治療実例
INSTANCE卵巣がんの背骨への骨転移の痛みに、カテーテル治療が著効した治療実例
女性 / 50代 / 千葉在住 /
受診までの経過SIGN AND SYMPTOM
骨転移の痛みへの治療法は限られており、放射線治療が効かなかった場合はモルヒネなどの麻薬を使うしかないと思われている方も多いです。
しかし、最近になって、カテーテル治療という新しい治療で骨転移の痛みが改善されることがわかってきました。
この治療は、がんを完全に消滅させるのではなく、がんが増えようとする過程で生じる血管と神経を減らすことで、骨転移の痛みを緩和させるものです。
今回紹介したいのは、卵巣がんが背骨に転移して痛みが生じてしまった56歳の女性の患者さんです。
50歳の時に卵巣がんと診断され、手術と放射線治療を行ないました。しかし1年半が経過した時点で再発が見つかり、その後は様々な治療をしてきています。
特に生活の質を下げているのが骨転移による痛みでした。
起き上がる時や横になっているとき、寝ているときにも強い痛みが生じていました。また転移した腫瘍が圧迫して、右の足にしびれも生じていました。
主治医の先生に相談し、放射線治療を受けたものの、痛みは十分には改善せず、あとはオピオイド(麻薬)を増量していきましょうと提案を受け、どんどんと麻薬の量が増える一方になりました。
とても不安になり治療法を探していたところ、がんの痛みへの専門の治療があるということ聞き、当院を受診されました。
治療時の所見FINDINGS
CTで確認すると背骨には骨転移でできた病変を確認できました。ご本人の痛い場所とも一致していたため、この病変の治療を予定しました。カテーテルという非常に細いチューブを足の付け根から入れて、がんの骨転移の病変のすぐ近くまで運び、そこからお薬を流しました。
治療後の経過FOLLOWING THERAPY
治療後は骨転移の痛みが大幅に減少しました。日常生活では、起き上がる際、お風呂に入るさい、寝ているときの痛みが治療の2日後から改善しました。
1回目の治療後に改善はあったものの、病変は大きかったため、残った症状も多く、2か月後に2回目、4か月後に3回目の治療を追加しました。
半年後に撮影したCTでは、以前の腫瘍(赤い矢印)が小さくなっているのがわかりました。
治療前はモルヒネの張り薬を6枚貼っていましたが、徐々に減らすことができ、治療から半年後には、すべてやめることができました。
骨転移の痛みは、病変が消えなくても、骨を取り巻く血管と神経の状態を正常にしてあげることで痛みが改善し、うまく付き合っていけるようになります。
骨転移の痛みで困っている方はぜひカテーテル治療という選択肢もご検討ください。