奥野祐次先生のコラム

COLUMN
COLUMN.74

【前編】膝のアンチエイジング ― 健康寿命を決める「膝ケア」の重要性

こんにちは。痛みの専門医オクノクリニックの奥野祐次です。今回は「膝のアンチエイジング」についてお話ししたいと思います。

 

若さは「見た目」だけじゃない

 

「アンチエイジング」と聞くと、多くの方は肌や美容をイメージするかもしれません。
シワを減らしたり、シミをなくして肌をきれいにしたり――そうした外見の若々しさも大切ですが、
本当の意味で“若く見える人”というのは、姿勢がよく、しっかり歩ける人ではないでしょうか。

70代、80代でも背筋が伸びて軽快に歩いている方を見ると、誰もが「若々しい」と感じます。つまり、健康でいられるためには、肌だけでなく膝や腰などの身体を動かす機能が保たれていることがとても重要なのです。

 

膝が悪くなると、健康寿命も短くなる

 

年齢を重ねると、心臓病、糖尿病、認知症、がん、脳梗塞など、さまざまな病気のリスクが高まります。
これらの病気の予防や改善に欠かせないのが「運動」です。

運動といっても、激しいスポーツではありません。
軽いウォーキングや、負担の少ないスクワットなどの運動が、病気を防ぐ第一歩になります。実際、歩く速度が速い人ほど、病気になりにくく、仕事のパフォーマンスも高いという研究結果もあります。

しかし、その「運動」を支えるのが、まさに膝や腰、股関節などの「運動器」とよばれる関節や骨、筋肉なのです。これらの部位に痛みがあったり変形したりしてスムーズに動かなくなると、運動ができず、結果として全身の健康を損なってしまいます。

 

進行してからでは遅い

 

変形性膝関節症という病気をご存じでしょうか。膝の軟骨がすり減り、膝が変形してO脚になったり、痛みで歩くのがつらくなったりする病気です。
高齢の方が杖をついたり、歩行補助器を押しながら歩いている姿を見かけたことがあると思います。これらの状態の多くは、膝や股関節の変形が原因です。

整形外科では、重症化した場合に人工関節の手術などを行います。もちろん大切な治療ですが、実はその前の「予防」が本当に重要です。手術が必要な段階になるはるかに手前で、有効な手を打って、変形が進まないようにすることが理想といえます。

ところが現実には、病院では変形の進行を遅らせるための提案が行われることはほとんどありません。病院にいっても「今はまだそこまで変形していませんね」「湿布で様子を見ましょう」と言われて終わってしまうケースが多いのです。整形外科の先生方は手術などの急を要する症例に忙しく、「どうすれば膝を良い状態に保てるか」「変形を進めないために何をすべきか」といった予防の部分まで十分に対応できないのが現状です。

 

膝のアンチエイジングとは?

 

30代や40代、あるいは50代のうちから「良い膝の状態を保つこと」。
それが「膝のアンチエイジング」です。

膝の変形は、数年〜数十年という長い時間をかけて少しずつ進行します。つまり、肌の老化と同じように「日々のケア」で進行を止めることができるのです。

そして、膝を守ることは単に膝の問題にとどまりません。膝が動かなくなると、運動量が落ちます。運動量が落ちると体全体の血流や代謝が落ち、慢性的な炎症が起こりやすくなり、糖尿病や認知症などの全身疾患のリスクにもつながります。

逆に、膝を良い状態に保ち、日常的に体を動かすことは、全身のアンチエイジングそのものなのです。

 

動ける体が「若さ」をつくる

 

糖尿病になっても、足腰がしっかりしていれば運動療法が可能です。高血圧でも、日々の適度な有酸素運動が病気の進行を食い止めます。

そのベースとなるのが、「良い状態の膝」です。
膝が痛い、動かない――それだけで生活の質は大きく下がります。だからこそ、早い段階から膝を守ることが、結果的に「健康寿命」を延ばす最善の方法なのです。

では、どのようにしたらあなたの膝を「良い状態に保つこと」ができるのでしょうか?
次の【後編】の記事にまとめたいと思います。

ページ上部へ
電話初診ご予約
受付10:00〜17:00
(土日祝除く)
メール事前相談
お問い合わせ
WEB予約はこちら