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脳震盪後の頭痛(頭部外傷後)NEW
Q:脳震盪の症状を教えてください。軽い脳震盪でも注意が必要ですか?
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脳震盪は、頭部への直接的な打撃だけでなく、身体への衝撃が頭蓋内に伝播し、脳が急激に揺さぶられることで生じます。これにより、神経細胞レベルでの微細な軸索の伸展や細胞膜の透過性変化が起こり、「エネルギー・クライシス」と呼ばれる代謝の混乱が生じます。症状としては、「ぼーっとする」「霧の中にいるような感覚(Foggy feeling)」、頭痛、めまい、吐き気、ふらつき、集中力の低下、光や音への過敏性などが挙げられます。
一般的に脳震盪というと「気を失う」イメージがあるかもしれませんが、意識消失を伴う脳震盪は全体の約10%に過ぎず、残りの90%は意識を保ったまま発症しています。したがって、「意識があったから」「軽い衝撃だったから」といって脳震盪を否定することは医学的に誤りであり、頭部を打撲した際は慎重な経過観察が必要です。
Q:頭を打った後に頭痛がしますが、脳震盪でしょうか?
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はい、脳震盪によって頭痛が起こる可能性は十分にあります。しかし、頭を打った後に頭痛があるからと言って必ずしも脳震盪だとは限りません。特に受傷直後から24~48時間は状態が非常に不安定な時期であり、脳震盪の症状に紛れて「急性硬膜下血腫」や「脳浮腫」といった危険な病気が進行していることがありますので、注意が必要です。
特に、頭を打った後に「時間の経過とともに耐え難い激しい頭痛になる」「何度も繰り返し噴水のように吐く」「手足の麻痺やしびれがある」「つじつまの合わない言動をする」といった症状(レッドフラグ)が一つでも現れた場合は、頭蓋内の活動性出血や脳圧の上昇などが疑われるため、一刻も早く救急搬送を含む医療機関を受診してください。
Q:頭を打った後に頭痛が1か月ほど続いています。このようなことは良く起きるのでしょうか?
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頭を打った後に頭痛が続いてしまうことを、「外傷後頭痛」と呼びます。外傷後頭痛の頻度は男性の4.7%、女性の2.4%が経験するとされており、決して珍しくありません。
一般的には頭に外傷を受けてから7日以内に発症したものと定義されます。さらに、その症状が3か月以上続くものを「頭部外傷による持続性頭痛」と呼んでいます。
外傷後頭痛の症状は、片頭痛のように強い痛みの発作が数時間生じることを繰り返すタイプと、緊張型頭痛のように持続的に重い痛みが持続するタイプとがあります。
治療としては、頭痛薬のような対症療法以外には特別な治療法がないとされてきましたが、最近になって血管に着目した新しい治療が開発されています。
Q:脳震盪後に頭痛が続いています。いつまで続きますか?どのくらいの期間、後遺症で頭痛が続くことはありますでしょうか?
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脳震盪後の頭痛は、適切な安静を保つことで数日から10日程度で軽快することが多いです。しかし、患者さんの約20%は3週間を超えて症状が遷延し、特に小児や学童、若年者ではその期間が長引く傾向があります。受傷後3ヶ月を超えても頭痛やめまいなどの症状が持続する場合は「頭部外傷後の持続性頭痛」と呼ばれ、後遺症のように長期間続くことがあります。
また、高齢者の場合には別の病気が隠れていることがあり注意が必要です。加齢による脳の萎縮がある状態で頭を打った際に、直後は無症状でも、1〜2ヶ月ほどの期間を経てからじわじわと血が溜まる「慢性硬膜下血腫」という病気を発症し、歩行障害や認知症のような症状、頭痛が現れることがあります。頭を打ってから1~数ヶ月経ってから症状が出た場合には、速やかに脳神経外科を受診してください。
Q:脳震盪後の頭痛にロキソニンなどの痛み止めを飲んでもいいですか?
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脳震盪後の頭痛に対して、ロキソニン(ロキソプロフェン)などの一般的な非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を服用しても、有効性が確認されているわけではなく、効果が不十分なケースが多く見られます。
ロキソニンは末梢組織での炎症を抑えるお薬ですが、脳震盪後の頭痛は、脳内のイオンバランスの乱れや、自律神経の調節障害など「機能的・神経因性」の問題が複雑に絡んでいるため、痛みの根源に効きにくいのです。
また、痛みが引かない不安から鎮痛薬を頻繁に使いすぎると、脳が痛みに対して過敏になり、薬そのものが頭痛を引き起こす「薬物乱用頭痛」に陥る危険性があります。さらに消化管出血のリスクもあるため、漫然と市販の痛み止めを飲み続けることは避け、専門医にご相談ください。
Q:脳震盪後の頭痛の治し方、対処法を教えてください。
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受傷直後24〜48時間は、脳を完全に休ませる「精神的安静」が最も重要です。この期間は、テレビ、スマートフォン、ゲーム、読書など、脳に過剰な処理負担をかけるデジタルデバイスの使用は厳禁です。また、アルコールやタバコ、カフェインなどの刺激物も血管の収縮・拡張に影響を与えて頭痛を悪化させる可能性があるため控えてください。質の高い睡眠と、脱水を防ぐための十分な水分補給も心がけましょう。
スポーツへの復帰は決して焦らず、段階的に行う必要があります。症状が出ないことを確認しながら、日常生活活動、軽い有酸素運動、非接触の練習、そして全力接触練習へと、各段階で24時間以上の間隔を空けながら少しずつステップアップしていく「段階的復帰プロトコール(6段階)」を厳守することが不可欠です。完全に回復する前に二度目の衝撃を受けると、致死的な脳腫脹を引き起こす「セカンドインパクト症候群」の危険があるため、慎重な対応が求められます。
また、脳震盪後に3か月以上にわたって症状が続く外傷後頭痛では、これまでにははっきりした治療法は確立されていませんでした。
しかし最近になって、これらの頭痛に対して有効性が期待されているSTA動注という新しい治療が開発されています。
興味のある方は、下記の治療実例も参考にしてください。
Q:頭を打ってから頭痛が半年以上続いています。CTでも異常なしと言われましたが頭痛が治りません。根本的に治療する新しい方法はありますか?
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救急外来で行われるCT検査は、緊急の外科的処置が必要な大きな出血や骨折がないかを確認するためのものであり、CTで「異常なし」と言われても、脳震盪による機能的な混乱や微小な損傷が否定されるわけではありません。
画像診断では異常がないにもかかわらず、脳震盪などの外傷をきっかけに頑固な頭痛が数ヶ月から数年続く場合、頭皮の血管(こめかみの浅側頭動脈など)や首の筋肉の周囲に、異常な新生血管(モヤモヤ血管)が増殖している可能性があります。血管が新しく作られる際、一緒に「痛みを伝える神経」も増殖するため、これが持続的な頭痛の発生源(ペインジェネレーター)となっているのです。
当院では、この長引く痛みの根本原因である異常な血管に直接アプローチする新しい治療法、「STA動注治療」を行っています。
これは、超音波エコーでこめかみや後頭部付近の血管を確認しながら、極めて細い針(27G)を用いて動脈内に炎症を抑える微細な薬剤を注入する日帰り治療です。注入された薬剤は異常な「モヤモヤ血管」にのみ一時的に詰まってこれを消失させ、一緒に増えていた過敏な神経の活動も抑えることで、頭痛を根本的に改善します。
一時的に痛みを麻痺させる対症療法ではなく、痛みの原因そのものを減らす画期的な治療法です。副作用のリスクも非常に低く、安全性も確認されています。「どこに行っても頭痛が治らない」とお悩みの方は、ぜひ一度当院にご相談ください。
著者プロフィール
奥野祐次 M.D., Ph.D.(医師・医学博士)
オクノクリニック 総院長
専門分野:慢性疼痛、モヤモヤ血管に対する血管内治療、カテーテル治療・動注治療、画像診断(MRI・エコーを活用した精密な痛みの診断)
2006年3月、慶應義塾大学 医学部 卒業。2008年より放射線科医として血管内治療に従事し、2012年3月、同大学大学院医学研究科博士課程を修了(研究テーマ:「病的血管新生」)。同年4月より江戸川病院にて運動器疾患に対する血管内治療を専門に担当。2014年には同院「運動器カテーテルセンター」センター長に就任。2017年10月、神奈川県・センター南にて「オクノクリニック」を開院。
現在東京を中心に全国10院を運営するオクノクリニックの総院長。運動器カテーテル治療の専門医として、長年にわたり痛みに悩む患者の治療に取り組んでいる。

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