モヤモヤ血管への治療の科学的根拠(エビデンス)と、世界における普及

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新しい医療技術や治療方法が発表されるたびに、それが本当に安全で有効なのか、また十分な科学的根拠に基づいているのかといった疑問が生じることは自然なことです。

モヤモヤ血管治療も例外ではありません。一部では(特にこの治療をご存じでない医療関係者の方や一般の方から)その効果や安全性に疑問を持つ声や、従来の治療法との比較における懸念が聞かれることも事実です。

しかし、医療は常に進化していて、未解決の課題に既存の枠組みを超えた新しいアプローチが生まれることもあります。モヤモヤ血管に対する治療(カテーテル治療と動注治療の2種類があります)は、従来の治療法では十分に効果を得られなかった慢性的な痛みを持つ患者さんに、新たな希望をもたらすものとして国内外で注目を集めています。

カテーテル治療のイメージ

このページでは、この治療法がどのような科学的根拠に基づいているのか、またその世界における広まりについて詳しく解説します。
新しい技術を受け入れるためには、疑問を持つことが重要であり、それこそが科学の発展を支える原動力です。モヤモヤ血管の治療についての正確な情報をお伝えすることで、その理解を深めるきっかけになれば幸いです。

モヤモヤ血管の治療は2013年に筆者(奥野祐次)が世界で初めて論文として発表しました(1)。アメリカのカテーテル治療の専門医学論文誌JVIR(journal of Vascular and Interventional Radiology)に掲載されました。既存の枠組みを超えた新しいアイデアとして注目された一方で、当初は懐疑的な意見も多く聞かれました。

しかし、それから10年以上が経過して、この治療は実に多くの国や専門の医療機関で行なわれています。

専門医学論文誌JVIR

アメリカでの広まり

米国で最初にこの治療を始めたのはUCLA(カルフォルニア州立大学ロサンゼルス校)大学病院のSid Padia 先生です。ひざに生じたモヤモヤ血管を治療し、その成績を2020年に報告しました(2)。Padia先生はその後、この治療が他の治療とどれくらい優れているかを調べるための臨床研究を米国で主導しています(3)。アメリカではひざへのカテーテル治療のことをGAE(Genicular artery embolization)と呼んでいます。

アメリカでの広まりのイメージ

私たちやPadia先生の報告をもとに、この治療は2022年にアメリカでFDA認可がなされ、Medicare(メディケア)という米国で最も多くの人が加入している保険を使ってこの治療を受けることができるようになりました(この記事を記載している2025年1月時点で、米国では変形性膝関節症に対する治療のみが保険認可されています)。
2024年にはアメリカ全土で、膝関節だけで4,000例以上の治療が行われたことが知られています。
また、スタンフォード大学(4)やシカゴ大学(5)などの有名な大学でも、ひざのモヤモヤ血管の治療についての研究が行われている最中です。

シカゴ大学のイメージ

また、有名大学だけでなく、アメリカのカテーテル治療のクリニック(OBLと呼びます)では、ひざだけでなく、肩、足底腱膜炎などを中心としたモヤモヤ血管の治療が行われ、多い施設では年間に1,500例から2,000例ほど行われています。

ヨーロッパでの広まり

ドイツでは2023年から保険診療としてこの治療が行われており、ひざに限らず、肩や腰、足、肘などすべての関節の慢性的な痛みに対する治療として認められています。ドイツ全土に多数の基幹病院を持つHelliosグループ(ヨーロッパ最大の私立病院グループ)の放射線科の教授であるMarcus Katoh先生がドイツに初めてこの治療を持ち込み、それ以来、Marcus先生だけでも1,000例以上を行なっています(6)。またベルリンの有名な基幹病院であるCharite病院でも1週間に15例から20例の治療がなされており、400例以上の症例の報告が行われています(7)

イギリスではオックスフォード大学病院で、この治療の臨床研究がされています。オックスフォード大学教授のRaman Uberoi先生が主導して、イギリス全土の20の医療機関(NHS)でこの治療の安全性と有効性を確認する取り組みがおこわわれています(8)

オックスフォード大学のイメージ

私も2025年の1月に、オックスフォード大学病院のSurgical Grand Roundという大学病院の全科の医師が参加する場において講義をさせていただきました(9)

オックスフォード大学病院で講義を行いました

フランスでは変形性ひざ関節症に対するモヤモヤ血管の治療に関する研究結果が報告され、また現在も比較的大規模な研究が行われています(10)
また、スペインでは五十肩(肩関節周囲炎)に対するカテーテル治療が盛んにおこなわれていて、論文が多数出ています(11),(12)
また上記の国だけでなく、スイス、イタリア、オーストリア、オランダ、ポーランド、ベルギーなどでもこの治療が行われています。

アジアでの広まり

お隣の韓国では、日本の東京大学にあたるソウル国立大学病院(SNUH: Seoul National University Hospital)において、アキレス腱炎へのモヤモヤ血管の治療成績が報告されています。2年間経過を観察して85%以上の人に有効性が確認されています(13)
また、ソウル市内の私立系の大きな大学病院である建国大学病院からも、ひざや肘の痛みに対するモヤモヤ血管のカテーテル治療の成績が報告されています(14),(15)

台湾では複数の大学病院から、ヘバーデン結節、ひざ、肩関節周囲炎などへのモヤモヤ血管のカテーテル治療や動注治療の成績が報告されています(16),(17)

また上記の2か国だけでなくシンガポール、タイ、インドなどの国でも、この治療がすでに行われています。

国際学会での学会発表の取り組み

アメリカでの最大のカテーテル治療の学会のひとつであるSIR(Society of Interventional Radiology)では、パンデミック後は毎年、関節の痛みに対するカテーテル治療についてのセッションが組まれ、多くの医師が参加しています(18)

ヨーロッパの最大のカテーテル治療の学会であるCIRSE (Cardiovascular Interventional Radiology Society of Europe)は、毎年3,000名以上のカテーテル治療専門医が参加する大きな学会ですが、パンデミック以降は毎年この治療がメインテーマの一つとして取り上げられています。ちなみに筆者(奥野祐次)は、2023年に、革新的な治療技術を開発した医師として、Excellence and Innovation Awardをいただいております(19)

オックスフォード大学病院で講義を行いました
オックスフォード大学病院で講義を行いました

また、上記のような既存の学会だけでなく、モヤモヤ血管の治療だけをテーマにした学会も開かれるようになりました。
カテーテル治療専門のGEST学会から派生する形で、GEST-MSKという名前の新しい学会が発足され、毎年フランスのパリで開催されています。この学会はモヤモヤ血管の治療のみを題材として扱う学会で、2025年で3回目を迎えました。もちろんわたくしは開発者としてこの学会にも携わり、多くの講演を行ってきました(20)


また、今年(2025年)の11月には、東京で私とオーストラリアのGerard先生が主催者となり、アジアだけでなく世界からモヤモヤ血管の治療を行っている医師が集まる新しい学会(VENTIという名前)を発足して開催する予定です(21)

オックスフォード大学病院で講義を行いました

長々と書いてきましたが、このような形で各国に治療が普及され多くの患者さんが治療を受けている理由は、ひとえに「安全で、かつ効果があるから」だといえます。

次のページでは「なぜモヤモヤ血管の治療は効果があるのか?(治療のメカニズム)」について調べた研究や、モヤモヤ血管の治療の安全性や有効性についての報告を紹介したいと思います。

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