治療実例
INSTANCE野球部の大学生に生じたTFCC損傷(手首の痛み)へのカテーテル治療
男性 / 20代 / 東京都在住 / 学生
受診までの経過SIGN AND SYMPTOM
今回紹介したいのはTFCC損傷による手首の痛みを主訴とした21歳の大学生です。関東にある大学の野球部に所属する外野手の方でした。大学2年の秋ごろからバッティング練習の際に右手首の小指側に違和感を覚え始めました。最初は練習後に痛みが出るくらいだったのが次第に痛みが増強し、バットを握るだけでも痛い、日常生活でも痛いと症状が強くなっていきます。
整形外科ではステロイド注射やPRP注射、体外衝撃波などの治療を受けましたが改善しませんでした。
専門医には骨を切って短くする方法を勧められ、別の病院では関節鏡の手術を勧められたようです。ただしギブス固定の期間が長いことや人によっては2回目の手術も必要になるとのことで、当院を受診されました。
治療時の所見FINDINGS
受診時のMRIでは、脂肪抑制T2MRI像にて患部は高信号(上の画像で、通常より白く映る。赤い丸で囲った部分)になっており、炎症とそれに伴う異常な血管が増えていることが確認できたため、カテーテル治療を予定しました。
治療は部分麻酔で30分ほどで終えています。手首の骨間動脈という血管から患部に異常な血管が増えていてモヤモヤ血管ができていることがわかります(青矢印)。治療後には異常血管の消失を確認して終了しました。
治療後の経過FOLLOWING THERAPY
手首の治療の場合は、患部が過敏な状態になっていることが多いため、治療後に症状が改善するまでには比較的時間がかかる場合があります。この方の場合は2週間後に日常生活の痛みがなくなっており、治療後1か月くらいからはバッティング動作も痛みなくできるようになっています。徐々に練習の負担をかけても違和感なく続けられるようになり、大学3年、4年生ともにフルの練習と試合に参加し続けることができています。大学を卒業した現在は野球を離れ社会人として生活していますが、現役大学生活を思い切りプレーすることができてよかったと話してくださいました。
TFCC損傷は、損傷自体を手術で治さなくてはならないと誤解されがちですが、実際には損傷があっても8割の人は痛みがないとされています。つまり損傷を治さなくても炎症を鎮めてあげれば手術せずにスポーツに復帰することができるのです。
以上、TFCC損傷をカテーテル治療で改善することができた症例の紹介でした。