奥野祐次先生のコラム

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COLUMN.30

グロインペイン症候群へのカテーテル治療

サッカー選手や陸上競技の選手など、激しいトレーニングを続けている人には、脚(あし)の付け根に痛みが生じることがあります。

多くの場合は1,2か月の期間に改善されるのですが、中にはこの痛みが数か月以上続いてしまうことがあります。特に高いレベルでプレーしているスポーツ選手は、この痛みがなかなか治りにくいものになる傾向があります。

この脚の付け根に生じるこの病気を「グロインペイン症候群」と呼んでいます。

「グロイン(Groin)」とは「脚の付け根」を意味する英語です。

グロインペイン症候群は決して珍しい病気ではなく、以前であれば中田英寿選手や、現在で言えば長谷部選手など、サッカー日本代表のプレイヤーでもこの痛みに苦しんだ方はたくさんいます。
中田選手は現役引退の一つの要因にもなったという説もあり、現役中は数年以上にわたりこの痛みに悩まされたようです。

中田選手ともなれば当然日本あるいは世界で最高の治療を受けるはずですから、それでも痛みが治らない、ということは、有望で決定的な治療法が当時はなかった、ということになります。

 

さて、このグロインペインですが、MRI検査では異常が検出されることが多いです。
脚の付け根にある骨(恥骨)の周辺にいくつかの筋肉がくっつくのですが、どうもこのいくつかの筋肉の付着しているところに炎症が起きていることが指摘されています。

原因の部位はわかっていますが、なかなか決定的な治療法がなかったというのが、このグロインペインの難しいところです。

このサイトでは何度も登場してきますが、「治りにくい炎症」の場所には、必ず「ある物」が存在します。
それは、「炎症によって生じた異常な血管」です。

下の写真を見てください。

これは超音波(エコー)検査の写真です。左側は痛いほう、右側は痛くないほう

どちらも脚の付け根を観察しています。恥骨の周りです。

痛みがある側のエコーでは、オレンジや青、赤などの色がついている部分が目に入ります。
これはカラードップラシグナルと呼ばれるもので、生体内の血液の流れを見ています。

つまり痛いほうには血流が増えています。これは炎症が起きている部位に特徴的な所見です。
こうなったら、どうやってこの炎症を治せばいいのか?みなさんならわかるかもしれませんね。

そうです、この異常に増えてしまった血液の流れを一時的に遮断すること、カテーテルを用いて。
つまり運動器カテーテル治療が効果が期待できる病気なのです。

実際の治療時の写真を見てみましょう。

下にある3つの写真のうち、一番上は骨なども一緒に映っている画像、下の2枚は骨を消して(引き算して)血管だけを可視化した画像です。
「FH」というのはFemoral Headの略で、大腿骨頭という場所を指します。
「PS」というのは:Pubic symphysisの略で、恥骨結合の位置を示しています。
白い矢印が動脈の中に位置したカテーテルの先端を示しています。

2枚目の写真には、黒い矢印の部分があります。これが炎症が起きている部位で増えてしまった異常な血管です。
このような病的な血管は、生体の回復には役に立たないどころか、反対に血流を奪ってしまうため、組織の修復の邪魔になります。

この異常な血管に対して、一時的に血液の流れを滞るようにしてやるのが、運動器カテーテル治療です。一時的というのは「数時間以内」です。
このような短い時間においては、正常な血管は再開通が起きますが、炎症でできている異常な血管は脆弱(ぜいじゃく)であるため、このような刺激に弱く、異常な血管が大幅に減少します。

治療後の血管撮影の写真が3枚目のものです。
黒矢印で示していた部分が減少しているのがわかります。

この方はトップレベルのスポーツ選手で、半年以上グロインペイン症候群に悩まされてきましたが、運動器カテーテル治療を受けたあと2週間で練習を再開し、1か月半後には痛みなく試合に復帰しています。

このように、今までは難しいとされてきたグロインペイン症候群のスポーツ選手も、負担少なく競技に復帰できる可能性が出てきているのです!

以上、グロインペイン症候群について、でした!

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