慢性痛治療の専門医による痛みと身体のQ&A

モートン病

Q:モートン病とはどんな病気ですか。

モートン病は、足の裏、足指の付け根に生じる痛みを伴う疾患です。足の指の第3趾と4趾(中指と薬指)の間に発症することが最も多いです。モートン病では、指の先に向かう神経の周囲が腫れて厚みをおびてしまいます。これにより鋭い痛みや焼けるような痛みが足指の付け根から指先にかけて生じることが特徴です。つま先の幅の狭い靴や、高いヒールの靴を履くことでモートン病が発症・進行します。反対に、かかとの低い靴や、つま先にゆとりがある靴に変えることで改善する人が多いです。時には、ステロイドの注射や手術が必要になる人もいます。

モートン病で神経周囲が腫れた状態

1876年にモートンが報告した病気で足の「趾神経」とよばれる神経の周りにモートン神経腫とよばれる結合組織の塊が生じる病気です。好発部位としては第3-4趾間が66%と最も多く、その次に第2-3趾間32%、そして第4-5趾間が2%になります。(※1)

女性のほうが多く男女比は1:4です。50代~60代の女性にかかることが多いですがどの年代でも負担がかかることが繰り返せば生じる可能性があります。

モートン病の生じやすい部位 ×=圧痛部位  斜線部=しびれ、感覚障害の部位
モートン病の生じやすい部位
×=圧痛部位  斜線部=しびれ、感覚障害の部位

Q:モートン病になると、どんな症状がでますか?

足裏の指の付け根(画像入れるかも)に熱く焼かれたような痛みと、その先の指に放散する痛みやしびれが主な症状です。はじめは歩いている最中だけの症状ですが、進行するとじっとしているときにも痛みやしびれを感じるようになります。歩行や長時間の立ちっぱなしにより増悪し、靴をぬいだり安静にしたりすると改善します。また靴の中に小石が入っているような感覚が生じたり、チクチクする痛みを感じたりします。

Q:モートン病は両足にできることはありますか?

両足にできる人は15~21%います。

Q:モートン病の原因は何でしょうか?

モートン病の主な原因は、足裏のつけ根に繰り返しかかる負担です。歩く際に、足の裏で地面をけるときに足の指が背屈して付け根に負荷がかかり、すぐ下にある神経や周りにある軟部組織が繰り返し圧迫され、年齢とともにこの部位が線維化することで発生します。

■リスクファクター
・過去の足のケガ
・前足に繰り返し力のかかる運動(ジョギングなど)
・ヒールの高い靴
・外反母趾
・関節リウマチ
・偏平足

Q:モートン病はどうやって診断しますか?

まずは身体所見をとります。つま先立ちで症状が再現されるかをチェックします。また触診で足指の付け根(中足骨頭レベル)に圧痛があるかどうか、またその先の指にしびれなどの感覚障害があるかなどを調べます。

また thumb index finger squeeze test といい足の両端をイラストのように把持してドクターが親指と人差し指で圧迫を加えます。このことで痛みやしびれが誘発されればモートン病が疑われます。

thumb index finger squeeze test
thumb index finger squeeze test

画像検査としては超音波装置やMRIなどが行われます。MRIでは造影剤という薬を用いてモートン神経腫の部位が造影されることで診断できます。

モートン病のMRI 矢印の部位が造影されたモートン神経腫
モートン病のMRI
矢印の部位が造影されたモートン神経腫

Q:治療はどうやってしますか?

まずはヒールの高い靴や負担のかかる先細い靴を避ける。また痛みのある部位に負担がかからないように足底パットをあてるなどして、足の付け根への圧を減らすことからはじめます。

またそれでも改善しない場合は、ステロイドの注射が行われます。有効性は短期では47%、長期的には30%とされています。他に超音波をみながらモートン神経腫の部位にエタノールを注入する治療や手術によって神経腫を切除するなどの方法があります。

また最近では5分で終わる動注治療も開発されています。詳しく知りたい人は症例をご参照ください。

10年以上足の裏の痛みに悩んでいたモートン病のカテーテル治療実例

Q:モートン病に有効なエクササイズやストレッチなどのセルフケアはありますか?

モートン病は足前方の横アーチの低下が問題となります。その横アーチの再獲得と悪化防止のため、アーチを形成する足部内在筋(足自体にある筋肉です)のエクササイズや、アーチの低下を招きやすい足首の硬さを改善するためのストレッチがお勧めです。

■足部内在筋(足の筋力)のエクササイズ1
「ショートフットエクササイズ」といい、足のアーチを引き上げる効果が期待できます。写真のように指自体はあまり曲げず、地面に押し付けながら足のアーチが持ち上がるような感じで行ってみてください。5秒力を入れて緩めるといった感じで繰り返してみてください。

足の指を曲げるというより地面に押し付けるイメージで足のアーチを引き上げます。
足の指を曲げるというより地面に押し付けるイメージで足のアーチを引き上げます。

■足部内在筋(足の筋力)のエクササイズ2
「タオルギャザーエクササイズ」といい、足の指の筋力向上や足のアーチを引き上げる効果が期待できます。
タオルを床に敷き、足の指の力でたぐり寄せます。すべてたぐり寄せたら、戻して、何セットか繰り返してみてください。簡単だったら重りをタオルの端に置いて、それごとたぐり寄せてやってみるといいでしょう。

足の指の力でタオルをたぐり寄せます。足は遠くに置き、足首が伸びたポジションで行うと効果的です。
足の指の力でタオルをたぐり寄せます。
足は遠くに置き、足首が伸びたポジションで行うと効果的です。

■ふくらはぎのストレッチ
足首の硬さを改善するためのメニューです。
足を前後に置いて、アキレス腱~ふくらはぎが伸びるようにストレッチしましょう。20~30秒を目安に一日3セット程がお勧めです。壁を押すようにやるとよく伸びます。

踵が浮かないように注意します。姿勢も真っすぐ一直線を意識しましょう。
踵が浮かないように注意します。
姿勢も真っすぐ一直線を意識しましょう。
足の向きはまっすぐ前に向けます。
足の向きはまっすぐ前に向けます。

Q:モートン病の痛みはどれくらい続くのでしょうか。自然治癒しますか。

一旦モートン神経種が生じるとそれが自然に消えることはありません。しかし痛みは改善したり消失したりすることはあります。上記に挙げたような靴の調整などの有効な治療を早めに始めるほど痛みの解消が得られる確率は上がります。

モートン病が進行してしまうと(つまり好ましくない靴を履き続けたり負担をかけ続けたりすると)、より長期の治療を要することになります。

Q:モートン病に似た症状のでる他の病気はありますか?

モートン病に似た足の症状が出る病気として下記のような病気があります。

Freiberg病
第2趾(親指の隣の指)の付け根の骨が壊死する病気です。

疲労骨折
中足骨にヒビが入り、痛みと腫れが生じます。

中足骨頭間滑液包炎(リウマチなどでも見られる)
足の付け根の骨の間に生じる滑液包という液体の入った袋の炎症です。

グロムス腫瘍
足指の指腹や爪の直下に良性の血管でできた腫瘍ができる症状で、強い痛みを伴います。

足根管症候群
足の指先に向かう神経が足根管というところを通るときに物理的に圧迫され、しびれや痛みを伴う症状です。

糖尿病性神経障害
糖尿病により末梢神経に障害が出て足の指先から足の裏を中心にしびれや痛みが出る病気です。

Q:モートン病は再発しますか。

再発する可能性があります。前述したように一度できたモートン神経腫は自然に消えることは通常ではありません。靴をかえたり負担を減らすことで症状が消えることはありますが、再び負担が増えると再発することがあります。また注射の治療でも7割ほどの人が症状がぶり返します。手術をしても20%~30%のひとはふたたび神経腫が生じてしまいます。(※2)

最近では、足の動注治療という5分ほどで終わる新しい治療が開発され、それにより再発なく根治に近い状態になっている人も多いです。詳しくはこちらの治療実例のページも読んでみてください。

10年以上足の裏の痛みに悩んでいたモートン病のカテーテル治療実例

Q:モートン病の治療期間について教えてください。

個人差があります。
早く治療にとりかかれるほど治療期間は短いです。モートン病発症し、すぐに好ましくない靴を変更した場合は、比較的短期間に症状が改善します。だいぶ進行してから治療した場合は治療を長く続く必要性があります。

長く治療しても改善しない場合、こちらに紹介する5分でできる動注治療というのも参考にしてみてください。

10年以上足の裏の痛みに悩んでいたモートン病のカテーテル治療実例

<参照>
(※1)Wu K.K. Morton’s interdigital neuroma: a clinical review of its etiology, treatment, and results. J Foot Ankle Surg. 1996;35(2):112–119.
(※2)Maneesh Bhatia and Lauren Thomson. Morton’s neuroma – Current concepts review. J Clin Orthop Trauma. 2020 May-Jun; 11(3): 406–409.

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痛みをもたらす病気・けが

執筆 奥野祐次(医師)

医師 奥野祐次

医療法人社団 祐優会 総院長
オクノクリニック 院長
慶応義塾大学医学部卒業
慶応義塾大学医学部医学研究科修了

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