治療実例
INSTANCE繰り返す高熱と両膝の激痛 偽痛風による慢性炎症がカテーテル治療で改善した症例
女性 / 80代 / 神奈川県在住 /
受診までの経過SIGN AND SYMPTOM
「偽痛風(ぎつうふう)」という病名は、あまり聞きなれないかもしれません。痛風に似た激しい関節の痛みや発熱を起こしますが、特に70代・80代の高齢の女性に多いのが特徴です。
膝や手首が腫れて熱を持ち、「痛くて歩けない」「熱が続いてつらい」と悩む方も少なくありません。
血液検査では異常が見つかりにくいこともあり、原因が分からないまま痛みに耐えている方もいます。今回は、そんな高熱と膝の激痛に悩まされていた偽痛風の患者さんが、カテーテル治療によって改善された症例をご紹介します。
患者さんは、両膝の強い痛みと腫れ、そして毎日のように続く高熱(最高39℃)に長く苦しんでいました。2024年7月に初めて偽痛風(ぎつうふう)と診断され、膝の関節内に溜まった膿を抜く処置を受けましたが、痛みと発熱は改善しませんでした。
手首や足首にも腫れが広がり、歩けないほどの痛みで寝たきり状態となる日が続き12月には入院しました。関節内の感染や膿がたまっていたため、変形性膝関節症の人工関節手術も見送られ、ステロイド内服で様子をみる日々でした。
退院後も高熱が続き、「なぜ熱が下がらないのだろう」「痛み止めを飲んでも効かない」と、ご本人もご家族も不安な毎日を過ごしておられました。母親の膝の腫れと高熱を心配した娘さんが、ネットで調べていた際に当院を見つけ、受診を決められました。
治療時の所見FINDINGS
初診時、両膝には目で見て分かるほどの腫れと熱感があり、関節の変形も重症でした。歩行は困難で、膝に触れるだけでも「熱い」と感じるほど炎症が強く、動かすと激痛が走り、膝の中でクルクルという異音も確認されました。
血液検査では炎症反応(CRP)やフェリチンの上昇がみられ、長引く炎症が原因で発熱を繰り返していることが強く疑われました。この炎症は異常にできた血管「モヤモヤ血管」が原因と診断し、両膝に対する膝のカテーテル治療を提案しました。
治療は、鼠径部から細いカテーテルを挿入し膝のモヤモヤ血管まで進め、そこに炎症を鎮める薬剤を直接流すことで、異常血管の炎症を鎮める治療を行いました。
メスを使わず、切開も不要で、鼠径部の傷跡は絆創膏で覆うだけの日帰り治療です。体への負担が非常に少なく、高齢の方でも安全に実施できるのが特徴です。
治療後の経過FOLLOWING THERAPY
膝のカテーテル治療直後は、造影剤による軽度の顔の赤みや腫れが見られましたが、数日でおさまりました。そして驚くことに、翌日から続いていた高熱がぴたりと出なくなったのです。
娘さんからは、「毎日39℃の熱が続いていたのに、治療の翌日から熱が出なくなりました。
少し膝の痛みは残っていますが、チャレンジして本当によかったです。」という感謝の声をいただきました。
膝の変形による痛みは残っている者の、高熱が消えたことで体調全体が安定し、膝の腫れもおさまったそうです。「これでようやく人工関節手術も検討できる」と前向きな気持ちになられています。
偽痛風は「一時的な関節炎」と思われがちですが、慢性化すると全身の炎症を引き起こすことがあります。炎症が続くと体力が落ち、免疫や栄養状態も悪化します。
今回のように高熱を伴う偽痛風では、関節の周囲に異常血管が新しくできて炎症を持続させていることが多く、この血管をターゲットにしたカテーテル治療によって、炎症を鎮めることができます。
炎症が原因で起きている痛みや発熱は、適切に治療すれば改善の可能性があります。
痛みが強く、発熱を繰り返している方は、どうぞ一度ご相談ください。炎症を抑えることで、生活の質が大きく変わることがあります。