慢性痛治療の専門医による痛みと身体のQ&A

Jones骨折

Q:足の外側が痛く整形外科に行ったところJones(ジョーンズ)骨折と診断されました。Jones骨折とは何でしょうか。

Jones(ジョーンズ)骨折は、骨折の一種で、前足の外側にある「第5中足骨」と呼ばれる骨の骨折です。スポーツによる繰り返しの負担で徐々に進行する疲労骨折です。特にサッカーやバスケットボール、アメリカンフットボール、ダンスといった、切り返しの動作が多いスポーツで生じやすいです。また中学や高校などに進学した際に、練習量が急に増えて発生することが多いです。

Jones骨折では、骨がうまく修復せずに外科手術が必要になることが多く、治るまでに3、4ヶ月かかるとされています。後程紹介しますが、最近ではカテーテル治療という新しい日帰り治療も開発され、手術をせずに治ることも可能となっています。

【治療実例】
手術しかないとされた疲労骨折(Jones骨折)のカテーテル治療実例

※Jones骨折と基部剥離骨折(きぶはくりこっせつ)との違い
Jones骨折と同じ第5中足骨に生じる骨折に、別のタイプがあり、基部剥離骨折(別名:下駄履き骨折)と呼ばれます。Jones骨折と基部剥離骨折は、場所は非常に近いですが、治りやすさが大きく異なります。
第5中足骨には下のイラストのように3つのゾーンがあり、足首に近い方から順にゾーン 1からゾーン3と呼ばれます。

Jones骨折
Jones骨折

基部剥離骨折はゾーン 1で生じる骨折で、下駄履き骨折(あるいは単に「下駄骨折」)とも呼ばれます。下駄をはいて捻挫をしたときに発生しやすかったため、この名前がついています。この骨折は、3-4週間の半ギブス(シーネ)装着にて、手術をしないで済むことが多い骨折です。

一方で、Jones骨折は、ゾーン2で生じる骨折で、自然には治癒せず手術が必要になることが多い骨折です。また、手術に伴う合併症も多いことが知られています。ゾーン3の骨折は骨幹部疲労骨折と呼ばれ、こちらも治りにくいことが知られています。

Q:Jones骨折ではどのような症状がでますか?

Jones骨折は疲労骨折の一種で、徐々に進行していく骨折です。
一般的な骨折というと、不自然な力が加わったある瞬間に非常に強い痛みがでるイメージがあると思いますが、Jones骨折の場合、スポーツ活動で蓄積されていったストレスによってジワジワと進行していきます。

最初は症状がなくて気づかないこともあります。初期はスポーツのプレー中またはプレー後に足の外側に痛みを感じるようになります。しかしこの時期は歩くことは可能です。運動量が増加すると痛みも増える傾向がでてきます。この状態はまだ完全には折れておらず、亀裂が入った状態です。

そのまま進行すると、骨へのストレス・疲労が蓄積して完全な骨折に至ります。ステップやターンなどの何気ない動作の際に折れてしまうことが多いです。完全に骨折すると強い痛みが出て、歩行が困難になります。

Q:Jones骨折の原因は何ですか?

Jones骨折は前足の外側に繰り返しの負担が蓄積されることで発症する病気です。このため、原因として、以下のことが挙げられます。

1.足に負担の強いシューズやスパイクのタイプ
特にBladeタイプのスパイクはリスクが高いです。

2.人工芝などの硬い地面の練習環境

3.長すぎる練習時間

4.靴底が外側ばかりすり減っている
外側に負担のかかる練習を繰り返している証拠になります。

5.スポーツの種類
サッカー、バスケットボール、ラグビー、アメリカンフットボール、ダンスなど

6.下半身のアライメント(骨の並びや向き)の不良
特にO脚など

7.特定の栄養素の不足
特にビタミンD、たんぱく質、鉄分の不足

8.転倒や滑落
階段でつまずいたり、濡れた床で滑った後に急につかまったりしたとき

Q:Jones骨折はどのように診断しますか?

問診できっかけとなるオーバーユーズや転倒などの原因があったかを確認したのちに、身体所見を取り、足外側の第5中足骨基部周辺に圧痛があるかどうか調べます。
画像検査で診断を確定させます。画像検査には単純X線検査、MRI検査、超音波検査、CT検査があります。

単純X線検査:
第5中足骨に横に走る骨折線が観察できます。また、骨折線の周囲には骨皮質の肥厚も認められます。骨髄の状態も把握できます。

MRI検査:
早期の変化をとらえるのに有用です。骨折線がレントゲンで明らかではない時期でも、骨の内部の変化が観察され早期診断が可能です。また骨折部周辺の筋肉・結合組織の損傷程度の確認ができます。

超音波検査:
疲労骨折の有無を短時間に把握できます。早期の変化もとらえられます。

CT検査:
手術が必要な場合、骨およびその周辺組織について詳細を確認する目的で撮影します。

Q:Jones骨折の分類にはどういうものがありますか?

Jones骨折は、X線像にもとづき下記の3つに分類することで、治療の指針を決めます。Ⅱ型、Ⅲ型では、一般的には完治するのに手術が必要であるとされていますが、後程紹介するカテーテル治療でも治療することができます。

I型(急性):
骨折線が細く、骨髄腔内の骨硬化像を認めない。

Ⅱ型(遷延癒合):
骨折したところの骨の癒合(くっつき)が順調に進んでいない状態。骨折線が太く、骨髄腔内の骨硬化像が認められます。

Ⅲ型(癒合不全):
骨折したところが通常の期間を過ぎても癒合に至らない状態。硬化した骨によって髄管が完全に塞がっています。

【治療実例】
手術しかないとされた疲労骨折(Jones骨折)のカテーテル治療実例

Q:【動画】治りにくいジョーンズ骨折。症状と治療方法は?

ジョーンズ骨折は、スポーツを頑張ってる人によく起こる疲労骨折の一種です。

サッカーやバスケットボール、ダンスやアメリカンフットボール、ラグビーなどのターンを切り返す動作の多いスポーツをしている方が、練習していたらいつの間にか「足の外側が痛いな」となることがあります。そういう時にレントゲンを撮ってみたり、超音波で検査したり、CTやMRIでみてみると実は骨折している、亀裂が入っているということがあります。

骨にだんだん疲労が蓄積して、いつの間にか亀裂が入るものを疲労骨折と言いますが、特に足の外側に起きるものをジョーンズ骨折と呼んでいます。そこまで痛くないからまさか骨折してるとは思わず、そのまま練習を 続けていくとある時にパキッと完全な骨折になってしまい、そうなると痛くて歩けないというような形になります。

・ジョーンズ骨折の治療法
・再発を防ぐ方法とそのデメリット
・ジョーンズ骨折になりやすいスパイクシューズやグランド環境
・治りにくい理由と、その解決策
などを動画で紹介しています。

Q:Jones骨折は自然治癒しますか?

Jones骨折では、変形癒合や癒合不全などの合併症や、再骨折の危険性があるとされています。特にスポーツをされている方は、たとえ痛みが一時的に引いたとしても、受傷前と同じ環境でプレーを続けると再骨折のリスクが高いです。ご自身で判断するのではなく、できるだけ早く専門の医療機関を受診して、医師の指示に従うようにしてください。

Q:Jones骨折の治療にはどんな方法がありますか?

通常の骨折の治療では、骨のズレが大きくなければ松葉杖で体重をかけず(免荷と呼ぶ)、かつギブス固定(外固定と呼ぶ)で治癒することが多いですが、Jones骨折はたとえ大きなズレがなくても、外固定や免荷ではうまく骨が癒合しないことが多いことが報告されています。特に今後もスポーツを続ける方の場合、しっかりと治さないと再骨折してしまうリスクが高いため、アスリートの方は手術を勧められることが多いです。

ただし、成長期の最中にある中学生の場合は、骨を固定する手術は勧めておらず、外固定や免荷で保存的に治療することが多いです。

手術で固定する方法には、スクリューの他に、ワイヤーで固定する方法があります。
術後3-4週間は松葉杖になり、術後6週間からジョギングを開始し、競技復帰までは3か月程度かかることが多いです。

手術はスクリューの設置位置が難しいこともあり、位置が不良だと再骨折、癒合不全、偽関節(骨が付かずに隙間ができてしまう状態)などの合併症のリスクがあります。

ただし、後述するように、最近になって、上記のような手術をしないで骨癒合を促進させるカテーテル治療という30分ほどで終わり日帰り治療が開発されています。

Q:Jones骨折になり、手術をしないで保存的に治療していますが、なかなか治りません。どれくらいで治りますか?

骨折の重症度や治療内容によりますが、症状が改善され、再び歩き始めることができるようになるまでには、数週間から数か月かかることもあります。また、先述したようにJones骨折は保存的治療(手術せずに治す方法)ではうまく骨が癒合(くっつくこと)しないことが多いことが報告されています。治癒が得られなかった場合は手術を検討することもあります。

手術の場合は、術後3-4週間のギブスと松葉杖、6週間後からジョギング開始、3~4ヵ月後には、スポーツなども含めた通常の活動を再開できるとされています。

ただし最近になって、Jones骨折の骨折部に異常な血管が増えてしまい治癒を妨げていることがわかってきており、その異常な血管を減らすためのカテーテル治療という日帰り治療で、早期に骨癒合と競技復帰が得られることがわかってきました。

詳細を知りたい方は、下記の治療実例を参考にしてください。

【治療実例】
手術しかないとされた疲労骨折(Jones骨折)のカテーテル治療実例

Q:Jones骨折を予防する方法はありますか?

Jones骨折は一度治ってもそのまま負担をかけ続けると再発する可能性がある疾患です。予防のためには、以下のような点に注意しましょう。

・使用しているスパイクやシューズを見直しましょう。
特にブレード型のスパイクはJones骨折のリスクが高くなります。また、練習中にずっとスパイクを履くのではなく、メニューによってシューズに履き替えましょう。特にランニング練習はシューズに履き替えることで負担が減ります。

・人工芝の練習はなるべく避けましょう。
どうしてもやむを得ない場合はシューズやスパイクを工夫して負担を減らしましょう。

・練習時間を見直しましょう。
長すぎる練習はJones骨折のリスクとなります。

・股関節や足の使い方を習いましょう。
理学療法士やトレーナーさんに教わり、前足外側に負担の少ない動作や姿勢を覚えることが重要です。

・トレーニングシューズの底をチェックしましょう。
ご自分のトレーニングシューズの底を見てみて、外側が強く擦り減っているなら、日々の練習で足の外側に負担がかかっている証拠です。

・栄養素がきちんと摂取できているか注意しましょう。
特に鉄、ビタミンD、たんぱく質は重要です。鉄は血液検査で「フェリチン」という値を調べて、女性は40未満、男性は100未満で鉄不足なので、サプリメントで補うと良いです。日光を浴びることでビタミンDを増やすことができます。またタンパク質は卵を1日に2-3個、それに加えて鶏肉などの摂取を意識して、また市販のプロテインの摂取も検討してみてください。

・50歳以上の方や骨粗鬆症の家族歴がある方は、骨密度検査について医療機関に相談してみてください。
また、骨の健康を維持するための食事や運動、日を浴びることを心がけましょう。

Q:Jones骨折から復帰しようとしています。再発予防のための有効なテーピングやサポーターはありますか?

足部の外側(小指側)へ過度に体重が乗りやすいと負担が大きくかかります。また、つま先が外側に向く角度が過度に大きくなることでも負担が大きくなります。

テーピングでは、足部の外側に体重が乗りすぎないようにすることとつま先が外側に向きすぎないようにすることを目的とします。

■テーピングの準備

屈曲方向のストレッチ

・伸縮性のあるテーピングを使用します。
・幅5㎝、長さ約30㎝を2本用意します。
・はがれにくくするためにテーピングの角を丸く切っておきます。

■テーピング①(1枚目)

内くるぶし(青丸)から指約2本分下にテーピングの端を写真のようにかかとに向けて(赤矢印)貼ります。
内くるぶし(青丸)から指約2本分下にテーピングの端を写真のようにかかとに向けて(赤矢印)貼ります。
かかとの下を通り、外くるぶし(青丸)の下を通るように、スネの前側に向けて(赤矢印)貼ります。
かかとの下を通り、外くるぶし(青丸)の下を通るように、スネの前側に向けて(赤矢印)貼ります。
スネの内側にテーピングの端がくるように貼ります。
スネの内側にテーピングの端がくるように貼ります。
外側
外側
前側
前側

■テーピング②(2枚目)

内くるぶし(青丸)から、指約2本分上にテーピングの端を写真のように貼ります。
内くるぶし(青丸)から、指約2本分上にテーピングの端を写真のように貼ります。
スネの前側、外くるぶし(青丸)の上を通って、かかとの外側に向かって(赤矢印)貼ります。
スネの前側、外くるぶし(青丸)の上を通って、かかとの外側に向かって(赤矢印)貼ります。
かかとの後ろ側を通り、親指の付け根あたりにテーピングの端がくるように貼ります(赤矢印)。
かかとの後ろ側を通り、親指の付け根あたりにテーピングの端がくるように貼ります(赤矢印)。
前側
前側
外側
外側

■テーピング 完了イメージ

テーピング①と②を貼った図(内側)
テーピング①と②を貼った図(内側)
テーピング①と②を貼った図(外側)
テーピング①と②を貼った図(外側)
テーピング①と②を貼った図(前側)
テーピング①と②を貼った図(前側)

Q:高校でサッカーをしています。Jones骨折になり、再発予防のために手術したほうが良いと勧められました。しかし、手術をすると復帰まで時間がかかるため踏み出せずにいます。手術をせずに治療する方法はありますか?

アスリートのJones骨折はこれまで手術をしないと治らないと考えられてきましたが、最近になって、Jones骨折の骨折部には異常な血管ができていて、それが治癒を妨げていることがわかってきました。そしてこの異常な血管を減らす治療(カテーテル治療と呼ばれ、20-30分ほどで日帰りでできる)をすることで、骨折部分が自然と治癒してくることがわかってきています。

より詳しく知りたい方は、下記の治療実例も参考にしてください。

【治療実例】
手術しかないとされた疲労骨折(Jones骨折)のカテーテル治療実例

(※1)Albloushi M, Alshanqiti A, Qasem M, et al. Jones type fifth metatarsal fracture fixation in athletes: A review and current concept. World J Orthop 12 : 640-650, 2021.
(※2)Mirza Z, Pillai A, Alqubaisi M. How are fifth metatarsal fractures managed by the virtual fracture clinic? Res Rev Insights 2(4) : 1-7, 2018.

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痛みをもたらす病気・けが

執筆 奥野祐次(医師)

医師 奥野祐次

医療法人社団 祐優会 総院長
オクノクリニック 院長
慶応義塾大学医学部卒業
慶応義塾大学医学部医学研究科修了

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