります。
・多血小板血漿(RPR)の注入
超音波ガイドを用いて、損傷した腱組織の周辺に、遠心分離機にかけて濃縮した血小板を注射します。
・手術
6~12ヵ月間治療しても反応しない場合や、筋肉や腱が著しく断裂している場合のみ、手術が行われます。損傷した組織を取り除き、必要に応じて腱を修復します。
最近になって治りにくいゴルフ肘の治療として、日帰りで20分ほどで終わるカテーテル治療という新しい治療法ができるようになりました。詳しく知りたい方はこちらの治療実例も参考にしてください。
Q:治療後、仕事や運動へ復帰するためのセルフケア方法を教えてください
治療後、完全に痛みがなくなったら、ストレッチと等尺性運動(アイソメトリック運動)※を行います。さらに回復したら、レジスタンス運動を追加し、ゴルフ肘になる以前よりも筋力がアップすることを目指します。反復運動が苦にならなくなったら、スポーツや職業に復帰します。
その後は、再発の危険性を減らすため、維持プログラムを行い、柔軟性と筋力を維持できるようにします。
※筋肉の静的な収縮を伴う運動の一種。目に見える関節角度の動きを伴わない運動。
Q:ゴルフ肘を予防するにはどうしたらいいですか?
ゴルフ肘の予防には、肘の筋肉のストレッチ、強化運動のほか、活動前に適切なウォーミングアップをすることや、休息時間を確保することも大切です。
Q:ゴルフ肘を自分で治すのに有効なストレッチとマッサージを教えてください。
■手のひらのストレッチ
手や指を使う時に、手のひら(赤い丸の部分)が硬いままでは、指の筋肉を過剰に使ってしまいます。そうすると指の筋肉の負担が大きくなります。指を曲げる筋肉は肘の内側に付いているため、この筋肉に負担がかかると肘の内側に痛みが出てきます。指を曲げる筋肉の負担が大きくならないように手のひらのストレッチをします。
1.痛みのある側の人差し指から小指の4本の第1関節と第2関節を曲げます。
2.反対の手の指先が手の甲側の指の付け根(赤い丸の部分)に当たるように痛みのある側の指を握ります。
3.ゆっくりと指を反らせます。
■前腕のマッサージ
肘の内側につながる筋肉が硬くなっていることがよくあります。筋肉が硬くなると、痛みが出る部分への負担が大きくなり、痛みに影響します。赤い丸の部分を中心にマッサージをして、筋肉を柔らかくします。マッサージをする時に、ボディクリームやボディオイルを使用することもおすすめです。
1.前腕(肘〜手首の間)の小指側の筋肉を反対の手でつまみます。筋肉を矢印の方向に少し引っ張るようにしながらマッサージします。少しずつ引っ張る場所を変えながら、全体的にマッサージします。この時、肘を曲げた状態でしても構いません。
2.写真のように、前腕の手のひら側に反対側の親指を当てます。親指で軽く筋肉を圧迫しながら、矢印の方向に動かすようにしてマッサージします。少しずつ場所を変えながら、全体的にマッサージします。
3.写真のように、前腕の手のひら側に反対側の親指を当てます。親指で軽く筋肉を圧迫しながら、矢印の方向に動かすようにしてマッサージします。少しずつ場所を変えながら、全体的にマッサージします。
Q:ゴルフ肘のストレッチやマッサージをしましたが治りません。他に治療方法はありますか?
ゴルフ肘の痛みの原因になっている上腕骨内側上顆炎に異常な血管が増え、それとともに神経が一緒になって増えて痛みがでている場合があります。最近ではこれらの異常な血管を減らすためのカテーテル治療という日帰り治療が開発されています。痛みを長引かせているモヤモヤ血管に対して直接アプローチする方法です。
興味のある方はこちらの治療実例をご参照ください。