奥野祐次先生のコラム
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PRP療法のメカニズム
ヤンキースの「マー君」こと田中将大投手が、右肘の内側側副靭帯部分断裂の診断で故障者リスト入りしてしまいました。
非常にショックな出来事です。 でも彼ならまた復帰して素晴らしいピッチングを見せてくれるでしょう!
ところで、報道によるとマー君は手術はする必要はなく、代わりにPRP療法というのを受けるとのことです。(カテーテル治療がもっとメジャーであれば、カテーテル治療を受ける方が良いと私は思っていますが・・・)
さて、みなさんはこのPRP療法をご存知でしょうか?
「PRP」とは
Platelet(血小板) Rich(豊富な) Plasma(血清)の略です
血小板とは聞いたことがある人も多いと思いますが、血液の中に含まれる、主に出血した時に血液を止めるためにはたらくものです。
血清とは、血液の中の、赤血球や白血球を除いた液体の部分のことです
PRPは血小板を豊富に含んだ血液の液体部分、ということになります。
つまりPRPとは血液のなかの一部分であり、「PRP療法」とは、血液の一部分を注射で注入することです。
上のイラストを見ると、PRPというのは黄色い液体の部分であることがわかります。
さて、このPRP療法は痛みに効果があるとされています。
確かに臨床的に見てみても、痛みに効果を発揮しているようです。
そのメカニズムについては諸説あり、いまだに意見が一致していないのが現状です。
「不要な血管が痛みの原因である」という私の立場と、そして今までの血管についての研究から見てみると、このPRP療法がなぜ効くのかを一言でいうと
「一時的に血管を増やし、その後に訪れる血管退縮効果を期待した治療法」
といえます。
どういうことかというと
PRPは血小板を豊富に含んだ液体です。この血小板にはPDGFという有名な成分を多く含んでいます。
このPDGFは血管を増やすことで有名です。「血管よ!新しく伸びなさい!」という指令を下します。
PRPを注射すると、いったんはこのPDGFによって血管が新しく作られます。
そして、そのあと1,2週間すると何が起きるかというと、今度は反対に「血管を減らそう」という動きが始まります。人間の体の自然な働きとして、「血管が増えた後には減らそう」となるようにプログラムされています。
私が血管の研究をしている時も、このような働きがあることを目の当たりにしてきました。
このため、おそらくはPRP注射後1,2週間後から細かい血管が退縮し始めているはずです。
この退縮の時期に伴って痛みが改善されることが期待されます。
PRP注射を受けると、患者さんははじめはすごく痛がるようです。
そしてその痛みが軽くなってくると、そのまま痛みが改善していきます。
まさに血管がいったんは新しくできて痛みが強くなり、そしてそのあとの血管退縮効果によって痛みが減っているのではないかと思われます。
ですからこの治療法は、「雨降って地固まる」的な治療法なのです。
このようにしてみると、PRPも血管を減らすことで痛みを改善している、ということが考えられます。
あくまで私の意見ですが。