治療実例
INSTANCE陰嚢の重苦しい痛みと不妊の不安 精索静脈瘤カテーテル治療で改善した30代男性の症例
男性 / 30代 / 埼玉県在住 / システムエンジニア
受診までの経過SIGN AND SYMPTOM
今回ご紹介したいのは、日々デスクワークに励む30代のシステムエンジニアの男性です。彼は、仕事中の陰嚢の不快な症状に長年悩まされていました。
長時間パソコンに向かい、座りっぱなしで作業をしていると、陰嚢(特に左側)にじわっとした重苦しい痛みや違和感を感じることが増えていました。まるで「きついズボンを履いて座り続けていると、陰嚢がズーンと重く感じられて、誰かに握られているかのよう」 と表現されるような感覚に襲われていました。長時間同じ姿勢でいることや陰嚢の圧迫が血流悪化につながり、痛みを引き起こすというのは、まさに彼の状況に当てはまります。
また、座り仕事だけでなく、取引先への移動や立ちっぱなしの会議の際には、陰部の違和感が増し、一日の終わり頃には陰嚢の血管がうっ滞して疼痛が増すこともありました。「陰嚢がじんわり痛む」「下腹部から足の付け根にかけて重だるい」 といった不快感は、彼の集中力を奪い、仕事のパフォーマンスにも影響を与え始めていました。
さらには、陰嚢の重だるさだけでなく、熱っぽさや灼熱感を覚えることもありました。これは、お腹側から逆流した温かい血液が陰嚢に滞留し、局所の温度が上がるためと考えられています。
ジムでの筋トレやランニング中にも、陰嚢の違和感や鈍い痛みが気になるようになっていました。特に腹圧がかかる激しい運動では、静脈のうっ滞が助長され、症状が悪化しやすかったのです。
そして、30代を迎え、パートナーとの将来を考える中で、精索静脈瘤が男性不妊の原因の約4割を占める という事実を知り、「自分は子どもを作れない体かもしれない」という大きな不安を抱くようになりました。この不安は、彼を精神的に追い詰め、「もっと早く受診すればよかった」 という後悔の念に駆られることもありました。
「病院に行くべきか、もう少し様子を見るべきか」 と迷い、デリケートな部位の悩みであることから「大げさだと思われたくない」 と悩みましたが、痛みが続き、不妊への不安が募る毎日でした。いろいろ情報を探す中で、当院のYoutubeを見て相談することを決意したそうです。
治療時の所見FINDINGS
精索静脈瘤による痛みの原因は、精巣静脈から本来は心臓に戻っていくはずの血液が逆流してしまい、左の腎臓から精巣に向かっていってしまう静脈の逆流です。
精索静脈瘤に対する当院の血管塞栓術(カテーテル治療)を、局所麻酔で行いました。足の付け根(鼠径部)から極細のカテーテル(チューブ)を血管内に挿入し、ほとんどの場合は左の精巣静脈まで進めて、逆流している部位の血管に直接アプローチします。そこで、逆流を止めるコイルというデバイスを留置します。
この治療により、精巣の血液の逆流を改善し、数十年続く痛みや違和感の根本的な原因に働きかけることが可能です。手術のように切開を行わないため、体への負担が少なく、安全性の高い方法として多くの患者さんに選ばれています。
治療後の経過FOLLOWING THERAPY
治療1週間後、陰嚢の重苦しさが和らぎ、デスクワーク中の「ズーンとした違和感」が明らかに軽くなりました。1ヶ月後には立ち会議や電車移動でも「陰嚢が熱く重い」と感じることが減り、長時間の座り仕事にも集中できるように改善しました。3か月後には違和感や疼痛はほとんど気にならなくなり、筋トレやランニングといった運動も気にせず続けられるようになったと喜ばれていました。
約1年経った今、症状は再発せず快適な生活を維持されており、何より男性不妊に対する不安も大きく軽減されパートナーとも将来の話が前向きにできるようになったと話していただきました。
痛みのカテーテル治療は、原因となっている異常な血管に直接アプローチすることで、長年の痛みを劇的に改善し、生活の質の向上に貢献できる可能性を秘めていると言えます。精索静脈瘤による症状でお悩みの方は一度ご相談ください。