治療実例
INSTANCE交通事故で切断した前腕の、切断面の痛みに対するカテーテル治療実例
女性 / 60代 / 埼玉在住 /
受診までの経過SIGN AND SYMPTOM
交通事故や外傷で四肢の切断を余儀なくされてしまう方が多くいらっしゃいます。そのような方のなかで、切断面に強い痛みが残ってしまい、義肢をはめるのに苦労したり、日常生活に支障が出てしまったりする方も、一部いらっしゃいます。
四肢の切断面の痛みが遷延してしまう理由ははっきりとはわかっていませんが、一部の方では痛みの生じている切断面に異常な血管が発生してしまい、それが神経と一緒に増えて長く居座ってしまうことで痛みが生じていることがわかってきました。
そのような痛みの部位に生じた異常な血管を減らすカテーテル治療という特殊な治療で、切断面の痛みが改善することが知られてきています。
今回紹介したいのは、2年4か月前の交通事故で切断した左前腕に、切断面に長く続いていた痛みに対して、カテーテル治療を行なった症例です。
69歳の女性の患者さんです。2年4か月前に交通事故で左前腕切断しました。その後は装飾義手を装着しています。しかし切断から1年9ヶ月経過したときに、切断部に疼痛、痺れが出現しました。整形外科やペインクリニックに複数個所通院したものの、原因がわからず、セレコックス、リリカなどの内服薬でも痛みは改善していませんでした。
痛みで日常生活に支障をきたすようになり、何とかしたいといろいろな人に聞いて回っていたところ、整骨院の先生の紹介で、モヤモヤ血管のことを知り、カテーテル治療を受けたいと思い当院を来院されました。
治療時の所見FINDINGS
初診で診察すると、疼痛範囲は肘から先約10cm程度の前腕に認めました(上記写真の赤丸の範囲)。
痛みの性質はズキズキとした痛みで、夜間痛が強く、眠れないと訴えていらっしゃいました。視診上は軽度の腫脹がありましたが、熱感はありませんでした。温めると楽になるとおっしゃっていました。
夜間痛があることや、ズキズキとした痛みは血管が関与する痛みである可能性が高いことを説明しました。
また、超音波を使って検査をしたところ、疼痛部には血流信号が多くなっていることが確認できたため、カテーテル治療を行なうこととしました。
疼痛部にマーカーをつけて治療を行ないました。橈骨動脈から断端領域に不整な濃染(下の写真の赤い矢印)が認められたため、異常な血管を減らすための薬剤を少量投与して治療を終えています。
治療後の経過FOLLOWING THERAPY
当日の夜間は軽度の痛みや腫れがありましたが、3日後には痛みが明らかに軽減する傾向が確認できました。治療から3週間後の診察の際には、痛みはさらに改善し、ズキズキ感はなくなり肩の痛みも消失していました。また鎮痛薬もやめることができていました。
治療から2ヶ月後には寒くなってきたからか少しの痛みのぶり返しがあったものの、3ヶ月後にはかなり改善し、痛みはほとんど消失しています。
治療から10ヶ月後の時点でも、疼痛はゼロかごくわずかで、日常生活には全く問題のない状態で維持できていました。
また、痛みだけでなく断端部の腫脹もほぼ消失し、すっきりしたとおっしゃっています。
四肢の切断後の断面の痛みは、治療に難渋することも多い痛みですが、今回紹介した症例のようにカテーテル治療が著効する人も多くいらっしゃいます。痛みに悩んでいる場合はご検討してみてください。