治療実例
INSTANCEランニングで生じた分離膝蓋骨の痛みへのカテーテル治療実例
男性 / 20代 / 埼玉県在住在住 /
受診までの経過SIGN AND SYMPTOM
分離膝蓋骨の発生頻度は0.2~6%、そのうち有痛性のものは2%以下1)と報告されています。有痛性のものは若年のスポーツ選手に多く発症し、痛みのため存分にスポーツができず、悩まれている方もいます。
今回、ランニングによって生じた分離膝蓋骨による痛みへのカテ―テル治療が著効した患者さんをご紹介したいと思います。
22歳の学生の方で、以前からレントゲンで右膝のお皿が分離膝蓋骨だと診断されていました。
ラグビー部に所属しており、普段から6~7kmのランニングやラグビーをやっていたそうですが、当院を受診する5か月ほど前からランニング後に右膝痛が出るようになりました。
部活を休んでも症状は良くならないどころか悪化し、激しい運動もしていないのに歩けなくなるほどの痛みが出てきました。4か月前にかかりつけのスポーツ整形外科を受診し、分離膝蓋骨が大腿四頭筋に引っ張られてしまい炎症が起きていると説明され、理学療法など受けていましたが、改善しませんでした。患部を押すと痛い、スポーツによる接触で痛い、という状態が続き、満足できるプレーができませんでした。
ホームページで検索して当院を受診されたそうです。
治療時の所見FINDINGS
来院時、普段痛みを感じる右膝上外側に圧痛を認めました。エコーでは膝蓋骨の分離が確認でき、その近傍にドップラー信号(血管が増えている証拠)があり、異常な血管が関与していることが疑われました。
MRIでは右分離膝蓋骨の近傍の骨内や軟部組織にSTIRという撮影モードで高信号を認め、異常な血管の関与する疼痛を疑い、カテーテル治療を行ないました。
カテーテル治療の際は、痛みが出ている部位に一致して異常血管を認めました。異常血管(モヤモヤ血管)を減らすための薬を投与し、異常血管が減ったことを確認して治療を終えました。
治療後の経過FOLLOWING THERAPY
カテーテル治療の当日に、すでに普段痛い場所を触っても痛くないことにかなり驚かれたそうです。カテーテル治療後1週間経ったころから、押しても運動しても痛みがなくなり、その後は悪化することなく経過し、1か月経った頃には1kmを5分くらいのペースで走っても痛みが出なくなったので満足している、左右差がなくなった!と話してくださいました。エコーでも膝蓋骨の分離部にドップラーは見られませんでした。
現在も痛みの完全消失状態を維持しており、部活動も続けることができています。
1)Weckström M et al:Excision of painful bipartite patella.:good long-term outcome in young adults. Clin Orthop Relat Res 2008;466:2848-2855.