奥野祐次先生のコラム

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COLUMN.73

五十肩の最新治療 サイレントマニピュレーションと運動器カテーテル治療の違い

こんにちは。痛みの専門医である奥野祐次です。
今回は「五十肩(凍結肩)」に対する最新治療について解説をしたいと思います。

代表的な治療として サイレントマニピュレーションという治療と、私が開発した、「運動器カテーテル治療」の2つがあります。
今回のコラムではそれぞれの特徴と違いを、患者さん向けにわかりやすくご紹介します。

 

五十肩(凍結肩)とは?

五十肩は、肩の関節を包む「関節包(肩の関節を包んでいる袋)」が厚く硬くなり、炎症と強い痛みを伴う病気です。

軽症の方
自然に3か月〜1年ほどで回復する場合もあります。夜間の強い痛みがなく、肩もある程度動かせるのが特徴です。

重症の方
肩がほとんど上げられず、後ろに手を回すこともできないなど、日常生活に大きな支障をきたします。これは、肩の関節を包んでいる袋(関節包)が分厚くなり、そこに炎症が起きて神経も一緒に増えてしまうことで強い痛みが出ている状態です。その関節包が硬くなるため、肩の動きが制限されます。治療せずにいると治るまでに2〜3年かかることもあります。

この重症の方に対して、より早く改善を目指す治療として「サイレントマニピュレーション」と「運動器カテーテル治療」があります。

 

サイレントマニピュレーションとは?

サイレントマニピュレーションは、肩関節の痛みや動きを支配する神経に局所麻酔をかけ、一時的に感覚や力をなくした状態(麻痺させた状態)にて、肩関節に強い外力を加えて、肩の関節包を破断させる(ちぎるように破る)方法です。麻酔によって肩の痛みを感じない状態にして、その間に関節を様々な方向に動かして裂け目を作る治療になります。

肩の関節包(関節を包んでいる袋)に裂け目を入れることで、麻酔が切れた後には肩が上がるようになり、動かせる範囲(可動域)が広がります。

メリット
短期間で肩の可動域が改善し、仕事などで早急に肩を動かせる必要がある方(大工さんや天井などの高い位置の現場作業の方など)に有効です。

デメリット
比較的強い外力を関節に加えるため、組織に小さな損傷が生じます。これが「古傷」のようなもの(専門的には瘢痕と呼びます)が残ることがあります。そのため、下記のリスクがあります。

– 可動域が五十肩になる前の完璧な状態には戻らない可能性がある

– 強い痛みはとれるが、1〜2割程度の弱い痛みが長期に残る可能性がある

– 糖尿病の方はすぐに関節包が硬くなりほとんど効果がでないことがある

– 女性の方は強い外力を加えられることで損傷が生じ、逆に強い痛みが生じる場合がある。また、ひどい場合は上腕骨の骨折も起こりえます。

 

運動器カテーテル治療とは?

一方で、カテーテル治療は関節包を無理やり裂くことはせず、五十肩の根本原因である炎症にアプローチする治療です。

五十肩では「モヤモヤ血管」と呼ばれる異常な血管が関節包にでき、そこからフィブリンと呼ばれる線維の成分が血管の外に漏れ出すことで関節の袋が厚くなり、神経も一緒にできるため痛みも生じます。
カテーテル治療では、この異常な血管「モヤモヤ血管」に薬をピンポイントに投与し減らすことで治療します。

治る順番
1. 治療後すぐに夜間痛が改善する。動作時のズキンとした痛みも1か月後くらいを目安に改善していく
2. 治療から1―2か月後には炎症が落ち着き、肩の関節を包む袋(関節包)にたまっていた線維成分(フィブリンなど)が洗い流され少しずつ柔らかさが回復し可動域が広がる
3. 治療から3か月から半年ほどで元のように関節包が修復され、肩が五十肩になる前のように自由に動く状態に戻る

メリット
身体を切ったり組織を傷つけないため、治った後は「五十肩で痛かった肩がどっちだったか忘れる」ほど自然な状態まで回復する方が多いのが特徴です。女性やゴルフやテニスなどスポーツを長く楽しみたい方にも向いています。

 

まとめ

サイレントマニピュレーション
即効性があり、早く肩を上げたい方に適した治療。ただし一部に再発や痛みの残存リスクあり。やせ型の女性の方にはあまりお勧めしません。

カテーテル治療
根本から改善し、関節を傷つけず自然に回復できる治療。多くの方にとって望ましい方法。

どちらも良い治療ですが、患者さんの生活スタイルや希望に合わせて選択することが大切です。「五十肩で手が上がらない」「夜が眠れないほど肩が痛い」などでお困りの方は、ぜひご相談ください。がまんせず早めに適切な治療を受けることで、痛みを意識する必要がない快適な日常を取り戻すことができます。

 

五十肩(凍結肩)のカテーテル治療実績:2,761件(2025年8月現在)

 

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