治療実例

INSTANCE

大学入学直前、練習開始まで1週間で決断した恥骨結合炎へのカテーテル治療

男性 / 10代 / 東京在住 / 学生

受診までの経過SIGN AND SYMPTOM

恥骨結合炎は、足の付け根(鼠径部)やその中央にある恥骨のあたりに痛みが出る、サッカー選手に多いスポーツ障害の一つです。「グロインペイン症候群」と呼ばれる股関節周囲の痛みの代表的な原因でもあります。安静にすればいったん楽になるものの、競技に復帰すると痛みがぶり返すことを繰り返し、長引きやすいのが特徴です。

今回ご紹介するのは、恥骨結合炎に悩まされていた18歳の学生です。サッカーに打ち込んでおり、ポジションはセンターバック、ボールは右足で蹴ります。

痛みが始まったのは前年の4月ごろ、サッカーの試合中のことでした。股関節に少し違和感を覚えながらプレーを続けていたところ、「何かが外れるような音」とともに足の付け根に激痛が走ったそうです。それからは安静にしていても痛みは治らず、痛みを抱えたまま12月までプレーを続けてきました。

痛むのはサッカーのときだけではなく、少し走ったり腹筋運動をすると痛み、普段の生活でも咳やくしゃみをしただけで足の付け根に痛みが走るぐらいに状況が悪化していきました。

何件か整形外科や整骨院に行き、リハビリのためサッカーを休んでいました。リハビリ先の先生に「この先どうしたらいいのか」と質問しても曖昧な答えばかりで、先の見えない不安を感じていたそうです。ご家族も「無理をさせて息子のサッカー人生を壊してしまわないように、しっかりと治してあげたい」という思いを強くされていました。

春からは大学への進学が決まっており、「大学でもサッカーを続けたい。1週間後には大学の練習が始まる」という状況で、ネット検索していたところ当院を見つけ、恥骨結合炎にカテーテル治療は有効なのか、治療後すぐにプレーに復帰できるのかを確認するため、当院を受診されました。

治療時の所見FINDINGS

MRIでは、両側の恥骨に骨髄浮腫(骨の中に炎症が起きて、通常よりも白く見える画像所見)を認めました。画像上は両側に所見がありましたが、痛みを感じているのは右側のみでした。炎症を軽減するためのカテーテル治療を提案しました。

治療では、左足の付け根から点滴で使う細い針を刺し、そこから極細のチューブ(カテーテル)を血管の中に進めて、痛みのある場所へ進めピンポイントにお薬を流します。
カテーテルから造影剤を流して血管の様子を確認すると、右側では恥骨に向かう血管に、モヤモヤとした異常な血管のかたまりがはっきりと写りました。さらに、この部分に造影剤が流れた瞬間に再現痛と呼ばれる「いつもの痛み」が確認できました。これは、ここが痛みの発生源であることを示すサインです。左側にも、右側より弱いものの同じような異常な血管を認めました。
これらの異常な血管一つひとつにカテーテルからお薬を流し、異常な血管を減らして治療を終了しました。

治療後の経過FOLLOWING THERAPY

治療から2週間後には「前より明らかに良くなっている」と実感され、8割程度のスピードで走れるようになり、軽いキックも再開できていました。

治療から1か月後には、痛みは10→1まで軽減。「ほとんど痛くない」状態で、大学での練習にも普通に参加でき、練習後にも痛みは出ていませんでした。その後は再発予防のため、体の使い方を整えるコンディショニング(股関節周囲の柔軟性改善や殿筋のトレーニングなど)も併用し、恥骨部の痛みなくプレーを継続できています。

治療から約1年5か月後には、経過確認のためのMRIを撮影しました。

体を正面から見る向きで撮影したMRIです。治療前に矢印の恥骨結合部にあった白い炎症の部分が、治療後にはほとんど目立たなくなっています。痛みが取れただけでなく、画像のうえでも炎症が治まっていることを確認できました。

ご本人も「今はほとんど恥骨の痛みは気にならない。かなり動いて疲れた後に少し引きつれる感じがある程度で、以前と比べればだいぶ良い」と話され、現在も大学でサッカーを続けられています。

「恥骨結合炎は安静にするしかない」「治療法がない」と言われて競技をあきらめかけている方がいらしたら、ぜひカテーテル治療という選択肢もあることを知っておいてください。





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