慢性痛治療の専門医による痛みと身体のQ&A

テニス肘(上腕骨外側上顆炎)

Q:ひじが痛くて病院に行ったらテニス肘と言われました。

重いものを持つときに肘が痛い、肘が痛くてペットボトルのふたが開けられない、などの症状はテニス肘(正式名称:外側上顆炎)である可能性が高いです。テニス肘は「上腕骨外側上顆」というところが過敏な状態になり、スポーツや日常生活など様々な動作が痛くなってしまう状態です。

名前は「テニス」と入っていますが、必ずしもテニスをしているひとにだけ生じるわけではありません。ゴルフや釣りでも生じますし、あるいは重いものを持つ仕事でも生じます。また、赤ん坊を抱っこするようになって生じることもあれば、主婦の方で特に負担をかけているわけでもないのに発生することもあります。

テニス肘は放っておいて簡単に治ることもありますが、残念ながらなかなか治らずに時間が経過することも少なくありません。なかなか症状が改善しない方は専門の医療機関への受診が望ましいです。

Q:テニス肘で痛くなる場所はどこですか?

テニス肘の正式名称を「上腕骨外側上顆炎」といいます。テニス肘で痛くなる場所は、この上腕骨外側上顆という場所です。腕組みの姿勢を取った時に、肘の一番前に来る部分に骨の出っ張りがあると思いますが、この部分のことを言います。

ここの骨の出っ張りの場所、あるいはその周辺が痛くなるのがテニス肘です。

上腕骨外側上顆
上腕骨外側上顆
痛みの出る場所
痛みの出る場所

Q:テニス肘の原因は何ですか?なぜなってしまうのでしょうか?

テニス肘の原因の一つは「くり返しの負担」です。テニスやゴルフなどで繰り返し動作をすること、または仕事で重いものを持ったり、赤ちゃんを抱いたり、そのような繰り返しの負担によってテニス肘は生じてしまいます。

もう一つの原因は年齢です。45歳くらいからテニス肘になる人が急に増えます。もちろんそれよりも若くてもかかることはありますが、中年以降に圧倒的に増えます。これには理由があります。テニス肘の正体は「外側上顆」という骨のでっぱりのところに「異常な血管が増えてしまう」ことだと考えられています。

この異常な血管というのは、実は中年以降で増えやすくなってしまうのです。しかも血管だけでなく神経線維も一緒に増えてしまうため、痛みの原因になります。異常な血管が肘にできると「テニス肘」になり、肩にできると「四十肩・五十肩」と言われる状態になります。この「異常な血管」について詳しく知りたい方はこちらの記事「治りにくい痛みの原因、「モヤモヤ血管」とは?」もどうぞ。

テニス肘のカテーテル治療について私(医師:奥野祐次)が書いた論文概要はこちら(治療成績について)

Q:テニス肘になって半年が経過します。さまざまな治療をしましたが治らないのですがなぜでしょうか?

テニス肘は軽症であれば一定の期間(数週間)で治りますが、重症となると簡単には治りません。

治療をしているのに治らない、という場合は、いま受けている治療が「痛みの原因」に正しくアプローチしていないからかもしれません。

先ほどの記事でも述べていますが、テニス肘の痛みの原因は「異常な血管とその周りに増えた神経」です。この痛みの原因にアプローチしないと痛みは治りません。半年経過しているのなら重症である可能性がありますから、ぜひ専門の医療機関を受診されることをお勧めします。

テニス肘への5分でできる動注治療の治療実例

Q:テニス肘に効くストレッチがあれば教えてください。

ここでは2つのストレッチを紹介します。 いずれもやり始めは少し痛みがあるかもしれませんが、15秒ほど続けるのを1回とし、1日に3-4回してみてください。

ストレッチその1
痛いほうの手を前方に肩の高さまで持ち上げます。手のひらを下にむけた状態で肘は伸ばします。反対の手で、痛いほうの手の甲を下向きに抑えます。すると前腕の一部の筋肉が伸びて、張りを感じると思います。この状態で15秒伸ばします。

手のひらを下にして前に伸ばします
手のひらを下にして前に伸ばします
反対側の手で指~手の甲をつかみます
反対側の手で指~手の甲をつかみます
ゆっくり指と手首を曲げます
ゆっくり指と手首を曲げます

ストレッチその2
痛いほうの手を前方に肩の高さまで持ち上げます。手のひらを上に向けた状態にします。反対の手で痛いほうの手の指先を下向きに抑えます。すると前腕の一部の筋肉が伸ばされて張りを感じると思います。この状態で15秒伸ばします。

手のひらを上にして前に伸ばします
手のひらを上にして前に伸ばします
反対側の手で指をつかみます
反対側の手で指をつかみます
ゆっくり指と手首を反らします
ゆっくり指と手首を反らします

Q:肘の内側が痛いのですが、これもテニス肘でしょうか?

テニス肘は、肘の外側に痛みを感じます。肘の内側に痛みがある場合は、正式名称は「上腕骨内側上顆炎」といい、通称は「ゴルフ肘」などと呼ばれています。

上腕骨内側上顆
上腕骨内側上顆

ただしテニス肘と同じように、このゴルフ肘も必ずしもゴルフをしている人だけに見られる症状ではありません。

内側の痛みの場合は対処法となるストレッチや、医療機関での治療方針が変わってきます。治りにくくてお困りの方はぜひ専門の医療機関にご相談ください。

Q:テニス肘に注射を受けようか迷っています。注射は効きますか?

テニス肘に注射をする場合、注射の中身と打つ場所によって効果が変わってきます。ステロイドの成分の入っている注射を痛い場所に打つと短期的には効果が得られます。ただし重症の場合は、しばらくして痛みがぶり返してしまい、繰り返し注射している方が時々います。

ステロイドは繰り返し打つと組織が弱くなってしまうため、3回くらいまでにとどめておいたほうが良いです。自分のテニス肘が重症かどうかを判断するのは専門の医療機関を受診してみてください。

Q:テニス肘に湿布は効果がありますか?

テニス肘の場合は湿布をしてもあまり効かないことがほとんどです。効果が全くないわけではないですが治癒する手段としては見込めません。特に重症の場合は効果が期待できません。なるべく専門の医療機関で適切に受けることが望ましいです。

Q:テニス肘になって半年が経ちますが改善するどころか悪化しています。日常生活などで悪化の原因になることはありますか?どうしたら進行を予防できますか?

テニス肘の中には「軽いテニス肘」と「重症のテニス肘」があり、重度のテニス肘は半年しても治らないどころか、どんどん悪くなって行ったりします。

どうして重症になってしまうかはいろいろな要素があります。テニス肘は肘に負担が繰り返しかかることが原因になりますから、そのような負担(重いものを持つ、運動を繰り返す)が大きいほど重症になりやすいです。
また、体質もあります。糖尿病や甲状腺の病気を持っていると重症化しやすいです。

できるだけ重症にならないようにするには、
①肘に痛みが出るような負担のかかる動作はなるべく避ける
②体質改善に努める
③ストレッチやバンドなど、テニス肘に良いとされているグッズやセルフケアをする

などの方法があります。このサイトの他のページも参考にしてください。

Q:テニス肘にはテーピングやサポーターなどした方が良いでしょうか?そのほかに何か良いグッズはありますか?

テニス肘で最もお勧めできるグッズは「バンド」です。これは肘から少しだけ手の方に近づいた前腕の一部にぐるっと巻いて軽く締め付けるものです。テーピングやサポーターなどの方法よりもこのバンドがテニス肘の改善には効果的です。

バンド

どうしてこのバンドが効果的なのか?については、テニス肘の痛みの原因となっている「異常な血管」と深い関係があります。ご興味のある方はこちらの記事「モヤモヤ血管を減らすグッズ・・・バンド」もどうぞ。

Q:テニス肘になり、リハビリや注射をしましたが改善しません。さらなる治療にはどういうものがありますか?

重症で注射でも改善が十分ではない場合は、肘の動注治療という特殊な治療法があります。テニス肘の痛みの原因になっている異常な血管を標的とした治療で、完治を目的としたものです。肘の動注治療についての治療実例はこちら「テニス肘への5分でできる動注治療の治療実例」をご参考にしてください。

メスを入れる外科手術という選択肢もありますが、手術の場合痛みの出ている腱を切ってしまうものです。これはもともとあった組織を切断して除去してしまうというもので、確かに受ける前よりは痛みは減るのですが、あとあとになって(2-3年後以降)痛みが残ってしまったり、違和感が残ることがあります。また入院しなければならないためあまりお勧めしません。

正常な肘の血管
正常な肘の血管
テニス肘の患者さんの血管
テニス肘の患者さんの血管

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痛みをもたらす病気・けが

執筆 奥野祐次(医師)

医師 奥野祐次

医療法人社団 祐優会 総院長
オクノクリニック 院長
慶応義塾大学医学部卒業
慶応義塾大学医学部医学研究科修了

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