奥野祐次先生のコラム

COLUMN
COLUMN.71

腰椎分離症(ようついぶんりしょう)の原因と症状・診断方法について

腰椎分離症とはどんな病気でしょうか。

腰椎分離症は、腰椎の関節間部とよばれる部位に生じる疲労骨折です。関節間部は腰椎の骨のうち小さく細い部分で上下の椎間関節をつないでいる部分です。もっとも頻繁におきるのは第5腰椎の疲労骨折です。しかしときには第4腰椎におきることもあります。片側に生じることもあり、両側に生じることもあります。椎間間部は腰椎の骨の中で最も弱い部分にあたります。このため多くのスポーツで生じるような繰り返しの負担や酷使の影響をもっともうけやすい場所です。スポーツを活発に行っている10歳代に起こりやすく、特定の方向への動作を繰り返すスポーツ(野球、サッカー、バレー、体操など)で発症しやすいとされています。発生頻度は珍しくなく、十代全般では4.4~4.7%の人に生じるとされ、野球などの特定のスポーツでは6.3%(※1)の人に生じるという報告もあります。

 

腰椎分離症はどんな症状がでますか。

腰椎分離症をもっていても症状がでないことは多くありレントゲンをとってたまたま見つかったということが多いです。しかしもちろん症状が出ることもあり主な症状は腰痛です。腰痛とともに以下のような症状が出ます。

・筋肉の張り

・臀部や太ももの後ろにかけて広がる痛み

・スポーツをすると増悪して、休むと改善するというサイクルを繰り返す

特に背中をそらすと腰痛が増強しやすいとされています。腰痛だけでなく臀部痛や大腿外側の痛みが起こることもあります。長時間の運動のみならず長時間の立位、座位、中腰姿勢でも起こりやすいです。基本的に椎間板ヘルニアの様な足のしびれなどの神経症状を伴うことはありません。もししびれなどがあった場合は、腰椎分離症ではなく他の疾患をうたがいます。

 

 

腰椎分離症の原因は何でしょうか。

二つの要因が挙げられます。

 

(1)繰り返しの負担、酷使、オーバーユース

腰椎分離症は腰を頻繁にそらすような動作を含むスポーツをする若者にもっとも頻繁に生じます。これらのスポーツには体操、サッカー、筋力トレーニング、ウエイトリフティングなどが挙げられます。このような腰を反らす繰り返しの動作や負担が椎間間部の疲労骨折の原因になります。(※2)

 

(2)遺伝的要素

腰椎分離症は兄弟・姉妹間でともに発生することが知られており、遺伝的な要因が関係していると考えられています。遺伝的に椎間間部は細いと考えられておりそのような人は疲労骨折を起こしやすいと考えられています。

 

腰椎の後ろ半分は「椎弓」といってリング状の構造をしています。そのリングの斜め後方は細く弱い部分で、背中をそらす動作やジャンプからの着地のような動作で力がかかります。そういう動作繰り返されると骨にひびが入ってきます。第5腰椎に好発します。

 

腰椎分離症はどうやって診断しますか?

まずは問診でこれまでの症状の経緯を聞きます。特にスポーツに参加しているかどうか、腰に負担のかかるスポーツをしているかどうかを聞きます。次に身体所見として圧痛が生じている部位や可動域の低下の有無、筋力低下、筋緊張の亢進の有無を調べます。また太ももの裏のハムストリングスという筋肉が固くなることも腰椎分離症で頻繁にみられる身体所見です。

また下の写真のように片足立ちをして背中を後ろに反らせるテスト(Stork testと呼びます)をして痛みが誘発されるようであれば腰椎分離症をうたがいます。(※3)

画像検査としてはレントゲン、MRIが一般的です。レントゲンは、早期だと変化が見られないので診断には向いていません。痛みが発生してから2~4週間ほどたったころにレントゲンで変化があらわれることが多いです。MRIは、非常に早期の変化をとらえることができるので有効です。CT検査でも骨の変化を観察しているには適していますが、特に回復の経過を比較するには向いています。ただし、放射線を少なからず浴びてしまうので若い方には何度も撮影することはおすすめしません。

腰椎分離症で安静にしていますが、スポーツを復帰するまでにどれくらいの期間かかりますか。

スポーツ復帰までの期間は個人差がありますが3か月は原因となったスポーツをやめることが推奨されています。一般的な治療方針は最初の3か月は1日中コルセットをつけてスポーツも休みます。次の3か月でもコルセットをつけますがスポーツの再開が許可されます。ただしスポーツを再開して痛みが悪化するようなら再びスポーツの休止が必要となります。6か月以上スポーツ復帰できない場合に手術が薦められることもあります。

 

しかし最近では手術以外に疲労骨折部に生じた異常な血管をカテーテルを用いて除去することで痛みが改善することがわかってきており、入院せずに日帰りで受けられる新しい治療として注目されています。

 

興味のある方は以下の治療実例のページを参考にしてください。
半年間のコルセットで治らなかった腰椎分離症に、カテーテル治療が効果的だった治療実例

 

ハードなトレーニングで腰椎分離症になると聞きましたが、本当ですか?

ハードなトレーニングで腰椎分離症になる事は十分に考えられます。特に小中学生の時に屈曲伸展動作を繰り返すスポーツ(野球、サッカー、バレー、体操など)で、起こりすいとされています。


大人になってから腰椎分離症になることはありますか?

腰椎分離症の発生は二十歳になるまでは年齢とともに増加しますが二十歳以降は増加しないとされています。ただし大人になってから腰痛が発生して10代のころにすでに生じていた分離症が初めて発覚する場合もあります。

腰椎分離症の治療について教えてください。治らないことはあるのでしょうか?

多くの腰椎分離症は原因となるスポーツの中止とコルセットなどの固定装具の装着で症状が改善します。しかし一部にはそのような治療では改善しない方もいます。その場合従来は腰椎の固定術が行われてきました。

 

しかし最近では手術以外に疲労骨折部に生じた異常な血管をカテーテルを用いて除去することで痛みが改善することがわかってきており、入院せずに日帰りで受けられる新しい治療として注目されています。

 

興味のある方は以下の治療実例のページを参考にしてください。
半年間のコルセットで治らなかった腰椎分離症に、カテーテル治療が効果的だった治療実例

 

腰痛分離症のリハビリはどういったことをしますか?

腰椎分離症のリハビリテーションに関しては、病期によって異なります。

初期(急性期)では骨がくっつく可能性が高いのでコルセットや腰椎バンドを使用し患部を安静にさせることが必要です。慢性期では、骨がくっつく可能性が低くなります。患部への過度な負担を避けるために腰部の安定性と下肢の柔軟性の獲得が必要となります。

 

腰部の安定性を獲得するためのトレーニングとして、ドローインがあります。方法は、仰向けに寝て両側の股関節と膝関節を曲げます。その状態でお腹に力を入れて骨盤を後ろに倒します。腰で床を押すような感じです。力を入れた状態を10秒間保持します。これを10回行います。

  • ドローイン

下肢の柔軟性を獲得する方法は、ハムストリングス(太ももの後面の筋肉)のストレッチと大腿四頭筋(太ももの前面の筋肉)のストレッチがあります。

  • ハムストリングス(太ももの後面の筋肉)のストレッチ

片側の下肢は伸ばして、もう一方の下肢は曲げた状態で床に座ります。伸ばした方の下肢におへそがつくように体を前に倒していきます。そうすると、太ももの後面の筋肉が伸びてくると思います。その状態で15秒伸ばしてください。1日に3回程度。

  • 大腿四頭筋(太ももの前面の筋肉)のストレッチ

片側の下肢は伸ばして、もう一方の下肢は曲げた状態で床に座ります。伸ばした下肢の方へ体を後ろに倒していきます。下肢を伸ばしている方のお尻の横に肘をつけるようにします。そうすると、曲げている方の太ももの前面の肌肉が伸びてくると思います。その状態で15秒伸ばしてください。1日に3回程度。

 

腰椎分離症を治すには手術するしかないのでしょうか。その後、リハビリが必要になりますか。

腰椎分離症で手術をすることは比較的少ないです。前述したようにコルセットや理学療法が治療の主体となります。骨の癒合に関しては、腰椎分離症の発症早期に治療開始した場合は

骨はくっつく可能性が高いですが時間が経過したものは骨が再びつくことは期待できません。いずれの場合も基本的にリハビリが必須となります。

 

腰椎分離症でやってはいけないことについて教えてください。

急激なスポーツの再開や痛みを我慢してスポーツをやり続けることは避けた方がいいです。

痛みがよくなったり骨がくっついた後も急激にスポーツを再開する(特に腰をひねる動作)と骨が再び離開することがあり注意が必要です。

 

手術をせずにマッサージやコルセットなどで腰椎分離症を治す方法はありますか。

治療に関しては起こり始めの時期であれば骨はくっつく可能性が高く理学療法やコルセットで完治できる可能性があります。

腰椎分離症にはどういったコルセットがよいでしょうか?

コルセットには硬性のものと軟性のものがありますが、腰椎分離症の場合は基本的に硬性のものがいいと考えられています。特に骨癒合が見込める時期であれば、後方硬性タイプ・お腹側メッシュタイプがいいと考えています。

 

腰椎分離症の治療方法はありますか?

多くの痛みは手術をしなくても改善します。手術以外の治療方法としては下記の方法があります。

(1)安静。これまで負担のかかっていた動作をしないようにスポーツの中断や仕事の中断などをします。

(2)痛み止めNSAIDs

(3)理学療法。関節を柔らかくしたり固くなっているハムストリングをストレッチしたり腹筋や背筋を鍛えたりすることが含まれます。

(4)コルセットの装着。ある程度重症になった場合はコルセットを着用することが考えられます。特に急激に痛みが出てきた場合はコルセットの装着をすすめます。しかし、あまり長期化している人にコルセットはおすすめしません。

 

腰椎分離症で手術が必要となるのはどのような時でしょうか。

コルセットを装着しかつ原因となるスポーツを半年以上休止しているにも関わらず症状が続く場合は手術が推奨される場合があります。

 

腰椎分離症の手術にはどのような手術がありますか。

腸骨の自家骨移植を利用した腰椎固定手術が腰椎分離症の手術としてもっとも一般的です。これ以外にワイヤーやスクリューを用いた固定術が行われることもあります。

 

腰椎分離症は腰椎すべり症になってしますのでしょうか?

腰椎分離症は背骨の後方の安定性を損なわせてしまうため進行すると腰椎すべり症に移行してしまいます。分離症からすべり症への移行は16歳未満で生じることが多いとされています。16歳以降は移行する可能性は減っていくと考えられています。全員の人が移行するわけではなくどのような人が移行してどのような人が移行しないのかはまだ解明されていません。

 

(※1)Rossi F. Spondylolysis, spondylolisthesis and sports. J Sports Med Phys Fit. 1988;18:31740.

(※2)Saraste H. Long-term clinical and radiological follow-up of spondylolysis and spondylolisthesis. J Pediatr Orthop. 1987;7:6318.

(※3)Rachel G. Berger and Shevaun M. Doyle. Spondylolysis 2019 update. Curr Opin Pediatr 2019, 31:61–68

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