奥野祐次先生のコラム
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特集 ひざの痛み その2 滑膜の痛み
さて、前回の「特集 その1」ではレントゲンでは異常がないけど痛い、という人を紹介しました。そう、Bさんのことですね。Bさんのように、レントゲンで異常がないのに、ひざが痛い!という人は、実はとても多いです。
前回で説明したように、レントゲンで痛みは評価できませんから、それも当然です。では、このBさん、一体どこが悪いのでしょう?
Bさんは膝の内側の前方の位置に痛みがありました(写真)
実は、膝の痛みを引き起こしている場所のうち、トップに挙げられるのが「滑膜」です。Bさんもこの「滑膜」に異常がありました。次の写真を見てください。
これは超音波、いわゆる「エコー」と呼ばれる診断装置で撮影した、Bさんの膝の内側です。写真の左半分が痛い方のひざ、右半分は痛くない方(反対側)のひざの写真です。痛みのある方の写真では、矢印で示した黒い層があるのがわかります。この黒い層が滑膜です。普通であればもっと薄いはずの滑膜が腫れて分厚くなっているのです。反対の膝には、この黒い層が見当たらないのがわかると思います。
レントゲンでは正常でも、エコーで見るとこれほど違うのです。さきほど、滑膜の痛みと言いましたが、もっと正確に言うと滑膜に増えている血管が原因となっている痛みです。滑膜は血管が増えやすいため、痛みの原因になりやすいのです。
Bさんは半年近く痛みがとれず、困って来院されました。ヒアルロン酸の関節内への注射や、リハビリをしても改善していないと。
私の外来で、エコーを使って膝の痛みの原因となっている場所を見せて、そして治療を計画しました。注射の治療です。少量のステロイドを、この黒く分厚くなった滑膜の中に注射してあげます。ステロイドには血管を退縮させる効果があります。強力な血管阻害物質です。この患者さんは2回の注射で良くなってしまいました。もしも注射で効かない場合は、運動器カテーテル治療です。実際は、ほとんどの人が注射で満足いくレベルにまで改善します。