ランニングで足首に痛みを感じるときに考えられる病気と治療法は?
「急に走ると足首が痛い」「走った後に足首に痛みが出る」「足首の痛みがなかなか治らない・・・」こんなお悩みはないでしょうか?
ランニングをすると足首に痛みを感じる場合、その痛みの部位によって、痛めている場所や適切な対処法が異なります。足首に痛みを感じる原因として考えられる主な疾患について、症状、原因、診断のポイント、治療法を解説します。
捻挫
ランニング、ジョギング、マラソン、あるいは持久走中に足首をひねり、強い痛みを感じる事があります。これは多くの場合が捻挫と言われ、足関節を支持する靭帯や関節包が損傷することで発生します。
捻挫は足首をひねることで起こる疾患をまとめた概念で、損傷部位により特徴が異なりますので、詳細を原因の項目で解説します。
症状
捻挫の症状は、足首の腫れや痛み、発赤、足首を動かしたときの違和感や、動作が制限される(動きにくくなる)などがあります。
靭帯や骨を損傷している場合は、くるぶし周辺や、足首の内側、外側、前側に圧痛点を有するのも特徴的です。
(「診断」内の図の損傷部位(赤い〇)に圧痛点を生じる事が多いです。)
重症になると少し足首を動かしたり荷重をかけるだけで強い痛みが生じたり、歩行が困難になります。
原因
ランニングフォームが悪かったり、不適切なランニングシューズを使用している場合や、不安定な地形のランニング、運動不足の状態で急に走り出した場合に、捻挫のリスクが高まります。
診断
診断はどのようにして受傷したのかを確認することが重要で、受傷による痛めた部位は推定が可能です。痛みの部位や範囲を触診し、皮下血腫(紫色の色調変化)のがあるかどうかを確認します。皮下血腫がある場合は、血管の損傷を合併している可能性が高く、外傷がより強かったものであると想像できます。また皮下血腫が大きい場合はレントゲンでは判別できない、骨軟骨損傷により痛みが持続している場合があります。
こちらの図に示す通り、足関節は骨がいくつかあり、その骨をつなげる靭帯があることで、大きく自由な可動域が得られます。この大きな靭帯(青の帯)を痛めるのが特徴です。
骨折や神経損傷を伴うこともあり、損傷部位により特徴が異なりますので、それぞれ解説します。
ねんざの損傷部位別の特徴
前距腓靭帯(ATFL)損傷
内反捻挫(足を内側にひねる動作、足の先が内側に向く)の頻度が高く、その際に前距腓靱帯(anteriortalofibular ligament: ATFL)を損傷することが多いです。踵腓靭帯(calcaneofibular ligament: CFL)も損傷することがあります。靭帯が完全に断裂することもあり、足関節不安定症に移行する場合もあります。
リスフラン靭帯損傷
足の甲に痛みがあるときに疑う損傷です。リスフラン靭帯とは、足の甲にあるリスフラン関節を支える靭帯で、内側楔状骨と第2中足骨をつないでいます。
第5中足骨基部骨折
捻挫に伴って起こる事がある骨折です。レントゲンでは見逃しやすく注意が必要です。同部位に圧痛を認めます。
浅腓骨神経損傷
浅腓骨神経は、図のように足を内にかえしたときに認める神経で、この神経が引っ張られて損傷し、足背部のしびれ、ビリビリ感、灼熱感が生じます。自然回復しますが、回復に長期の時間がかかることもあります。
脛腓靭帯損傷
脛骨と腓骨を結ぶ靭帯の損傷です。足部の背屈動作で受傷します。足関節より少し高い位置に圧痛点がある場合に疑います。
足根洞症候群
足根洞症候群は、足関節の外側に位置する足根洞という空間で炎症や損傷が起こる状態を指します。足根洞は、距骨と踵骨の間にある狭い空間で、ATFL損傷との鑑別が困難な場合もあります。
治療
軽症の場合
圧痛が限局し、安静と冷却で回復することが多いです。歩行に問題がないことが多いです。
重症の場合
靭帯の一部が断裂している場合もあり、画像診断(特にMRI)で正確に評価する必要があります。不適切な初期固定により、慢性足関節不安定症といって、支持する組織が損傷することで不安定になり、骨や靭帯に負担がかかり、さらに骨の変形が進行する可能性があります。歩行が困難(足に少し体重をかけるだけで激痛が走る)である場合は、骨折や、靭帯を大きく損傷している可能性が高く、ギブスによる固定を必要とします。
初診時に腫れが強い場合は、正確な評価が難しいこともあり、腫れが落ち着いてからの評価が必要な場合があります。
ねんざの治療期間の目安
歩行可能で圧痛のみの場合は、1ヶ月程度装具や湿布の対応で改善することが多いです。歩行が困難で腫れが強い場合は、ギプス固定が1ヶ月以上必要なこともあります。
足首の捻挫や関連する損傷は、ランニングやスポーツ活動で多く見られる一般的なケガです。適切な診断と治療を受けることで早期回復が期待でき、再発予防にはランニングフォームの改善や適切なシューズ選びが重要です。受傷した場合は痛みの程度、圧痛点、歩行が可能か、などを参考に、専門医を受診しましょう。
シンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)
シンスプリントは、主に脛骨(すねの骨)の内側下部に痛みが生じるスポーツ障害です。ランニングやジャンプ動作を繰り返すことで脛骨にかかる負荷が増大し、骨膜や筋肉に炎症が発生します。
特に、運動不足の状態で急に走ると痛くなることがあります。
主に起こりやすいスポーツとしては、ランニング、サッカー、バスケットボール、テニスなど、急な発信や停止動作が多いスポーツによく発生する疾患です。
症状
初期段階では運動開始時に痛みを感じるが、運動を続けると痛みが軽減する段階です。
進行すると運動中や運動後にも痛みが持続し、重症の場合は安静時にも痛みが出現するようになります。また症状が進むと疲労骨折に進展することもあります。
原因
脛骨の内側にある筋肉が繰り返し引っ張られることで骨膜に負担がかかり、炎症が生じます。
扁平足や回内足(足のアーチが低く、内側に偏りやすい足)など、足部の異常もリスク要因です。
診断
レントゲンでは診断が難しい事が多く、正確な診断にはMRIが必要です。
画像は、典型的なシンスプリントのMRI画像です。脛骨の全面が一部白くなっているのがおわかりいただけると思います。こちらに強い炎症をおこしており、これが痛みの原因となっています。
治療
初期対応
アイシング、安静、練習量の調整が基本となります。
慢性化の場合
異常血管が増殖して痛みが治りにくくなることがあります。運動器カテーテル治療などの血管を対象とした専門的な治療が必要になることもあります。
予防
ふくらはぎの柔軟性を向上させるストレッチや、足部のアーチをサポートするインソールが効果的です。
アキレス腱炎
アキレス腱炎は、ふくらはぎと踵(かかと)をつなぐアキレス腱に炎症が生じる疾患です。ランニングやジャンプ動作を頻繁に行うことで、アキレス腱に過剰な負担がかかると発症します。
症状
アキレス腱周囲の痛みと腫れ、つま先立ちや歩行開始時の痛みが生じます。
症状が進行すると日常動作でも痛みが出現し、患部が肥厚する場合があります。
原因
繰り返しの負担による微小な損傷が蓄積し、炎症が生じます。特に、アキレス腱に負担がかる、陸上競技、バトミントン、サッカーなどの走る機会が多い種目に多い損傷です。
加齢によるふくらはぎの筋肉の柔軟性の低下も影響します。
診断
診断は、問診、アキレス腱の圧痛点の有無ですが、他に、最近は超音波検査により、簡単にアキレス腱の炎症が評価できるようになってきました。
こちら典型的なアキレス腱炎の患者さんの超音波検査になります。赤や青でみえているのは血流信号で、本来アキレス腱には血流信号はない(傍血管組織といいます)ので、血流が見えるだけで異常になります。
治療
初期対応
安静、アイシング、エキセントリックストレッチ(アキレス腱の柔軟性向上を目的とした運動)が有効です。また体外衝撃波を行う施設も増えてきています。
慢性化の場合
異常血管と神経の増殖をターゲットにして、動注治療という、外来で簡易的にできる治療もあります。
足首の痛み 部位別で考えられる疾患
Q.足首の内側が痛む場合、どんな病気が考えられますか?
有痛性外脛骨
足の内側のアーチの後ろに現れる余分な骨による痛みを指します。日本人の約10%が持っていますが、痛みを伴うものを有痛性外脛骨と呼びます。長時間の歩行やランニングで痛みが増強し、特に扁平足の人がなりやすいです。治療は足のアーチをサポートするインソールや、痛みが強い場合は手術を行います。
足底腱膜炎
足の裏のアーチを支える腱膜の付着部の炎症です。朝一歩目や長時間座った後の立ち上がり時に、かかとのやや内側に強い痛みが出るのが特徴です。ランニングや長時間の立ち仕事で悪化します。ストレッチ、足底板による治療が基本で、難治性の場合は体外衝撃波治療を行うこともあります。
前距腓靱帯損傷
足関節外側の最も代表的な捻挫です。足を内側にひねった時(内反捻挫)に起こりやすく、サッカーやバスケットなどで多く見られます。完全断裂すると足関節が不安定になり、慢性的な症状が残ることがあります。程度により、テーピングやギプス固定などの治療を行います。
それぞれについて少なくとも2~5行の文章があるとよいと思います。
足首の外側が痛む場合、どんな病気が考えられますか?
踵腓靭帯損傷
前距腓靱帯と並ぶ重要な外側靱帯の一つで、足関節の安定性を保つ役割があります。前距腓靱帯と同時に損傷することも多く、足首の外側に痛みと腫れが生じます。重症度に応じて、固定や運動制限による治療を行います。
第5中足骨骨折
足の外側にある骨(第5中足骨)の付け根部分の骨折です。足を内側にひねった際に起こりやすく、捻挫と間違われやすいため注意が必要です。外側に圧痛があり、レントゲンで確認します。骨折の部位や状態によって治療方針が変わります。
それぞれについて少なくとも2~5行の文章があるとよいと思います。
足首の前側が痛む場合、どんな病気が考えられますか?
足根洞症候群
足関節の骨の間(足根洞)にある組織の炎症や絞扼(しめつけ)による痛みです。前距腓靱帯損傷との区別が難しく、慢性的な外側の痛みの原因となります。MRIでの診断が有効で、炎症を抑える治療や、症状が強い場合は手術を行います。
リスフラン関節損傷
足の付け根(中足部)にある関節の損傷で、スポーツ活動中の捻りや直接の打撲で起こります。足の甲の痛みや腫れが特徴で、見逃されやすい怪我です。重症度により、固定や手術による治療を選択します。
足関節前方インピンジメント症候群
繰り返しの足関節の背屈(つま先を上げる動作)により、足関節前方に骨棘ができ、痛みや可動域制限が起こる状態です。サッカーやバレエなどで多く見られます。保存療法で改善しない場合は、関節鏡手術を検討します。
足首の痛みにより思いっきり走れなくなってしまった、痛みが慢性化している、などお悩みの方がおられるかもしれません。
痛みは個人個人で感じ方が大きく違い、なかなか人にわかってもらえないものです。
私はこの7年間、どこに行ってもよくならない長引く痛みを抱えた患者様を診療してきました。その痛みの辛さも良くわかります。適切な診断と治療を提示させてもらいます、まずはご相談ください。
著者プロフィール
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オクノクリニック神戸三宮院、宮崎治療院院長。循環機器内科専門医。
医学部卒業後、循環器内科医として心臓血管カテーテル治療に従事。2012年11月~2014年10月アメリカSkirball Center for Innovation (ニューヨーク州、血管内治療デバイス研究施設)に研究留学。2016年3月大学院博士課程修了 研究テーマ「冠動脈ステント留置後の病理組織と光干渉断層法の画像の比較について」。
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