奥野祐次先生のコラム

COLUMN
COLUMN.71

首の痛みの原因と症状・診断方法について

首の痛みの原因はどんなものがありますか?

首の痛みは、成人の10~20%に発症し、加齢にともなって発症率は上昇します。女性で多くみられます。原因によって数日から数年続くことがあります。一般的な原因としては、肉体的な負担、悪い姿勢、むち打ちなどの外傷、精神的なストレス、変形性関節症、脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニアなどがあげられます。

以下に原因を分類しました。

<身体的変化>

加齢に関連した身体的変化
加齢に伴い、頚椎の一部や椎間板が衰えて変性したりすることで、痛みを引き起こすことがあります。
(変形性関節症、脊柱菅狭窄症、椎間板ヘルニアなど)

肉体的な負担
反復運動や激しい運動で首の筋肉を酷使したり、猫背になるなど姿勢が悪い場合。このような場合には、首の重さを支える筋肉や背骨に負担がかかるため、首の筋肉が緊張し、痛みを引き起こすことがあります。
(パソコンやスマートフォンを長時間使う、首の寝違えなど)

ケガ
外傷により、脊髄の筋肉、靭帯、椎間板、関節、神経などが損傷し、首の痛みにつながることがあります。
(自動車の追突事故による、むち打ち症など)

<ストレス>

精神的なストレス
ストレスや興奮することで、首の筋肉が固くなり、首の痛みやコリが出ることがあります。首が痛くなるまで気づかないケースが多いようです。

このほか、あまり一般的ではないものの、重篤な原因として、椎骨動脈解離(ついこつどうみゃくかいり)、髄膜炎、脊髄の腫瘍または感染症、心筋梗塞、狭心症、関節リウマチ、骨粗鬆症、線維筋痛症、膿瘍、遺伝性疾患などが原因で首の痛みが出る場合もあります。

 

 

首の痛みに伴う他の症状はどんなものがありますか?

首の痛みには、首がこる症状(かたい、動かない)を感じる場合や、刺されるような痛み、焼け付くような痛みが生じることがあります。医師の触診などで触れられると痛みを感じる場合や、首を動かしたり、ひねったりした場合に痛みが悪化したりすることもあります。
また、首の痛みの出方には、①主に首に痛みが出る場合と、②首の痛みが肩や腕にかけて生じる痛みがあります。痛みの症状が続く期間も、急性(数日から6週間程度)と慢性(3ヵ月以上)の場合があります。

首の痛みには、下記のような症状を伴うこともあります。

・頭痛

・首、肩、背中上部のこわばり

・首を回したり、ひねったりすることができない

・肩や腕に針で刺されるようなピリピリした痛みがある

 

どういう時に病院に行けばいいですか?

以下のような症状がみられた場合は、すぐに病院で医師の診察を受けるようにしましょう。以下の症状がなく、痛み止めの薬を飲んでも良くならない場合は、1日以内に受診しましょう。

<医師の診察が必要な症状>

・自動車事故や転倒後の首の痛み

・頭痛、しびれ、脱力感、ピリピリした感じ

・めまい、吐き気、嘔吐

・腕、肩、脚のしびれ、感覚が鈍い

・腕や脚の筋力が弱くなる

・運動中に首が痛い(痛みの悪化)

・悪寒、発熱

・ものを飲み込みにくい(飲み込むときの痛み)

・寝汗や、突然の発汗

・息切れ

・腕や顎の痛み

・放っておくと眠ってしまう(嗜眠(しみん)[しみん])

・意識や思考が混乱して、情報を正常に処理できない(錯乱)

・膀胱、腸の機能障害

・数日間たっても改善しない

 

 

病院ではどういう検査をしますか?

問診・身体検査
医師は、過去の首のケガや、首への負担がかかったかどうか、痛みの状況(いつから、どこの痛みが、どのくらい持続し、どの程度痛むのか)について問診します。また、首の可動域を確認し、首の筋肉に圧痛やこわばりがないかどうかを調べます。

画像検査
そのほか、重大な傷害が疑われる場合や、激しい痛みが改善されない場合、以下のような首の画像検査を実施する場合があります。

    • X線検査

骨折や関節炎など、骨や軟部組織の障害の確認

    • 磁気共鳴画像法(MRI)検査

脊髄、神経、骨髄、軟部組織(椎間板や神経など)の障害の確認
椎間板のずれ、感染の兆候や、嚢胞や腫瘍など、首の痛みの原因となりうる腫瘤はないかなどの確認

    • コンピュータ断層撮影(CT)

骨棘や骨の劣化の兆候を確認

    • 電気生理学的検査

神経伝導検査、筋電図検査、脊髄造影検査の実施

上記のほか、血液検査や尿検査で筋骨格系の損傷以外の首の痛みの原因(感染症、リウマチ、癌など)を特定することができます。

 

 

どうやって治療しますか?

痛みの原因が、ねんざや筋肉のけいれんなど、筋骨格系の損傷や炎症の場合は、以下のような痛み止めの薬を飲むことで、症状が治ることがほとんどです。

<痛み止めの薬>
非ステロイド系抗炎症薬[NSAID](イブプロフェン、ナプロキセンナトリウムなど)
アセトアミノフェン

医療機関では、首の筋肉の回復を助けるため、筋弛緩作用のある薬を処方される場合や、下記のような治療を受ける場合もあります。

・理学療法
ストレッチ、筋力強化運動、牽引(トラクション)

・ブロック注射
神経根の近くに注射することで、炎症を抑制して痛みをやわらげます。

・鎮痛薬
その他:ネックカラー(頚椎カラー)の装着、鍼治療、マッサージ、カイロプラクティック、オステオパシーなど

・手術
神経根や脊髄の圧迫を緩和するために手術が選択されることもあります。一般的には、椎間板切除術や、椎骨同士を固定する手術(頚椎固定術、脊椎固定術)が実施されます。

・首の痛みの最新治療、カテーテル治療
最近になって、慢性的な首の痛みの部位には、異常な血管が増えてしまい、それらが神経と一緒に増えることで、治りにくい痛みの原因になることがわかっています。この痛みの原因となる異常な血管を減らす、カテーテル治療という最新治療が開発されています。
興味のある方は、下記の治療実例も参考にしてください。

【治療実例】はこちらから⇒
5年間苦しんだ慢性の肩こり、首の痛み

 

 

自分でできるセルフケア方法は何がありますか

痛み止めの薬を飲む以外で、自宅でできるケアには、次のようなものがあります。

寒冷療法・温熱療法
ケガをして最初の数日間は、数時間おきに保冷剤や氷などを当てて冷やすことで、炎症と腫れが軽減されます。その後は、首の痛みのある部位を温めることで、筋肉が緩み、血流が促進されます。温め方には、熱いシャワーを浴びるほか、ホットタオルや温湿布を数時間おきに15分間、首の痛みのある部位に当てる、などの方法があります。

運動を休む
スポーツや、重い荷物を持つなど、症状を悪化させる運動は、症状がやわらぐまで、数日間お休みしましょう。運動を再開する場合も、ゆっくりと行ってください。

首・背中のストレッチ
首まわりの筋肉が緊張している状態では、痛みが出やすいので筋肉を柔らかくするようにストレッチを行います。
また、首まわりの筋肉が緊張した状態になるのは、背中の筋肉や背骨の動きなどからも影響を受けることが多いです。そのため、首まわりの筋肉のストレッチとあわせて背中の筋肉を柔らかくするストレッチも行います。

 

①首のストレッチ

椅子に座ります。


あごを引くようにゆっくりと下を向きます。



両手を頭の後ろで組み、頭に乗せます。この時、手に力を入れて頭を押さえないようにしてください。手を乗せておくだけで十分です。


悪い例  背中が丸くならないようにします。


悪い例  あごが前に出ないようにします。

 

 

②背中のストレッチ

椅子に座り、腕を伸ばして両手を組みます。


両手は前の方向に伸ばしながら、背中は丸めるようにします。この時、あごを引いておへそを覗き込むようにします。


悪い例  肩が上がらないようにします。


背中が後ろに倒れないようにします。

このほか、医師の指導にもとづき、首の運動を行う場合もあります(首に重度の傷や神経の圧迫がある場合、運動は控えてください)。

興味のある方は、下記の治療実例も参考にしてください。

【治療実例】はこちらから⇒
5年間苦しんだ慢性の肩こり、首の痛み

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