奥野祐次先生のコラム

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保護者の方向け 新型コロナウイルスについてこれまでに分かっていること まとめ

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保護者の方向け 新型コロナウイルスについてこれまでに分かっていること

 

2020年3月7日 文責 オクノクリニック 奥野祐次

①    新型コロナウイルスはインフルエンザよりも危険か?
→インフルエンザよりは明らかに危険性が高いと言わざるを得ないです。(特に成人において)

 

メディアなどで、「インフルエンザと危険性は変わらない」とか「恐れないでいい」などと発言している人がいるかもしれませんが、これまでの情報から、明らかに危険性は高いと言わざるを得ないです。

 

死亡率が高いということもありますが、コロナによる肺炎に注意が必要です。
感染すると入院が必要なほどの比較的重い肺炎に陥る可能性が1-2割とされており、日本国内でも若い人も含めてすでに重篤な肺炎を起こしています。

 

また、いったん検査で陰性になっても、退院してから再度陽性になる人が14%との広東省からの報告が正しいとすると、「いつになったら自宅待機を解除していいのか」が不明という点も、このウイルスの社会的な影響が今後大きくなる可能性がある点です。

 

上記のことから、コロナウイルスは「大したことない」と考えている人もいるかもしれませんが、一度感染したときの影響は決して小さいとは言えません。効果的な薬もあり、社会復帰の同意がきちんとできているインフルエンザとは全く別のものとしてとらえることが現在は適切だと思われます。

 

 

②感染を防ぐには?

ウイルスの気道感染には、上気道感染(鼻やのどの感染)と下気道感染(肺での感染)の二つがあります。

 

上気道感染では、鼻の粘膜やのどからウイルスがたくさん検出されます。

 

私たちに馴染みのあるインフルエンザウイルスは上気道感染して高熱がでます。そして容易に多くの人に伝搬します。感染者が満員電車にひとたび乗れば、少なくとも数名は感染する可能性が高く、またオフィスで勤務すると同僚が感染したりすることはざらです。インフルエンザの感染は多い年で年間に1500万人から2000万人です(2018年の日本国内のデータ)。

 

もしも新型コロナウイルスが、インフルエンザウイルスと同様に広がるとしたら、東京や大阪で今とは比較にならないくらい爆発的に増えたはずです。そしてとっくに万単位の感染が起きていてもおかしくありません。

 

ところが、現実ではそうなっていません。

 

これまでに新型コロナウイルスの感染が判明した人が、有症状の時期に電車や新幹線で移動したり、オフィスで勤務したりしていますが、そこから大規模な感染拡大が起きた形跡がありません。

 

では全く感染しないかというとそうではなく、特殊な環境では、確実に広まることを示しています。非常に局所的な感染が生じており、この2面性が謎の一つとなっています。

 

これまでの報道された内容や傾向からは、
「閉鎖された屋内の空間で、多くの人が、大きな声を出したり、運動をしたりして肺活量の高い行動をたくさんすると、大規模な感染拡大を起こす可能性がある」と強く考えられます。

 

上気道感染(鼻やのど)か下気道感染(肺)かで言うと、今回のコロナウイルスでは「下気道感染を起こす」ことは間違いありません。

 

コロナウイルスの広がりを見ると、ウイルスを含んだ空気を感染者が吐き出し、それを他者が大量に吸い込む状況で初めて重篤な下気道感染が成立している可能性があります。

 

冬の屋形船では、1-2時間は締め切った空間でカラオケをして大声で話していたでしょうし、韓国の宗教施設でも閉鎖空間のなかで多くの人が長時間、大きな声を出していた可能性があります。また愛知ではジム施設で感染拡大が確認されていますが、ある程度呼吸数が上がる運動を室内空間でしたことや、1-2時間は空間を共有したことで、感染拡大が起きたと考えられます。大阪のライブハウスでも感染が確認されていることは報道されている通りです。

 

これらの「大規模感染」の特徴は、空気がこもった閉鎖空間で多くの人が、肺活量の高めの行動をとったということになると思います。

 

もちろん、そのような多人数の施設による大規模感染だけでなく、当然ながら小規模な感染も多数生じています。

 

個人的に食事に行って至近距離で大きな声で長時間話したり、家族内での感染も多数確認されています。やはり野外ではなく屋内で、かつ長時間(1時間以上)、至近距離で接する、または大きな肺活量の生じる行為をする、大声で話す、ことがリスクとして最も高いと推測されます。

 

感染者が肺活量の大きな運動をすると、ウイルス量が比較的大量に出てきて、かつ周りの人が吸い込むウイルス量も大きくなり、下気道での重めの感染が成立する、という特殊な状況であることが推測されます。

 

そうなると、感染予防として手洗いやうがいも重要ですが、上記のような危険な状況に身を置かないことが重要です。

 

自分が吸っている空気が閉鎖された空間で大勢の人が吐き出していないか、他者と長時間空気を共有していないか、という観点も重要です。

 

 

③上記の観点から、実際に危険な行動、安全な行動は?

インフルエンザの予防は手洗いうがいが最も重要ですが、コロナの予防は、「空気のこもった場所で肺活量が高い活動をしている場所を避ける」ことが最も重要です。

 

【レジャー関係】

 

ぎゅうぎゅう詰めの室内ライブハウス、カラオケボックス、人の多い室内運動施設などは最高レベルに危険だと言えます。

 

同じ室内でも、クラシックのコンサートや映画館は、ほとんどの人は声を出さないので、ライブハウスよりはリスクは低いと言えます。ただし古い施設は換気システムの能力が低く、空気がこもっていることもあります。そのような場合は控えたほうがいいでしょう。

 

ゴルフやテニス、釣りなどの野外活動は、危険性は非常に低いです(ただし現地集合現地解散をした場合です。車でたくさんおしゃべりしながら往復をともに過ごしたとしたら、車内の時間が危険な接触にあたります)

 

卓球、ダンスなどの室内活動は、控えるか、どうしてもする場合は換気して空気の通りを良くしてください。あるいは外でできることは外で。

 

散歩はリスクゼロに等しいので心配せずに外を歩いて大丈夫です。

 

美術館は、みなさん静かで、鑑賞時間もそれほど長くなく、かつ空気がこもるような施設でなければ危険性は極めて低いです。

 

子供を公園で遊ばせるのもリスクは低いです。
逆に、子供同士が友達の家に集まって大声で盛り上がりながらゲームをするのは、危険性が高くなります。控えましょう。

 

ゲームセンターは換気能力が低いテナントに入っていることが多く、空気がこもっていることが多いです。大きな声を出すことは少ないですが、複数人でゲームをして盛り上がることもあるでしょうから安全とは言えません。

 

スポーツ観戦については、屋外であればリスクは低いです。
室内競技の観戦は危険性があります。ですが、そもそも今は開催していないので問題ありませんが。

 

なんらかの室内展示会については避けてください。多くの人がいる場合、周りが騒がしいために自然と話す相手との声が大きくなり、距離も近くなることで集団感染のリスクとなります。

 

 

【飲食関係】

 

牛丼屋やラーメン屋で短い時間に黙々と食べる行為では感染リスクはかなり低いです。

 

スタバでの店員との短いやり取りでも感染拡大はしないです。ただしそのあとに店内でマスクを外して友人とだらだらと話をしていると、感染の可能性があります。

 

周りが騒がしいと、ついつい大きな声を出すことになり、肺活量が上がりリスクが高まります。

 

ファミレスで、対面して至近距離で大声を出し、長い時間過ごすのはやめましょう。

 

個室での会食、ディナーは場所によっては危険です。時間が長くなりますし、換気されていない可能性もあります。至近距離で大声で話すと感染リスクが増します。

 

スポーツバーのようなところは、ライブハウス同様にリスクが高いので控えてください。

 

ブッフェ形式が危険という報道がありますが、正しくは、立食パーティーが危険というほうが正しいです。

 

元々の報道では、カクテルパーティーでの集団感染があったという報道でした。それがいつの間にかトングが悪者になりブッフェが危険という報道に変わってしまっています。実際に起きたことは、立食形式のカクテルパーティーで、周りが騒がしいために相手の声が聞き取れないことから、自然と距離が近くなり、一人一人の話し声が大きくなった結果、その中で数人が感染したという状況のようです。

 

なのでむやみやたらにブッフェを恐れなくても良いです。

 

これからはだんだん暖かくなりますので、レストランはテラス席が有ればそれが一番リスクが低いです。

 

 

【移動関係】

満員電車は、皆さんが想像するよりは危険性は低いと考えます。ここがインフルとは異なる点でしょう。一定時間ごとにドアが開くため、換気がされていることと、車両にも換気システムが稼働していること、日本人がほとんど車内で話さないことが、満員電車でのリスクを低いものにしていると予想しています。

 

もしも満員電車で容易に感染するウイルスだとしたら、現在までに出どころ不明の感染が少なくとも数千人規模で生じて、それに伴い、重症者ももっと多く出ているだろうと考えられます。
現実にはそうなっていないので、ものすごく不安になる必要はなく、リスクは低めなのだと考えるほうが妥当です。

もちろんリスクはゼロとは言いません。咳をしている人が近くにいたら、次の駅で車両を変えたほうがいいです。

 

タクシー
乗車したらすぐに換気をしましょう。換気させてくださいと言って最低2箇所の窓を開けてください。目安としては、室内の匂い(運転手の体臭など)がしなくなるまで換気してください。

 

バス
やはり可能なら換気をして、長時間でなければ不安になることはないと思います。
夜行バスはリスク高いです。時間が長いのでやめましょう。バスツアーも危険です。バスの中で大声で話したりカラオケなどしたりすると最悪です。参加しないでください。

 

新幹線
新幹線も車内に換気システムを搭載していますが、換気能力はそこまで高いとは言えないです。当然ながら定められた最低限の換気能力は保っているようですが。
感染者が乗車していて、近くで大声で話していたり、咳をしている人がいたらあまり近くにいない方が良いですね。

 

今はかなり空いています。空いていればそこまで神経質にならなくても良いかもしれません。

 

飛行機
調べてみると、飛行機の換気システムは、高層階のオフィスビルの換気システムよりもはるかに換気能力が高いという記載があります。5分に1度のペースで外気と入れ替わるとのこと。また殆どの人は話しません。よほど混み合っていてざわざわ話しているというのでなければ、新幹線よりも実は安全と考えても良いのかもしれません。心配な方は避けてください。

 

【オフィス関係】

閉鎖された会議室での長時間の会議は、リスクが高いです。
デスクワークについては、窓が開けられるビルなら窓を開けて換気が望ましいです。高層ビルの場合窓は開けられませんが、ビルに換気システムがあり、国の定めた換気能力は保っています。
これまでに多くの感染確定者の職場の人たちが検査を受けていますが、オフィスから感染拡大が起きたというケースはありません。ここがやはりインフルエンザとは異なる点です。

 

テレアポのような仕事をされている場合、話す量が多いです。換気に注意してください。

 

子供は感染するか?
→感染しますが重症にはなりにくいようです。

 

中国のトータル4万4672人の感染確定者の内訳を調べた研究があります。
その中で0-9歳のお子さんの感染者は416人いましたが、死亡したのは0人です。10歳から19歳は512人いて、1人の死亡が報告されています。死亡率は低いと言えます。
一方で、同じ研究の中で、50代の死亡率は1.3%、70代では8.0%、80代以上では14.8%であったと報告されています。

 

このようなことを念頭におき、家族の人たちにも危険な行動をとらないように覚えてもらうことが重要です。

 

④現在の日本国内の感染リスクは高いの?

今年2月の1か月間の新型コロナ感染患者の発生数は全国で240名でした(クルーズ船除く)。死亡者は5名でした。

 

一方で、2018年の1年間の交通事故の重症事故件数は全国で3万2726件、交通事故死者数は3449人でした。1か月に換算すると、重症事故は1か月で2727件、死亡者は毎月287名発生していることになります。

 

こうしてみると、2月の日本国内でコロナに感染する確率は、外出して重症交通事故事故に巻き込まれる確率よりはるかに少なく、また交通事故で死亡する確率よりもわずかに低かったことがわかります。

 

現在、新型コロナウイルスの最新ニュースでは、3月に入って感染者数は当然増えていますが、1日に多い時で59名(3月6日)が報告されています。おそらく今後も増えますが、
月間の発生件数が3000人を超えないうちは、重症交通事故に巻き込まれる確率と比べても低いことになり、この程度の確率であれば、私は通常の皆さんの業務をしてもよい状況だと判断しております。

 

もちろん、上記のことに注意していただければリスクは下がります。危険な行動を取らないよう注意しながら、リスクの低い行動については、個人の判断ですが、そこまで神経質にならなくても良いかもしれません。

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