慢性痛治療の専門医による痛みと身体のQ&A

腱鞘炎(ドケルバン病)

Q:腱鞘炎(ドケルバン腱鞘炎)と言われました。どんな病気ですか?

手腕の使いすぎや外傷により、手首の腱に痛みや腫れが生じる病気です。特に手首の親指側に生じる腱鞘炎をドケルバン腱鞘炎(De Quervain's Tenosynovitis)と呼びます。

腱を包んで保護している腱鞘という部分に炎症や痛みが生じる結果、手首を回す、こぶしを握るなどの動作で痛みが生じます。ゴルフやテニスなどのスポーツやパソコン・スマホ操作、庭仕事、赤ん坊を抱くなどの繰り返しの負担で生じます。

腱鞘炎

Q:ドケルバン腱鞘炎が起きる場所はどこですか?

手首の親指側に位置する上の図の2本の腱は、通常、親指の付け根につながる小さなトンネル(第1コンパートメントと呼ばれる)の中を滑らかに動きます。手の特定の動作を繰り返すと、2本の腱の周りの鞘が刺激され、肥厚と腫れが起こり、中を通る腱の動きが制限されます。

Q:腱鞘炎の症状は?どのような痛みが出ますか?

ドケルバン腱鞘炎の症状としては
・手首の親指側の痛みや腫れ
・手首を回すとき、ものをつかむ時、こぶしを握るなどの動作が取りづらい
・親指を動かす時のツッパリ感、引っかかる感覚

などが挙げられます。

また治療せず放置すると手首だけでなく親指や肘にかけても症状が広がることがあります。

Q:腱鞘炎はなぜ起きるのですか?

過度の使用が発症の要因となります。例えばスマホの片手操作やパソコン使用、ピアノ演奏、ラケットやクラブを使うスポーツ(テニスやゴルフ等)、乳幼児を抱く、庭仕事などで指や手首を多く使っている場合に炎症が起こりやすいと言われています。

■リスク因子
・年齢(30代から50代がもっともかかりやすい)
・女性
・妊娠
・赤ちゃんを繰り返し抱っこすること
・手首を繰り返し使うスポーツや仕事
・関節リウマチ
・糖尿病

Q:腱鞘炎はどうやって診断しますか?

手首の親指側を押してみて痛みがでるかどうか(圧痛の有無)を調べます。
また、下図の①から③の動作をしてもらい痛みが誘発されればドケルバン腱鞘炎である可能性が高くなります(フィンケルシュタインテスト)

フィンケルシュタインテスト
フィンケルシュタインテスト

また超音波診断装置(エコー)で腱鞘が腫脹していることや、血流信号が増加していることでも診断できます。

Q:腱鞘炎は放っておくとどうなりますか?

治療開始のタイミングが遅れれば遅れるほど、完治までに時間がかかることが知られています。また、放置すると痛みの範囲が広がり、手首だけでなく親指そのものや前腕にも痛みが生じるようになります。また、発症初期は一時的に腫れていただけの腱鞘に線維が長期に溜まることで固くなり、手術をしないと治らない状態になり得ます。このため早めに下記に記載する治療を開始することが望ましいです。

Q:腱鞘炎の治療にはどのようなものがありますか?

安静にし、原因となっていた動作を減らします。
サポーターで親指や手首の動きをおさえます。
抗炎症薬(ロキソニンやカロナールなど)を内服します。
ステロイド注射をコンパートメント内に行います(効き方には個人差がありますが、長期に効くことがあります。ただし繰り返し何度も受けることは勧めません)。

このような治療方法でも症状が軽くならない場合は、このトンネルを開いて腱の通るスペースを作る手術が必要になります。担当の手外科専門医とよく相談して下さい。

また最近では手術をしなくても5分ほどで終わる簡単な動注治療という治療法でも完治できることが報告されています。詳しくは以下のの治療実例も参考にされてください。

【治療実例】手首の腱鞘炎(ドケルバン病)に対して、動注治療が効果的だった一例

Q:腱鞘炎は治すのにどれくらい時間がかかりますか?

早めに治療を始められた場合、4から6週間で症状が改善します。また、先述した動注治療を受けることでより早く痛みや腫れが改善します。

妊娠中に腱鞘炎になった場合、出産まで、または授乳が終わる頃に治ると考えられています。

Q:腱鞘炎は冷やしたほうがいい?温めたほうがいい?

発症初期のころは冷やすことで痛みや腫れが緩和されることが多いです。ただし万能な対処方法ではありません。ご自身で試してみてあまり変化がないようなら、そのまま漫然と続けずに専門の医療機関の受診を検討してください。

Q:腱鞘炎になりステロイド注射をしましたが効果がなく治りません。主治医の先生は手術を勧められました。何とか手術をしないで治す方法はありませんか?

ドケルバン腱鞘炎で整形外科に行くとステロイド注射を勧められますが、すべての人が完治するわけではありません。治りにくい腱鞘炎の方は、下の画像のように、患部に異常な血管ができてしまい、神経と一緒になって増えてしまっていることがほとんどです。この場合、この異常な血管(モヤモヤ血管)を減らさないと改善しません。

モヤモヤ血管

最近になって、腱鞘炎でできた異常な血管を標的とした動注治療という方法で開発され、5分ほどの短い時間で終わり、負担なく改善させることができることから注目されています。
動注治療の詳細を知りたい方は下記の治療実例も参考にしてください。

【治療実例】手首の腱鞘炎(ドケルバン病)に対して、動注治療が効果的だった一例

動画でも解説しています。
・ドケルバン病の症状や原因
・診断方法
・治療方法(ステロイド注射、動注治療)

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痛みをもたらす病気・けが

執筆 奥野祐次(医師)

医師 奥野祐次

医療法人社団 祐優会 総院長
オクノクリニック 院長
慶応義塾大学医学部卒業
慶応義塾大学医学部医学研究科修了

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