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骨盤内うっ血症候群(PCS)
Q:骨盤内うっ血症候群とはどういう病気でしょうか?
骨盤内うっ血症候群(Pelvic congestion syndrome: PCS)は、骨盤内の静脈、特に卵巣静脈がうまく機能しないことで生じる病気です。
生理ではないにも関わらず下腹部痛が生じ、長時間の立位や歩行などの際に悪化します。卵巣からの血液が心臓に戻ろうとする際に静脈の弁に障害があり流れが滞ってしまうことで、骨盤に血液がたまることで生じます。20歳から45歳で、出産経験のある女性がかかることが多く、女性の場合、一生のうちに3人に1人がかかるとも言われる頻度の高い疾患です。女性の骨盤の痛みの原因としては、子宮内膜症(33%)に次いで骨盤内うっ血症候群が多い(31%)とされています。
CTやMRI、静脈造影検査で診断し、ホルモン療法や血管内治療によって治療します。
症状や原因、治療法について動画でも解説しています。
Q:骨盤内うっ血症候群の原因はなんですか?
妊娠、出産、生理などで骨盤内の血流の増加が繰り返され、卵巣静脈に負担がかかることによって静脈弁が壊れることが原因とされています。静脈弁が壊れることで血液が逆流してしまい、骨盤の静脈が拡張して痛みを生じます。
他には血中ホルモンの変化が骨盤うっ血症候群に関与している可能性があります。エストロゲンは、静脈を拡張させますが、この血中濃度が変動することでこの病気が生じる可能性も指摘されています。
Q:骨盤内うっ血症候群(PCS)のリスクがあるのはどんな人ですか?
子供を出産した経験がある人がかかりやすいです。特に複数回の出産を経験した女性がPCSになる可能性が高くなります。また、骨盤うっ血症候群は静脈の弁が壊れることで生じると考えられていますが、静脈弁が壊れやすいかどうかは遺伝する傾向があるため、ご家族の中に骨盤うっ血症候群の方や下肢静脈瘤(足の静脈が壊れてしまう病気)の方がいらっしゃる場合も、リスクが高くなります。
Q:骨盤うっ血症候群の症状とは?
骨盤うっ血症候群の主な症状は、3から6カ月以上続く慢性の下腹部痛です。この痛みは、多くの場合、妊娠中または妊娠後に初めて起こります。生理ではないのに下腹部が痛くなり、長時間の歩行や立位、座位などで悪化し、仰向けに横になることで改善することが特徴です。また、性交時痛の原因にもなります。
痛みの性質としては、重い痛みや疼くような痛みとして感じられることが多いです。通常、痛みが生じるのは片側の下腹だけで、左側が多いとされています。時には、両下腹に痛みを感じることもあります。また痛みは夕方ごろにかけて悪化することが多いです。
Q:骨盤内うっ血症候群はどのように診断されるのですか?
骨盤内うっ血症候群(PCS)を診断には、超音波、CTやMRI、および静脈造影が用いられます。造影剤を用いたCTやMRIは他の疾患の有無を調べることもできるため有用です。
CTやMRIでPCSが疑われた場合に、静脈造影検査という特殊な検査を行ないます。この検査方法がPCSを確定させるゴールデンスタンダードです。血管造影で実際に卵巣静脈が逆流しているかどうかを確認し、確定診断となります。
Q:骨盤内うっ血症候群はどのように治療するのですか?
骨盤内うっ血症候群(PCS)の治療には、大きく分けてホルモン療法、外科的手術、血管内治療があります。保険診療で受けていただけます。
ホルモン療法は、PCSの症状が閉経後に改善することが多いことから開始されました。ゴナドトロピン放出ホルモンと呼ばれるもの(商品名:レルミナ)がありますが、効果が得られない人もいることが知られています。外科的な手術としては、以前は卵巣の摘出など行なわれていましたが、改善が乏しく今は施行されていません。内視鏡を用いた卵巣静脈結紮術もありますが、全身麻酔であり身体への負担が大きいです。
血管内治療とは、全身麻酔ではなく局所麻酔でできる日帰り治療です。この治療は、足の付け根の静脈から非常に細いチューブ(カテーテルと呼びます)を挿入し、それを原因となっている卵巣静脈まで進めて、逆流してしまっている問題の部位を閉じる方法です。痛みはほとんどなく、また安全に行なうことができ、メスを入れる大がかりな手術ではないため日帰りで行なうことができます。
詳しく知りたい方は、こちらの治療実例もお読みください。
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