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「脳が痛みを記憶している」って本当?痛みは気のせいではありません
こんにちは。痛みの専門医、オクノクリニックの奥野祐次です。長引く痛みで病院に行ったとき、検査をしても異常が見つからず、お医者さんから「脳が痛みを記憶してしまっているんですね」と言われたことはありませんか?
「薬も効かない、原因もわからない。だから脳の問題だ」と言われると、まるで「気のせい」だと言われているようで、納得できない方も多いと思います。今回は、この「脳と痛みの記憶」について、医学的な不思議な実話と、私たちが考える「本当の原因」についてお話しします。
1. 痛みは脳の「総合判断」
確かに、痛みというのは単純な体の感覚だけではありません。感情や記憶、視覚など、脳の様々なエリアが活動して生まれる「複雑な現象」です。 実際、脳が痛みを勝手に作り出したり、逆に消してしまったりすることを示す有名なエピソードがあります。
2. 釘が貫通した作業員の不思議な話
ある建設現場での実話です。1人の作業員が誤って長い釘を踏み抜いてしまいました。釘はブーツを貫通し、足の甲から飛び出していました。 彼は激痛を訴え、救急車の中でも強力な鎮痛剤(モルヒネなど)を使っても痛みおさまりませんでした。
ところが病院でブーツを切り開いてみると、驚くべき事実が判明します。 なんと、釘は「足の指と指の間」をすり抜けており、足には傷一つついていなかったのです。 「釘が刺さった」という強烈な視覚情報によって、脳が「体が破壊された!」と判断し、実際には傷がないのに激痛を作り出していたのです。
3. 痛みを感じなくさせる脳の働き
逆に、痛みを感じなくさせることも脳は可能です。 古い実験ですが、犬に電気刺激を与えると最初は痛がります。しかし、「電気刺激のあとに必ず餌がもらえる」と学習させると、犬は電気を受けても痛がる素振りを見せなくなり、逆によだれを垂らして喜ぶようになったという報告があります。 脳が「この刺激は生存に有利だ(=餌がもらえる)」と判断すると、痛み信号をシャットアウトしてしまうのです。
4. でも、あなたの痛みは「記憶」のせいだけではない
こうした話を聞くと、「やっぱり私の痛みも脳の勘違い(記憶)なのかな?」と思われるかもしれません。 しかし、私はそうではないと考えています。
病院で「脳が記憶している」と言われるケースの多くは、「画像検査(レントゲンやMRI)で異常が見つけられず、治療法がない」時の言い訳として使われてしまっているのが現状です。
「原因不明=脳のせい」として片付けられてしまうことが多いのです。
5. 「気のせい」ではなく、物理的な原因がある
私たちが多くの患者さんを治療してきた経験から言えるのは、あなたが「痛い」と感じている場所には、ちゃんとした物理的な原因があるということです。 その最大の原因が、レントゲンには映らない「モヤモヤ血管(異常な血管)」です。
特殊な環境下で脳が痛みを作ることはありますが、慢性的な痛みに悩む患者さんのほとんどは、患部にこのモヤモヤ血管ができており、神経を刺激し続けています。これは「記憶」や「気のせい」ではなく、そこに病変があるのです。
もし「脳が痛みを記憶しているから付き合っていくしかない」と言われても、諦めないでください。それは、まだ本当の原因(モヤモヤ血管)が見つけられていないだけかもしれません。 痛みには必ず原因があります。私たちと一緒に、その原因を見つけていきましょう。
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