奥野祐次先生のコラム

COLUMN
COLUMN.60

特集 ひざの痛み その3 脂肪体の痛み

ひざの痛みが生じる現場として、滑膜がトップに挙げられることを前回の特集その2で紹介しました。
この滑膜はレントゲンでは映らず、結構見逃されていることが多いこともお伝えしました。

次に、滑膜に次いで痛みの現場となる「脂肪体」を紹介します。この「脂肪体」もレントゲンでは映りません。脂肪体とは、脂肪のかたまりのことです。Fat padとも呼んでいます。太っているかとか痩せているかとは、関係ありません。この脂肪体は全員にあります。ちょうどひざのお皿のすぐ下にある脂肪体を「膝蓋下脂肪体(しつがいかしぼうたい)」と呼んでいます。下のイラストの「1」で示した場所です。

この脂肪体の役割は、長らくわかっていませんでした。ですが最近になって、どうもこの脂肪体のなかにはたくさんの神経線維が走っていることがわかってきました。その神経線維を顕微鏡で見ると、小さな血管の周りにあることも知られています。ちょうど運動器カテーテル治療が注目している「血管とそれと伴走する神経」という関係です(「痛みのメカニズム」を見てみてください)そしてこの脂肪体に炎症が生じると、神経線維が多いだけに、非常に強い痛みになります。夜寝てる時も痛い人もいますし、階段を降りるときや、歩くときに痛いという人も多いです。

上記の写真を見てください。左が正常な人のMRIの写真。右が、ひざの痛みの患者さんのMRI写真です。赤い矢印で示した部分が、右では黒くなってしまっているのが分かります。この患者さんは正座ができなくなり痛みが治らないため受診されました。1年ほど痛みが続いました。レントゲン写真も正常です。関節注射でも一向に良くならないということで、私のところでカテーテル治療をしました。一番下の写真がカテーテル治療のときの写真です。黒っぽく染まっているところがあるのがわかると思います。この方は1年以上前にこの部分を治療して、今も正座も出来ています。血管にアプローチをすることで、レントゲンでは評価できない痛みを改善させることができるのです。運動器カテーテル治療(血管内治療)です。

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