奥野祐次先生のコラム

COLUMN
COLUMN.51

見逃されている痛みの原因 膝蓋下脂肪体とは?

膝(ひざ)の前のほうが痛いという人は結構多いです。

一般には「ひざ下の痛み」などと表現されます。

「ひざ下」とは膝小僧のすぐしたのあたりです。ここの痛みのことを専門的には「Anterior Knee Pain」といいます。

このひざの前の方の痛みの原因としてきわめて重要なのが、膝蓋下脂肪体と呼ばれるものです。

上の写真を見ていてください。

これは膝を横からみた模式図です。

黄色いところが膝蓋下脂肪体というところです。

ちょうど、膝小僧のすぐ下にあります。これは脂肪のクッションのようなものです。

ソファーなどにおいてあるクッションは外側がシートで囲まれていて、中に綿など柔らかいものが入っていますが、膝蓋下脂肪体もこれとまさしく似ています。

周りを膜で囲まれていて、中は柔らかい脂肪でできています。

さて、今までこの脂肪体はほとんど注目されてきませんでした。

しかし、最近になって、ここが痛みを感じ取るセンサーが非常に多いことがわかってきました。

上の写真はDyeという名前の研究者が、ひざの中のどの部分が痛みを感じやすいか、センサーが多いかを調べた論文の図です。

白が痛みをあまり感じないところ、そして黒が濃くなるにつれて痛みを感じやすい組織であることを示しています。

この写真で赤い矢印でつけたところ、真っ黒い部分はまさしく膝蓋下脂肪体の部分です。
痛みを感じるセンサーがとても多いことがわかると思います。

Bonsachという研究者は、膝の前方に痛みがある人を対象に、痛みの神経がどこに増えているかを調べました。

そうすると、脂肪体の中の、しかも血管のすぐ近くに痛みに関係する神経が増えていることがわかりました。(一番下の図)

実は、膝蓋下脂肪体は炎症が起きると血管がすぐにできてしまい、そしてそこに神経も一緒になって増えます。

私も今までこの「ひざ前方の痛み」の患者さんを治療してきました。

10代や20代の若い方が多いです。

このような方は、軟骨にも異常がなく、半月板にも異常がなく、精神的な面が原因ではとして、お医者さんからも家族からも「本当に痛いの?」とうがった目で見られてしまいます。

ところがこれは、「不要な血管が痛い」という観点からみると、膝蓋下脂肪体が痛みの原因になっていることは一目瞭然な場合があります。

そうであれば、治療法は、「運動器カテーテル治療」が良いです!!

治療についてはモヤモヤ血管についてを参考にしてください。

このAnterior Knee Painという痛みは頻度が高いのですが、痛みの場所を勘違いされて見当違いな治療をされていることが多い疾患の一つですから

みなさんにはぜひ知っていただきたく思っています。

↓膝蓋下脂肪体の中を顕微鏡で見てみると、血管のすぐ近くに神経線維(矢印で示してある)が存在していることが報告されています。

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