治療実例

INSTANCE

原因不明とされ4年間苦しんだ膝の痛み  膝蓋下脂肪体炎の症例

男性 / 10代 / 愛知県在住 / 学生

受診までの経過SIGN AND SYMPTOM

今回紹介したいのは、膝蓋下脂肪体炎により、膝に治りにくい痛みが生じてしまった10代の中学生です。

少年野球でキャッチャーをしていましたが、4年ほど前(11歳のころ)から右ひざの「ひざ小僧の下」が練習後に痛くなると感じていました。しかしそこまで強い痛みではなかったため、その時は特に病院を受診していません。

14歳になるとだんだんと痛みが強くなり、日常生活でも階段を降りるときやしゃがむときに痛みが出るようになりました。近くの整形外科を受診してレントゲンを撮ってみたものの結果は「異常なし」。

それから数か月のうちにさらに痛みが強くなり、近隣にある大学病院を受診。MRIを撮影したところ、膝蓋下脂肪体という場所に何やら白い影が。専門的にはT2強調像という画像で患部は異常に白くなっています(下の図1)。
さらに血管を観察することができる「造影剤を使ったMRI」を取ったところ、造影剤が同じ場所にたまっています(図2)。

膝蓋下脂肪体というところに血管が増えていることが考えられました。

しかし、そこまでわかってもどうすることもできず、どんどん痛みは増すばかり。ついに夜寝ていても痛くて眠れず、学校にも行けなくなってしまいました。

手術をしてこの部分を切除することも提案されましたが、お母さんがインターネットで調べて当院を受診しました。

MRIの結果からすでに「もやもや血管」があることは明らかでした。さらに「夜間痛」まであるので、もやもや血管の判定基準にも当てはまります。

患者さんのお子さんも学校にも行けない痛みが本当につらいようで、カテーテル治療を受けることになりました。

治療時の所見FINDINGS

この症例は、右ひざの痛みのある部分の肌を指で触れられるだけで痛がりました(これを専門的にはアロディニアと呼びます)。アロディニアはカテーテル治療をすることが有効だと推測できる要因となります。これまでにもアロディニアはカテーテル治療でよくなることが多かったのです。

治療当日の血管撮影では、MRIと同様に膝蓋下脂肪体の部分に異常な「もやもや血管」があるのがわかります(図3)。また、治療後にはモヤモア血管が減少していることを確認しました。
先ほどの「触ると痛い」というアロディニアの症状も、カテーテルから薬剤を入れて数分すると、大幅に改善されました。

治療後の経過FOLLOWING THERAPY

翌日にお母さまと話した際に、まず、ご本人とお母さんが驚いたのは、1年以上腫れていた「ひざ小僧の下の部分」の腫れが引いていたことです。
さらに「触ると痛い」「服がこすれるだけで痛い」というアロディニア症状も翌日には消失していました。

治療から2週間後の受診の際には日常生活はほとんど痛くなく、夜も寝ることができ、登校も可能になっています。さらに1か月、2か月とするうちに徐々に野球の部活動にも復帰しました。

現在は治療から3年以上が経過しています。治療した当時は中学生でしたが、野球を再開し、高校進学後も野球を続けられました。高校の3年間で1日も休むことなく野球をすることができ、ファーストのポジションとして県内でレギュラーで県大会に出場し2位になりました。学校生活を続けられるだけでもうれしいのに、スポーツにフルに復帰することができたことが有難かったと最近になってお手紙をくれました。

膝蓋下脂肪体炎は見逃されやすく、治療法もあまりないとして放置されてしまっている人もたくさんいます。
もしもご自身も同じ症状かもしれないと思った際は、ぜひ当院までご相談ください。





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