奥野祐次先生のコラム

COLUMN
COLUMN.56

テニス肘の痛み

テニス肘の症状がなかなか治らない方は、ぜひこのコラムを読んでみてください。

肘が痛くてペットボトルの蓋を開けられない、重いものを持つと肘の外側に痛みが走る。そのような症状は「テニス肘」に特徴的なものです。
テニス肘は「テニス」という単語が入っていますが、必ずしもテニスをしている人だけが罹る病気ではありません。ゴルフをしている人もなりますし、重いものを運ぶ仕事をしている人も罹ります。
また、子供や孫ができて赤ん坊を抱っこしていて発症する人もいます。さらには、そのような特別な負担をかけていないはずなのに発症する人もいます。

つまり必ずしも酷使すると発症するわけではないのです。
そして年齢が要因のひとつになっています。40歳以降で発症する人がぐんと増えます。もちろんそれより若くて罹る人もいますが、そのような方は珍しいです。

テニス肘を診断することは容易です。
肘の外側の骨のでっぱり(ここを「上腕骨外側上顆」と呼びます)を押すと痛みが出ることと、簡単なテストをいくつか行えば診断できます。
診断は簡単ですが、治すことは時として難しい、というのがテニス肘です。
一般的な整形外科(このような言い方は失礼かもしれませんが)に診てもらうと、湿布や痛み止め、あるいはステロイドの注射などを受けます(ステロイドの注射は多用することはお勧めしません)。
また、理学療法やテニス肘用のバンド(前腕をぐるっと一周まくもの)で様子をみるように言われることがほとんどでしょう。
しかし、これで治る人もいますが、症状が強いものはこれらの処置では良くなりません。

その理由の一つは、意外かもしれませんが・・・
テニス肘は、なぜ痛いのか?について、ほとんどのドクターや治療家が理解していないからです。

テニス肘の痛みの原因は諸説あり、筋肉が硬いとか使い方が悪い、肘のスジが切れている、など様々推測されています。
しかしこれらはどれも大きく矛盾を含んでいます。筋肉が硬くても痛くない人もたくさんいますし、使い方が悪くても痛くない人もたくさんいます。またスジが切れていても痛くない人もほとんどなのです。

ではなぜ痛いのか?

先人たちの研究結果にヒントがあります。
テニス肘で痛みを出していると思われている場所(専門的には「前腕伸筋腱付着部」と呼びます)を顕微鏡で多くの研究者が観察しています。
彼らの見解は一致していて、Angiofibrotic tissue(日本語に直すと「血管線維組織」)であるとされています。
Angiofibroticとは血管が増えている、そして繊維芽細胞という細胞も増えていることを示しています。線維性の細胞は、もともとあるものではあります。

つまり血管が増えていることが痛みと関係していそうなのです。

続いて、下の何枚かの写真を見てください。これは血管撮影といって、血管が黒く見えるようにして写真をとったものです。
「正常の肘」と書かれている写真と比べると「テニス肘」の方では、矢印に示した部位にうっすら、モヤモヤっとした血管が増えているのがわかると思います。

このように見てみると一目して「テニス肘では血管が増えている」というのが理解できると思います。
実際にほかの研究者も同じことを報告しています。Zeisigという研究者はテニス肘で痛い人と健常者とを同じ人数つれてきて、肘の痛い場所の「血流の変化」をエコーという機械を使って観察しました。
すると、テニス肘の人22名中21名で痛い場所に血流信号が増加していたのに対し、健常者では22人中で血流信号が確認されたのは2人だけでした。

このようなことからも、テニス肘で痛みに苦しんでいる人は「血管が増えている」ことがわかります。
ではなぜ血管が増えると痛みが出るのでしょうか???

答えは下の図にあります。

これは顕微鏡の写真です。先ほどと同じようにテニス肘で痛い部位を調べています。良く見ると血管とかいているところを取り巻くように、うねうねとした白いものがたくさん存在するのがわかると思います。
この「うねうねしたもの」は神経線維です。細かな神経線維が血管の周りに増えてしまっています。
実は人間の身体は、血管と神経が対になって増えるようにできています。つまり血管が増えると、神経線維も一緒になって増えるのです。
そしてこの神経線維は専門的には「サブスタンスP」とか「CGRP」という物質を表面に出していることが知られています。この言葉自体は記憶する必要はありませんが、重要なことはこのような物質を出している神経線維は「痛みに関与してる」可能性が高いということです。

つまり血管が増えてしまい、そして痛みに関係する神経線維も増えてしまっている。このためにテニス肘は痛むのです。
ではどうするのが良いか?というと、下の写真のように増えてしまった血管を減らして元の正常な状態に戻してあげることが重要です。
このように元の状態に戻してあげる治療が、運動器カテーテル治療です。
運動器カテーテル治療についてより詳しく知りたい方は、このホームページのトップをごらんください。

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