奥野祐次先生のコラム

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COLUMN.77

クーリーフとカテーテル治療の違い

こんにちは。痛みの専門医、オクノクリニックの奥野祐次です。

今回は、変形性膝関節症などの長引く膝の痛みに対する新しい治療の選択肢、「Coolief(クーリーフ)」について解説します。

これまで私のクリニックでは、痛みの根本原因である「モヤモヤ血管」をターゲットにした運動器カテーテル治療を中心に情報を発信してきましたが、実はこの「クーリーフ」も、膝の痛みに苦しむ患者さんにとって非常に有効な武器となり得る治療法です。

今回は、クーリーフがどのような仕組みで痛みを止めるのか、そして私が専門としているカテーテル治療と何が違うのか、その使い分けについてお話しします。

 

1.Coolief(クーリーフ)とは何か?

Coolief(クーリーフ)は、「冷却式高周波(ラジオ波)焼灼術」と呼ばれる治療法です(正確には治療で用いられる機械の商品名です)。2023年6月から日本でも変形性膝関節症に対して健康保険が適用されるようになり、注目を集めています。
簡単に言うと、「痛みを伝えている神経の働きを、熱の力で一時的に止める」治療です。

従来のラジオ波治療との違い:「冷やす」から「広く焼ける」

これまでも「ラジオ波」を使って神経を焼く治療はありましたが、従来のものは針の先端が高温(80〜90℃)になりすぎるため、周囲の組織がすぐに焦げてしまい、熱が広範囲に伝わらないという弱点がありました。
Cooliefの最大の特徴は、針の内部に水を循環させて先端を冷却(60℃程度にキープ)しながら高周波を流す点にあります。 先端を冷やすことで、針の周りが焦げ付くのを防ぎながら、高周波エネルギーをじわじわと遠くまで届けることができます。その結果、従来よりも広範囲で球状(ボール状)の治療範囲を作り出すことが可能になりました。
膝の痛みを感じる神経(膝神経)は、人によって走行場所が微妙に異なります。Cooliefはこの広い治療範囲のおかげで、複雑な場所にある神経もしっかりと捕らえ、痛みの信号をブロックすることができるのです。

 

2. 「カテーテル治療」と「クーリーフ」の決定的な違い

私が開発した「運動器カテーテル治療」と、今回紹介している「クーリーフ」。どちらも膝の痛みに有効ですが、アプローチするターゲットが全く異なります。

① カテーテル治療=「火元」を消す治療
カテーテル治療は、痛みの発生源となっている「モヤモヤ血管(異常に増えた血管)」をターゲットにします。慢性的な痛みがある場所には、炎症に伴って不要な血管と神経が増殖しています。カテーテル治療は、この異常な血管を減らすことで炎症そのものを沈静化させ、組織を正常な状態に戻そうとする治療です。いわば、「火事の火元に水をかけて消火する」ような根本治療に近いアプローチと言えます。

② クーリーフ=「火災報知器の配線」を切る治療
一方、クーリーフは、「痛みを感じとる感覚神経」をターゲットにします。膝関節にある3つの主要な感覚神経(上内側、下内側、上外側膝神経)に熱を加え、脳へ痛みの信号が送られないように遮断します。これは、火事は燃え続けているかもしれないけれど、「うるさい火災報知器の配線を一時的に切って、サイレン(痛み)を止める」アプローチです。
「配線を切る」と聞くと怖く感じるかもしれませんが、運動に関わる神経は温存されるため、歩いたり動いたりする機能には影響しません。また、焼灼された神経は時間をかけて再生するため、効果の持続期間は約1年〜2年程度とされています。

 

3. どのような人にクーリーフが向いているか?

カテーテル治療は組織の環境改善を目指す素晴らしい治療ですが、すべての患者さんの痛みをゼロにできるわけではありません。また、クーリーフにも得意・不得意があります。
クーリーフは以下のような状況の患者さんに適した選択肢となります。

1. 手術(人工関節)はしたくない、またはできない方 高齢や持病のリスクで手術ができない、あるいは仕事や家庭の事情で長期のダウンタイムが取れない方に適しています。クーリーフは日帰りでの治療が可能です。

2. ヒアルロン酸注射などの保存療法で効果がない方 一般的な保存療法を半年以上続けても痛みが改善しない場合、次のステップとして検討されます。

3. カテーテル治療などの除痛効果が不十分だった場合 炎症を抑える治療をしても、どうしても神経の過敏さが残ってしまうケースがあります。そうした場合、神経伝達そのものをブロックするクーリーフが有効な場合があります。

 

4. 治療の流れ:まずは「テスト」から

クーリーフの治療を受ける前には、必ず「診断的ブロック(テストブロック)」を行います。 ターゲットとなる神経に少量の麻酔薬を打ち、「これで痛みが半分以上減るか?」を確認します。このテストで痛みが消えることが確認できて初めて、クーリーフの本番治療(焼灼)へと進みます。これにより、「治療したけど効かなかった」というミスマッチを防ぐことができます。

 

まとめ

膝の治療は「保存療法(薬・注射)」か「手術(人工関節)」の二択しかないと思われがちですが、今はその中間に「カテーテル治療」や「クーリーフ」といった、低侵襲な選択肢が増えています。
「モヤモヤ血管」を治して炎症を沈めるのか、神経の伝達をブロックして痛みを取るのか。患者さんの膝の状態やライフスタイルに合わせて、最適な治療法は異なります。 「もう手術しかない」と諦める前に、こうした新しい技術があることをぜひ知っておいてください。

当クリニックではアキュリアンという機種を使います。

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