「人工関節置換術後の遺残疼痛」と呼ばれる状態です。英語ではpersistent pain after joint replacement surgery と呼びます。

レントゲンなどでわかるような明確な原因が存在しないのに、人工関節置換術をした後に強い痛みが長期に出てしまう人が15%ほどいると報告されています。

イギリスの報告では、膝の人工関節置換手術を受け3年から4年経過した600名以上を調査した結果、40%の人に何らかの痛みが残っていたと報告されています。また15%は非常に強い痛みだったと報告されています。また同じ報告では股関節の人工関節置換術では痛みが残っていた人は6%台と、膝に比べて少なかったと報告されています。

日本でも、20%から30%の人に痛みが残ってしまうと言う報告があります。（※文献１－３）

人工関節の手術後の痛みの期間については十分に調べられていません。半分以上の方は1年以内に痛みが落ち着きますが、前述したようにイギリスの報告では4割の人が術後3年から4年経過しても痛みがあったとされていて、数年単位で続く可能性があります。

最近ではカテーテル治療というのが開発され、有効な症例があります。詳しく知りたい方はこちらの治療実例もご覧ください。

人工膝関節を入れた後も痛い！なぜ？？人工膝関節術後の症例

大きく分けて4つの原因が考えられます。

１．手術の際に挿入したインプラントと骨との間の細かい損傷
２．手術の際に神経を損傷し、それによる神経障害性の痛み
３．関節周辺の炎症による痛み
４．筋肉の痛み
５．傷口の痛み

これらの1から5の原因が、同時に複数生じていることもあれば、どれか1つだけが生じていると言うこともあります。

原因が異なるため一概には言えませんが、先ほどの５つの原因のリストを使ってそれぞれの症状を説明します。

１のマイクロフラクチャーの場合、体重をかけたときに痛みが生じます。歩行中の痛みなどになります。
２の神経障害性疼痛では、神経が切れた部分から先がピリピリ、ビリビリと痛い、触ると違和感があるなどの症状が出ます。
３番目の炎症の痛みでは、動き出しの痛みや、階段の痛み、またじっとしている時や夜間も痛みが出るなどの特徴があります。
４の筋肉の痛みは、筋肉痛のような重だるい痛みが膝周辺の筋肉に生じます。
５の傷口の痛みでは、傷の周囲を触ると痛い、傷が赤みを帯びているなどの特徴があります。

仮にレントゲンでは正しい位置にインプラントが入っていたとしても、インプラントと骨の接合面がうまくいっていなくて痛みが出ている場合があります。その場合は再置換術が必要になります。また、残った膝の周りに炎症が生じている場合には、運動器カテーテル治療という治療法があり、改善してる方もいらっしゃいます。興味のある方は以下の治療実例も参考にしてください。

人工膝関節を入れた後も痛い！なぜ？？人工膝関節術後の症例