慢性痛治療の専門医による痛みと身体のQ&A

群発頭痛NEW

Q:群発頭痛とは何ですか?直接の死亡原因になるリスクなどありますか?

群発頭痛(ぐんぱつずつう)は、片側の目の奥から側頭部にかけて生じる耐え難いほどの激しい頭痛です。その痛みは数ある頭痛の中でも最も激しい部類で、あまりの激痛から「自殺頭痛」と呼ばれることもあります。発作中はあまりの痛みにじっとしていられず、頭を抱えて部屋の中を歩き回ったり、あまりの苦しさに壁に頭をぶつけたくなるような衝動に駆られることさえあります。

群発頭痛発作時には顔面が片側だけ紅潮することがあります。激痛により自律神経が乱れ、発作側の頬が赤くなることも特徴です。痛み自体が直接の死亡原因となることはありませんが、激痛による精神的な追い詰められ感は非常に強く、適切な治療をしないと日常生活に大きな支障をきたします。決して命に関わる疾患ではありませんが、放置すれば「生きた心地がしない」苦痛が続くため、早めに専門医の診察・治療を受けることが大切です。

群発頭痛という名前は、一定の期間(群発期)に頭痛発作が集中して起こることに由来しています。群発期には1~3ヶ月ほどの間、ほぼ毎日決まった時間帯(特に深夜から明け方)に激しい頭痛が発生します。群発期が過ぎると頭痛が嘘のように消失し、数ヶ月~数年間は発作が起こらない寛解期に入ります。このように「発作が群発する時期」と「何年も症状が出ない時期」を繰り返すのが群発頭痛の大きな特徴です。

日本では群発頭痛の有病率は人口1000人あたり0.4~1人程度と推定されており、片頭痛に比べるとかなり稀なタイプの頭痛です。典型的には20~40代の男性に多く発症し、特に30代での発症が目立ちます。また喫煙や飲酒習慣のある方に多いという報告もあります。

いずれにせよ極めて激烈な痛みを伴う頭痛ですが、適切に対処すれば命に直接関わる心配はありません。しかし痛みが強烈なあまり思わず自傷行為に及んでしまう危険性もありますので、やはり専門的な治療を受けてしっかり痛みを抑えることが重要です。

動画でも解説しています。

Q:群発頭痛はどんな症状ですか?

群発頭痛には極めて特徴的な症状があり、その症状から他の頭痛と明確に区別できます。以下に群発頭痛の代表的な症状を示します。

激烈な片側の痛み

痛みは必ず頭の片側に起こり、特に目の奥からこめかみ(側頭部)にかけて「えぐられるような」「焼け火箸を刺されたような」表現される激痛です。一度の発作は15分~3時間程度持続し(多くは1~2時間)、治療しないと1日に1~8回も繰り返されることがあります。発作が起きている間はあまりの痛みに横になって安静にすることすら困難で、体を前後に揺さぶったり歩き回ったりしてしまうほどです。

痛みと同じ側に出現する自律神経症状

群発頭痛では頭痛が起こっている側と同じ側の目や鼻に、自律神経の異常による症状が現れます。具体的には 目の充血・流涙(涙がポロポロ出て止まらない)、鼻づまり・鼻水、まぶたの腫れ・下がり(眼瞼下垂)、顔面の発汗、瞳孔の縮小(縮瞳) といった症状です。これらは頭痛発作に伴って起こり、頭痛が治まると自然に軽快します。普段はまず起こらない症状なので、強い頭痛と同時にこのような症状が片側だけに出現すれば群発頭痛の可能性が高まります。

一定の周期・時間帯に起こる

群発頭痛という名前の通り、多くの場合は毎年決まった季節や時期に集中的に頭痛発作が起こります(例えば「毎年秋になると1ヶ月間毎晩のように痛む」等)。一度群発期に入ると、その期間中はほぼ毎日、同じような時間帯に痛みが走るのが典型的です。特に夜間~明け方の睡眠中に発作が起きやすいことが知られています。このように発作の起こり方に規則性がある点も群発頭痛の症状上の特徴です。群発期が終わればウソのように頭痛が消える(寛解期に入る)ため、発作が起きていない時期には身体所見上はほぼ正常に過ごせることも、片頭痛など他の頭痛と異なるポイントです。

Q:群発頭痛と他の頭痛はどう違いますか?

群発頭痛は、その症状や起こり方が他の頭痛(片頭痛や緊張型頭痛など)と大きく異なります。他の代表的な頭痛である「片頭痛(偏頭痛)」や「緊張型頭痛」と比較すると、以下のような違いがあります。

片頭痛(偏頭痛)との違い

一般に片頭痛は女性に多いのに対し、群発頭痛は男性に圧倒的に多い傾向があります。片頭痛の痛みは4~72時間じわじわ続くことが多いですが、群発頭痛の発作は15分~3時間と比較的短時間で収まります。また片頭痛発作中の患者さんは動くと悪化するため静かにじっとしていたいことが多いですが、群発頭痛発作時は痛みで居ても立っても居られず動き回ってしまう点でも対照的です。

さらに片頭痛は発作のタイミングが不規則(ストレスや天候など誘因はあるが発症パターンはまちまち)なのに対し、群発頭痛は文字通り群発期に集中し毎日ほぼ決まった時間帯に起こるなど、発作の起こり方にも大きな違いがあります。

緊張型頭痛との違い

緊張型頭痛はいわゆる肩こり・首こりに伴う頭痛で、頭全体を締め付けられるような鈍い痛みが特徴です。一方、群発頭痛は頭の片側に限局した激烈な痛みなので、痛みの部位と強さがまったく異なります。緊張型頭痛は痛みが比較的軽度で日常生活を何とか続けられるケースが多いですが、群発頭痛はとてもではないが仕事や家事どころではなく、発作中は何も手につかないレベルの激痛です。緊張型頭痛は慢性的にダラダラ痛む傾向がありますが、群発頭痛は先述のように群発期以外はケロッと症状が消える点でも異なります。

Q:群発頭痛の原因は何でしょうか?

群発頭痛の正確な発症メカニズムはまだ完全には解明されていません。しかし近年の研究により、脳の視床下部という部位の機能異常が中心的な役割を果たしていると考えられています。視床下部は体内の概日リズム(いわゆる体内時計)を司る場所で、群発頭痛が毎日決まった時間に起こりやすいことや、毎年同じ時期に発症しやすいことと関連しているとされています。実際、PETという脳の機能を調べる画像検査では、群発頭痛の発作中に視床下部の後部が活性化していることが確認されています。つまり脳内の視床下部の過剰な興奮が引き金となり、群発頭痛の発作が起こると考えられています。

では視床下部の興奮がどのように激痛を生み出すのでしょうか。現在有力な説では、視床下部からのシグナルで三叉神経(顔面の感覚を司る神経)が活性化され、その結果として頭蓋の内外を走る血管が拡張し、炎症が生じて痛みが発生すると考えられています。同時に視床下部の刺激で副交感神経も活発になるため、先に述べたような涙や鼻水、眼瞼下垂などの自律神経症状が頭痛と同側に現れるのです。まとめると、「視床下部」→「三叉神経」→「血管拡張と炎症」→「激痛」という経路が群発頭痛発作のメカニズムだと考えられます。

また、群発頭痛にはいくつか発作の誘因(きっかけ)が知られています。中でも有名なのはアルコールで、群発期には少量のお酒でもほぼ確実に発作を誘発してしまいます。特にビールや日本酒、ウイスキーなどアルコール度数の高いお酒は要注意です。この他にもニトログリセリン(狭心症の治療薬で血管拡張作用があります)などの血管拡張薬、シンナーやガソリン、香水といった強い匂い、急激な気圧の変化(飛行機の離着陸や高地への旅行など)、不規則な睡眠(特に昼寝)などが誘因として報告されています。興味深いのは、これらの誘因は群発期にのみ発作を誘発し、寛解期には同じ刺激を与えても発作が起きない点です。特にアルコールに関しては群発期には必ず発作を引き起こすため、群発期の禁酒は必須と言われます。

また、最近になって群発頭痛の痛みの発生源として、こめかみや頭皮の血管、特に浅側頭動脈(せんそくとうどうみゃく:英語ではSTA)が重要であることがわかってきました。STAという血管が拡張すると、強い痛みの信号が送られることが研究でわかっており、その痛みを抑えるためのSTA動注という新しい治療が開発されています。

詳しく知りたい方は下記の治療実例も参考にしてください。

20年来の群発頭痛に悩む医師が、STA動注治療で劇的に改善した症例

Q:群発頭痛になりやすい人はどういった特徴がありますか?

群発頭痛は比較的稀な疾患ですが、患者さんの傾向として特定の特徴がいくつか知られています。まず性別では男性に圧倒的に多いことが挙げられます。かつては患者の約85%が男性ともいわれていましたが、近年では徐々に男女差が縮まりつつあり、女性の群発頭痛患者さんも決して珍しくありません。年齢層では20~40代での発症が多く、特に30代前後で初めて発作が起こる例が目立ちます。

また群発頭痛の患者さんには喫煙習慣のある方が多いことが知られています。実際、群発頭痛患者の喫煙率は一般人に比べて高いという報告があり、何らかの形で喫煙が発症に関与している可能性があります。さらにアルコールも発作の誘因となるため、日常的にお酒を飲む方に多い印象があります。

ただし、上記はあくまで統計的な傾向です。例えば女性でも群発頭痛になることがありますし、タバコやお酒を一切やらない人が発症するケースもあります。「自分は男性で喫煙者だから注意しなければ」といった視点も大切ですが、女性や非喫煙者でも油断はできないことを念頭に置き、症状に思い当たる場合は早めに医療機関を受診すると良いでしょう。

Q:群発頭痛はどのように診断しますか(診断基準はありますか)?

群発頭痛の診断では、まず患者さんの症状経過や発作パターンを詳しくうかがう問診が何より重要です。先に挙げたような特徴的症状(片側眼窩部の激痛と自律神経症状、決まった時期に集中して起こる等)が揃っていれば、症状だけで比較的容易に診断がつきます。

国際頭痛分類第3版 (ICHD-3) では、群発頭痛の診断基準として以下の条件が示されています。

  • A. 基準B~Dを満たす激しい片側性の頭痛発作を5回以上経験
  • B. 治療しなかった場合、発作が15分~180分持続する
  • C. 発作時に以下の少なくとも1つの症状を伴うこと(頭痛と同じ側に起こる):
    (1) 結膜充血または流涙
    (2) 鼻閉または鼻漏
    (3) 瞼の浮腫(まぶたのむくみ)
    (4) 額部・顔面の発汗
    (5) 縮瞳または眼瞼下垂(瞳孔が小さくなる、まぶたが下がる)
    (6) 落ち着きのなさ、または興奮症状
  • D. 発作の頻度は1日おき~1日8回まで認める
  • E. 他の疾患による頭痛ではない(※他に適合する診断がない)

専門的な基準を書きましたが、要するに「片側の目の奥が激しく痛み、鼻や目の症状を伴い、発作が短時間で繰り返す」といった所見があれば群発頭痛と診断されます。多くの場合、問診で典型例かどうかを判断できますが、初めて群発頭痛様の症状が出た場合や症状が典型的でない場合には、念のためMRIやCTなどの画像検査を行って脳腫瘍や脳血管の奇形など他の病気が隠れていないか確認することが重要です。

特に下垂体腫瘍(脳下垂体の腫瘍)や海綿静脈洞の病変は、群発頭痛に似た症状を引き起こすことがあるため注意が必要です。こうした鑑別のため、必要に応じて画像検査を行い、他の疾患が否定され、なおかつ症状が国際的な診断基準に合致すれば群発頭痛と診断されます。

診断の際には、頭痛ダイアリー(頭痛日記)をつけておくことも有用です。いつ頭痛が起き、その時どのような状況だったか、痛みの強さ、試した対処(薬を飲んだか、効果はどうだったか)などを書き留めておき、受診時に医師に見せると診断の助けになります。

Q:群発頭痛は難病指定されていますか?

残念ながら、群発頭痛は2025年現在「指定難病」(国の難病指定疾患)には含まれていません。 国から医療費助成などの支援が受けられる指定難病ではないため、公的補助が使える制度(例えば難病医療費助成制度)の対象外となります。そのため、群発頭痛に対しては通常の保険診療の範囲で治療を行うことになります。

ただし、群発頭痛は厚生労働省が定める「慢性疼痛」の中でも最も痛みが強い病態のひとつとして知られており、患者さんの生活への影響が極めて大きいことが認識されています。「世界三大激痛」の一つとも言われるほどの疾患であるにも関わらず指定難病ではないことから、患者団体などが難病指定を求める活動を行っている状況です。

また、症状が重く仕事や日常生活に支障をきたす場合には、障害年金の対象となるケースもあります。慢性の群発頭痛(寛解期がなく1年以上発作が続くような場合)では特に生活への影響が大きいため、主治医と相談しながら公的支援策について検討してみることも大切です。

Q:群発頭痛にはどのような治療法がありますか?

群発頭痛の治療は大きく「急性期治療(発作時の治療)」と「予防治療(群発期に発作自体を起こりにくくする治療)」に分けられます。頭痛の痛みが非常に強いため、市販の鎮痛薬(痛み止め)や通常の頭痛薬はほとんど効果がありません。そのため群発頭痛の治療では、専門的な治療薬や手技を用いることになります。代表的な治療法は以下の通りです。

急性期治療(発作を鎮める治療)

群発頭痛の発作が起きた際、速やかに痛みを和らげるための治療です。第一選択となるのは純酸素の高濃度吸入療法です。100%の純酸素を毎分7~15リットルの流量で、専用のマスクを用いて15~20分程度深呼吸するように吸入すると、多くの患者さんで開始後15分以内に痛みが改善します。約70~80%の患者さんに有効とされ、副作用も少ない安全な治療法です。自宅で行うには医師の指導のもと在宅酸素療法の手続きをとる必要があります。

次にスマトリプタンの自己注射も即効性のある有力な治療です。スマトリプタンはトリプタン系と呼ばれる頭痛治療薬で、日本では自己注射キット(イミグランキット)が使用可能です。太ももや上腕に皮下注射すると約75%の患者さんで15分以内に効果が現れます(1日2回まで使用可)。注射が苦手な方にはスマトリプタンの点鼻薬も有効です(効果は注射よりやや劣りますが、非侵襲的に使用できます)。

これら酸素療法とスマトリプタン自己注射が、群発頭痛発作を迅速に抑える両輪の治療と言えるでしょう。なお、かつて片頭痛などで使われたエルゴタミン製剤は群発頭痛発作にはほとんど効果がなく、現在はあまり用いられません。

予防治療(群発期に発作を起こりにくくする治療)

群発頭痛では発作が起きると痛みが非常に激しく短時間に繰り返すため、予防的な治療も重要です。群発期に入ったらすぐに予防薬の内服を開始し、群発期の間は毎日服用を続けます。

第一選択の予防薬はベラパミルというカルシウム拮抗薬です。ベラパミルは本来狭心症など心臓の病気の薬ですが、群発頭痛の予防効果があることが分かっており、世界的にも標準的な予防薬とされています。通常1日240~480mg程度から開始し、効果を見ながら徐々に増量します(高容量になるため、治療中は定期的に心電図で副作用チェックが必要です)。

このほか、副腎皮質ステロイド(ステロイドホルモン)を群発期の初期に短期間内服して発作頻度を抑える方法や、慢性群発頭痛に対して炭酸リチウムやバルプロ酸といった薬剤を用いることもあります。

最近では、群発頭痛の痛みに頭部の血管拡張が深く関わっていることに注目し、局所の血管に直接アプローチする新しい治療法が注目されています。例えばSTA動注治療(浅側頭動脈への動脈注射)といって、こめかみ付近の皮下を走る浅側頭動脈に極細の針を用いて直接薬剤を注入する低侵襲の治療があります。

治療時間は1~2分ほどで外来時にできます。従来の内服薬など全身作用型の治療と異なり、痛みの原因となる局所の異常血管にピンポイントで薬を届けられるため、即効性と副作用の少なさが期待できる方法です。

20年来の群発頭痛に悩む医師が、STA動注治療で劇的に改善した症例

Q:群発頭痛の発作時に自分でできる対処法(治し方)はありますか?

群発頭痛の発作時は激痛のためご自身でできる対処には限界がありますが、少しでも早く痛みを和らげるため以下のようなポイントに気を付けましょう。

酸素吸入をすぐ始める

群発頭痛の発作が起きたら、最優先で100%酸素の高濃度吸入を開始しましょう。すでに在宅酸素療法の指示で酸素ボンベとマスクをお持ちの場合は、発作の前兆を感じた時点ですぐに吸入を始めます。座った姿勢で身体を前かがみにし、両手でマスクをしっかり顔に密着させて深呼吸するようにゆっくり吸入すると効果的です。ポイントは「痛みがピークに達する前に」吸入を開始することです。群発期には常に酸素ボンベとマスクを手元に置き、いつでも使える状態にしておくと安心です。

処方された自己注射を躊躇しない

医師からスマトリプタン自己注射キット(イミグランキットなど)を処方されている場合、発作のごく初期に速やかに使用してください。痛みが激しくなってからではなく、「来るかも?」と感じた段階で太ももや上腕に自己注射すると、多くは10~15分ほどで効果が現れます。発作1回につき1本の使用で十分です(1日に2本まで)。注射に抵抗がある方もいるかもしれませんが、群発頭痛の痛み自体が注射の痛みなど比にならないほど強烈ですので、ためらわず使うことが望ましいです。

痛む側の頭を冷やす

片頭痛では頭を冷やすと痛みが和らぐことがありますが、群発頭痛では効果は限定的です。しかし全く無意味というわけではなく、痛い側のこめかみや眼の周囲をアイスノンなどで冷やすと、多少痛みが和らぐ場合があります。人によっては幾分楽になるとの報告もあるため、「少しでも冷やすとマシになる」と感じる場合は試してみてもよいでしょう。ただし無理に氷水シャワーを浴びる等の極端な方法は逆効果になりかねません。あくまで患部の冷却で様子を見る程度にします。

横にならず、楽な姿勢で過ごす

群発頭痛の発作中は、無理に横になって安静にしようとするより、椅子に座るか立っている方が楽なことが多いです。身体を前後に揺すったりその場を歩き回ったりすると、わずかですが痛みが紛れる場合もあります。これは実際に多くの患者さんが経験するところですので、耐え難い時には無理せず「少し動いていた方がまだマシ」と感じる体勢をとってください。

発作時間を予測して備える

群発頭痛は毎日ほぼ決まった時間帯に起こることが多いので、発作が起きやすい時間の少し前に目覚ましをセットしておき、先に起きて準備してしまうのも有効です。例えば毎晩午前2時頃に痛みで目が覚めるという場合、その30分前の1時30分に起きて酸素吸入の準備を整えておく、といった工夫です。こうすることで「痛みで叩き起こされる」より先に対処ができ、心の準備も含め幾分余裕を持って発作に対峙できます。

室内の空気を入れ替える

発作中に窓を開けて新鮮な空気を入れることで、気分的にスッと楽になることがあります。科学的な根拠は明確ではありませんが、閉め切った空間より適度に換気された環境の方が呼吸がしやすくなり、副交感神経症状(涙や鼻水)が和らぐとの報告もあります。安全を確保できる状況であれば試してみる価値はあります。

以上のように、群発頭痛発作時には「とにかく速やかに酸素吸入とトリプタン注射で鎮痛を図る」「少しでも楽な姿勢・環境を整える」ことがポイントです。ご自身や周囲の方が適切に動けるよう、日頃から発作時の対処手順をシミュレーションしておくと安心です。

Q:群発頭痛にロキソニンなどの市販薬や、効果的な漢方薬はありますか?

結論から言うと、群発頭痛にはロキソニンなどの市販の痛み止めはほとんど効果がありません。

群発頭痛の痛みは極めて強く特殊な機序で起こるため、市販の鎮痛薬(NSAIDsなど)では歯が立たないことが多いのです。実際、通常の頭痛であればロキソニンやイブプロフェンである程度和らぐところ、群発頭痛では全く効かなかったという患者さんが大半です。「激痛だから」といって何錠も飲んでしまうと、薬の副作用で胃腸を痛めたり肝臓に負担をかけてしまう恐れがあります。そのため、群発頭痛の可能性がある場合は市販薬に頼りすぎず、早めに専門的な治療を受けることをお勧めします。

漢方薬に関してですが、群発頭痛そのものを劇的に治せる漢方は残念ながら確立されていません。ただし、体質改善や体全体のバランスを整える目的で補助的に漢方を用いることは考えられます。頭痛のタイプや患者さんの体質によって処方は異なりますが、参考までに群発頭痛で用いられることがある漢方薬には「呉茱萸湯(ごしゅゆとう)」や「清上蠲痛湯(せいじょうけんつうとう)」があります。これらは体を温めたり血行を改善することで頭痛を緩和する狙いがあります。他にも体質に応じて桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などを併用するケースもあります。

もっとも、漢方薬は効果発現に時間がかかることも多く、群発頭痛発作の即効的な鎮痛手段にはなりにくいのが現状です。そのため、あくまで西洋医学的な治療(酸素・トリプタン・予防薬など)を主体としつつ、補完的に漢方で体質を整えるというスタンスになります。「市販薬も効かないし、漢方で何とか…」とお考えの方もいるかもしれませんが、まずは専門医で適切な治療薬を処方してもらうことが先決である点は強調しておきたいと思います。

Q:群発頭痛に効果的なツボはありますか?

群発頭痛の痛みを劇的に和らげる「特効ツボ」のようなものは残念ながらありません。しかし、ツボ押しによるリラクゼーション効果や血行改善によって、多少なりとも症状が緩和する可能性はあります。特に次のようなツボは頭痛全般に効果があるとされ、群発頭痛でも試してみる価値があります。

合谷(ごうこく)

手の甲にあるツボで、親指と人差し指の骨が交わるくぼみの部分です。頭痛や首・肩こりに効くとされています。反対側の親指で少し痛いくらいの強さで押し込み、10秒ほど押したら離す、を繰り返します。群発頭痛の激痛そのものを止めることは難しいですが、痛みで興奮した神経を落ち着ける作用が期待できます。

百会(ひゃくえ)

頭のてっぺん、両耳を結んだ線と鼻筋の延長線が交わるところにあるツボで、ストレス性の頭痛にも用いられます。両手の中指を重ねて当て、ゆっくり垂直に5~10秒押して離す、を繰り返します。強く押しすぎると逆に頭が重くなるので、「気持ちいい」と感じる程度の刺激で十分です。

風池(ふうち)・天柱(てんちゅう)

首の後ろ、後頭部の髪の生え際付近にあるツボです。風池は後頭部中央から指2本分ほど外側、天柱は太い筋肉(僧帽筋)の外側のくぼみあたりに位置します。親指で後頭部を支えるようにしながら、左右同時にゆっくり10秒程度押して離すのを繰り返します。緊張型頭痛などではよく使われるツボですが、群発頭痛でも発作の頻度を減らす助けになる可能性があります。

以上のようなツボ刺激は、あくまで補助的なセルフケアです。群発頭痛の発作そのものを止める力は期待できませんが、「何もしないよりは気が紛れる」「発作が軽く感じる」といった声もあります。

Q:群発頭痛に前兆はありますか?

片頭痛では発作前にキラキラした光が見えるなどの前兆(閃輝暗点など)が出ることがありますが、群発頭痛には典型的な前兆現象はありません。多くの場合、ある日突然なんの予兆もなく片目の奥が痛み出し、発作が始まります。ただし一部の患者さんでは、発作が起こる直前の数分間に「何となく目が霞む」「首筋が張る」といった軽い予兆が見られることがあります。

これらは片頭痛のようなはっきりした前兆とは異なり、発作直前のごく短時間に起こる「初期症状」のようなものです。毎回必ず感じられるわけではありませんが、もしご自身で「あ、来そうだ…」という感覚がわかる場合は、その段階で先手を打って酸素吸入を始めるなど対策を取ることができます。

いずれにせよ、群発頭痛は予期せぬタイミングで急に発症することが多いです。他の病気のように前触れが少ないため、「またいつ発作が来るか」という不安が患者さんを苦しめる面もあります。そのため、発作期には常に酸素ボンベを携行するなど万全の備えをしておくことが安心材料になるでしょう。なお、日中より夜間に起こりやすいので、睡眠前に予防薬をしっかり飲んでおくなど規則正しい生活リズムを保つことも発作予防に役立ちます。

Q:女性が群発頭痛になることはありますか?

はい、女性でも群発頭痛になることがあります。 群発頭痛は男性に多い病気ですが、決して男性だけの病気ではありません。かつては「男性:女性=6~7:1」と言われたこともありますが、近年の調査では女性の群発頭痛患者も増えており、男女差はやや縮まってきています。実際、国内外で女性の群発頭痛の症例報告も数多くあり、特に30~40代の働き盛り世代で発症する女性も珍しくありません。

女性の場合、「片頭痛もちだと思っていたら実は群発頭痛だった」というケースもあります。群発頭痛は男性に多いという先入観から診断が見逃されることもあるため、女性であっても先に述べた典型症状(片側の目の奥が激痛、涙や鼻水が出る、毎日決まった時間に痛む等)に合致する場合は群発頭痛を疑って適切な診断・治療を受けることが大切です。

ちなみに、女性の群発頭痛にはいくつか興味深い点も指摘されています。例えば女性ホルモンとの関係ですが、明確な因果関係は不明ながら「女性ホルモンが発作頻度に影響する可能性」も議論されています。ある研究では、閉経後の女性に慢性群発頭痛が多かったことから、女性ホルモンは群発頭痛に対して保護的に働いているのではないかという示唆もあります。ただし個人差が大きく、一概には言えません。

まとめると、群発頭痛は男性に多いものの女性も発症し得る頭痛です。女性で「自分は片頭痛だろう」と思い込んでいる方も、症状が当てはまるようであれば群発頭痛の可能性を考慮してください。男女にかかわらず、辛い頭痛が続くときは専門医に相談するのが一番です。

Q:群発頭痛を予防するために食べてはいけないものなど、日常生活で気を付けることはありますか?

群発頭痛の予防においては、発作が頻発する群発期と症状が出ていない寛解期で対策が異なります。それぞれの時期に応じた生活上の注意点を挙げます。

群発期の生活管理

群発期には発作を誘発する要因を可能な限り排除し、発作の頻度・強度を抑えることが目標です。

  • 群発期のアルコール摂取はごく少量でも確実に発作を誘発します。発作期には断酒が必須です。ノンアルコールビールであっても微量のアルコールが含まれるため避けた方が安全でしょう。
  • 加工食品・熟成チーズ・チョコレートなど添加物やチラミンといった成分が血管を拡張させ、発作を引き起こす可能性があります。
  • 旨味調味料(MSG)を多く含む食品 中華料理やインスタント食品などは要注意です。
  • 刺激物(辛すぎる食べ物・強い香辛料)血流が急に変化することで発作につながる場合があります。
  • 毎日同じ時間に就寝・起床し、昼寝は避けます。睡眠パターンの乱れは発作を誘発しやすくなります。特に夜更かしや寝不足は厳禁です。
  • 強い匂い(香水、タバコの煙、ペンキ、ガソリンなど)を嗅ぐと発作の引き金になることがあります。群発期にはこうした刺激臭はできるだけ避けましょう。また喫煙者の方はこの機会に禁煙を検討してください(喫煙も発作誘因となることがあります)。
  • 気圧の急激な変化も群発頭痛発作を誘発することで知られています。そのため群発期には登山や飛行機での移動は可能な限り控えましょう。どうしても出張や旅行で飛行機に乗る必要がある場合は、主治医に相談の上で予防的な対策を取ることをお勧めします。
  • お風呂に入ると体が温まり血管が拡張するため、群発頭痛の発作が起こったり痛みが強くなることがあります。群発期はできればぬるめのシャワーで済ませ、熱い湯船に長時間浸かるのは避けた方が無難です。

寛解期の生活管理

寛解期には一見症状がなく普段通り生活できますが、次の群発期に備えての工夫ができます。

  • 群発頭痛は毎年ほぼ同じ時期に発症することが多いため、自分の群発期パターンを記録しておくと役立ちます。例えば日記やカレンダーに発作が起きた期間をメモしておき、「そろそろ来る頃だ」と予測できれば事前に治療薬を確保したり、仕事のスケジュールを調整するなど準備が可能です。
  • 過度なストレスは片頭痛だけでなく群発頭痛においても発作の引き金になり得ます。寛解期のうちに適度な運動や趣味の時間を取り入れるなど、ストレスをため込まない生活を心がけましょう。自律神経のバランスを整える意味でも、規則正しい生活リズムと十分な睡眠・休養が大切です。
  • 日頃から健康維持に努め、風邪や疲労の蓄積を防ぐことも大事です。特に生活リズムを整えることは視床下部の安定化につながり、結果的に次の群発期の発症を遅らせたり軽減できる可能性があります。暴飲暴食を避け、栄養バランスの良い食事・適度な運動など基本的な健康管理に留意しましょう。
  • 次の群発期に向け、必要な治療の準備を整えておきます。例えば酸素ボンベの手配を事前に確認しておく、予防薬(ベラパミルなど)が切れていないかチェックする、職場の上司や家族に「また発作が来る可能性がある」ことを伝えて協力を仰いでおく、などです。備えあれば憂いなしです。
  • 群発期・寛解期に関わらず、頭痛が起きた日時・持続時間・誘因と思われる要因・使用した薬とその効果等を頭痛日記に記録しておきましょう。これらのデータは次の受診時に医師と治療方針を相談する材料になりますし、ご自身で「こうすれば痛みが軽減した」という対処法を見つけるヒントにもなります。

Q:どんなときに病院を受診すべきですか?

群発頭痛は激烈な痛みを伴うため、基本的には痛みが強い発作が繰り返す時点で早めに専門医を受診すべきです。特に次のような場合は放置せず、速やかに医療機関を受診してください。

初めて群発頭痛様の症状が出たとき

今まで経験したことのない激しい片側の頭痛が突然起こり、さらに目の充血や鼻水など群発頭痛に特徴的な症状が初めて出現した場合は、必ず脳神経外科や神経内科を受診しましょう。先述のように他の疾患(脳腫瘍、脳動脈瘤、海綿静脈洞症候群など)が隠れている可能性もあるため、MRIやCT検査で異常がないか確認する必要があります。「激しい頭痛=群発頭痛」と自己判断せず、まずは医師の診断を仰いでください。

診断がついている場合で受診が必要なケース

すでに群発頭痛と診断され経過を追っている患者さんでも、以下の状況では改めて受診して相談することをお勧めします。

  • 群発期に入ったとき
    群発期が再来したら、予防薬の開始や調整、在宅酸素療法の手配などが必要です。発作が始まってしまう前に受診し、準備を整えてもらいましょう。
  • これまでと発作パターンが変わったとき
    毎晩深夜に起きていた発作が突然昼間にも起こるようになった、発作の持続時間がこれまでより長引く、痛みの部位が両側になった等、いつもと違う様子が見られた場合は再評価が必要です。症状の変化によっては別の病気が隠れている可能性も考慮します。
  • 治療効果が不十分なとき
    酸素吸入やトリプタン注射を使っても効果が落ちてきた、発作の頻度が明らかに増えている等、現在の治療で抑えきれない場合は治療法の見直しが必要です。医師に遠慮せず現状を伝え、他の治療オプションを相談しましょう。
  • 発作頻度が増加・群発期が長期化したとき
    群発期が通常より長引いている、年に複数回群発期が来るようになった、など病状が悪化傾向にある場合も受診して下さい。予防治療の強化や新たな治療の導入を検討します。
  • 緊急受診が必要な場合
    下記のような症状を伴う場合は、群発頭痛以外のより重篤な疾患の可能性があります。ただちに救急受診してください。
    ・頭痛と共に意識障害やけいれんが起きた
    ・発熱や項部硬直(首すじの強いこわばり)がある
    ・手足の麻痺や言語障害が出現した
    ・視力の低下や複視(物が二重に見える)が持続している
    ・頭痛発作が3時間以上続いて改善しない
    これらの症状は群発頭痛では説明がつかず、くも膜下出血や髄膜炎、脳卒中など緊急治療が必要な病態を示唆します。迷わず救急車を呼ぶか、救急外来を受診してください。

定期的な通院が推奨される場合

群発頭痛と診断され治療中の方は、以下のような場合に定期フォローが必要です。

  • 予防薬(ベラパミル等)を内服中
    心電図でのモニタリングや血液検査による副作用チェックのため、定期的に通院し医師の管理下で治療を継続しましょう。
  • 在宅酸素療法を行っている
    酸素ボンベや機器の管理、酸素使用量の確認、処方の更新などのため、やはり定期的な診察が必要です。
  • 年に複数回の群発期がある
    年に2回以上群発期が来るような場合、予防治療の強化や新規治療の検討が必要になることがあります。主治医と相談し、より効果的な治療計画を立てましょう。

Q:群発頭痛は完治した人はいますか?長期的な経過は?

群発頭痛は長期的には慢性的に再発を繰り返すことが多い疾患です。しかし、適切な治療によって症状をコントロールし、日常生活への支障を最小限に留めることは十分可能です。

多くの患者さんでは20~40代で群発頭痛が初めて発症し、その後は数十年にわたり群発期と寛解期を繰り返す経過をたどります。典型的には年に1~2回、1~3ヶ月間の群発期があり、その後数ヶ月~数年の寛解期に入るというパターンです。ただしこれは平均像であり、発作の頻度や周期は個人差が大きいです。

明るい材料としては、加齢とともに症状が落ち着いてくる傾向が挙げられます。例えば50~60代になると群発期の頻度が減ったり、発作の痛みが幾分軽くなるケースが報告されています。実際、60歳を過ぎた頃からぱったり発作が来なくなり自然寛解したという患者さんもいます。若い頃は毎年のように地獄の痛みを経験していた方でも、年齢を重ねるにつれて発作間隔が長くなり、70代以降ではほとんど起こらなくなったという例もあります。医学的な理由ははっきりしませんが、体の変化(ホルモンや生活スタイルの変化など)が影響しているのかもしれません。

一方で、患者さん全体の約10~15%程度は「慢性群発頭痛」へ移行すると言われます。これは1年以上寛解期がなく、発作が持続または頻発するケースです。慢性群発頭痛になると患者さんの負担は非常に大きくなりますが、その分積極的な予防治療(複数の予防薬の併用や神経ブロック療法、新しい治療法の導入など)が検討されます。

最も重要なのは、群発頭痛と診断されたら信頼できる専門医と継続的に連携し、自分に合った治療計画を立てていくことです。幸い、適切な急性期治療と予防治療を組み合わせることで、多くの患者さんは普段と変わらない社会生活を送ることができています。完治が難しくとも「コントロール可能な疾患」ですので、決して希望を失わず、医療者と二人三脚で上手に付き合っていきましょう。

群発頭痛は非常につらい病気ですが、適切な診断と治療で痛みを和らげ日常生活を取り戻すことが可能です。最近では、先述したSTA動注治療など最先端の低侵襲治療も含め、群発頭痛に対する専門的な治療を提供するクリニックもあります。

以下の治療実例もご覧ください。
20年来の群発頭痛に悩む医師が、STA動注治療で劇的に改善した症例

著者プロフィール

奥野祐次 M.D., Ph.D.(医師・医学博士)

オクノクリニック 総院長

専門分野:慢性疼痛、モヤモヤ血管に対する血管内治療、カテーテル治療・動注治療、画像診断(MRI・エコーを活用した精密な痛みの診断)

2006年3月、慶應義塾大学 医学部 卒業。2008年より放射線科医として血管内治療に従事し、2012年3月、同大学大学院医学研究科博士課程を修了(研究テーマ:「病的血管新生」)。同年4月より江戸川病院にて運動器疾患に対する血管内治療を専門に担当。2014年には同院「運動器カテーテルセンター」センター長に就任。2017年10月、神奈川県・センター南にて「オクノクリニック」を開院。
現在東京を中心に全国10院を運営するオクノクリニックの総院長。運動器カテーテル治療の専門医として、長年にわたり痛みに悩む患者の治療に取り組んでいる。

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奥野祐次(医師)

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