サッカー選手の股関節の痛み。考えられる病気と、その原因と治療法。
サッカー選手が股関節が痛いといったらこの病気であることが多いというものを4つご紹介します。
グロインペイン症候群
症状
サッカーや、バスケットボールなどの運動を激しくされている方に起こる股関節部に起こる痛みを総称してグロインペインと言います。グロインペインのグロインとは、英語で人のからだの太ももと下腹部の間にある部分を指します。 サッカー選手や、他スポーツを激しくする選手に多く出現し、20歳前後の比較的若い方に好発する疾患です。
原因
サッカーや、他にも激しいスポーツをされている方、股関節部に負担がかかるような、急激に走ったり、止まったりを繰り返し必要とするスポーツに好発します。またタックルのような動作で股関節周辺に強く外的な力が加わることでも発症します。
診断方法
レントゲンで骨の異常がないか確認し、MRIで炎症を起こしている場所の特定を行います。特にMRIで炎症が強い場所は、T2というモード(水成分が白くうつるモード)で白くうつることが特徴です。最近では超音波検査でも筋肉や腱、骨の以上を特定できるようになってきています。
治療法
- 安静
日常生活で痛みが出現する場合は、まずはスポーツはやめて、日常生活でも痛みのでる動作を控えます。日常生活で痛みが消失してから、スポーツの復帰に向けて負荷をしていくことが望ましいです。 - リハビリ
リハビリテーションは、股関節をしっかり動かす訓練や筋力を上げる訓練、筋肉を伸ばすストレッチを痛みが出現しない範囲内で始め、その後水中歩行やエアロバイク、ジョギング、ボールキックなどの股関節を構成する筋肉の練習に移ります。再発する事も多いため、痛みが出現しているのに無理をして負荷をかけるのは勧められません。 - 手術
保存的な治療で痛みが改善しない場合、手術が考えられます。ただし、痛みの原因が明確でないため、これまで様々な手術方法が試みられてきていますが、明確に決まったものはありません。
予防
グロインペインの予防には股関節の周りの筋肉を柔らかく保つためのストレッチや、体幹部や、股関節周りの筋肉を強化することが重要です。
肉離れ
症状
肉離れとは正式には、筋肉の断裂を指します。
好発部位はふくらはぎの上部1/3のエリアです。他にも大腿部、とくに大腿四頭筋、後側ではハムストリングの部分に断裂を認めることが多いです。
診断
スポーツ活動中に大きな力が加わった場合、特定の部位に痛みが発生することがあり、その状況から判断することが可能です。また断最近では超音波検査の精度が上がっており、確認することも可能となってきています。断裂部が窪んでいることを手で触診することで診断が可能なこともあります。
原因
筋肉が伸びている状況で、収縮しようとして大きなちからが掛かるときに、裂けることが多いです。
治療法
大腿後部の筋肉であるハムストリングスの筋損傷が発生した際は、痛みを感じる部位に冷却療法(アイシング)、また圧迫をします。 圧迫には固定するためのエラスティックバンドが良いです。ただし、圧迫が過度に強いと局所的な血流が遮断される危険があるため、適切な強さでの圧迫が必要です。
重要なのは、筋損傷を受けた際にあまり筋肉を適度に緊張させることで、ハムストリング の損傷部位のさらなる開放を防ぐとともに、止血効果が増大します。他の筋肉の筋損傷においても、適度な筋張力を持続させた状態での応急処置が推奨されます。
予防
筋肉が固まり、その柔軟性が失われると、急激な動作についていけず、肉離れを引き起こすリスクが高まります。運動前には、ウォーミングアップをし、筋肉の温度を上げ、緊張を解消しましょう。
単純性股関節炎
症状
単純性股関節炎は、子供の股関節の痛みに関して最もよく見られる病気です。 3歳から10歳が好発年齢で、男の子に特に一般的です。 比較的頻度の高い疾患で、股関節に炎症が起こり、関節の中に液体が貯留します。股関節を包んでいる組織が炎症により一部固くなり、緊張することで、関節の動きが制限され、動かすときに痛みが生じることがあります。
痛みを避けるために足を引きずるような歩き方(跛行)を示すことがあります。痛みの影響で股関節の動きが制約され、安静時には股関節が曲がったり、内側に向かったりする姿勢をとることが多いです。
原因
風邪のような上気道の感染症や、運動・スポーツに関連した軽い怪我が原因として多く挙げられます。股関節から膝までの部分に痛みが出ることが多く、痛みのための跛行や運動中の痛み、股関節の動きの制限などが認められます。
治療法
保存的加療で、1~2週間の安静で自然と治ることが多いです。活動、特に立ったり歩いたりするのを極力避けることが求められます。1~2週間の休息で治ることが多いものの、時には1ヶ月ほど時間がかかることもあります。痛みに応じて、薬や湿布が出されることもあります。 私たちの施設では、股関節の問題やそれに関連する問題の対策として、ストレッチや筋力向上の指導、セルフエクササイズなど、理学療法士によるリハビリテーションを提供しています。さらに、治癒を早めるために超音波治療や低周波治療(電気治療)が行われることもあります。
痛みを感じている間は、原則安静が一番の治療です。スポーツや学校など、普段の活動も制限し、できるだけ安静にして回復を促すことが大切です。日常生活での動きも、股関節や膝に過度な負担をかけないよう心がけることが重要です。
恥骨結合炎
原因・症状
恥骨は、骨盤の前部正中に配置され、左右の恥骨結合部は恥骨間円板という軟骨性の構造で連結されています。恥骨部には、腹直筋、各内転筋群、恥骨筋など、多数の筋肉が付着しています。過度の運動ストレスにより、恥骨結合部に炎症が生じると、恥骨結合炎が発症します。多くの場合、ランニングやキック動作の反復により発症することが多いです。
恥骨結合部の炎症に起因する疼痛は、初期には恥骨部に局在しますが、慢性化すると、鼠径部へと放散することが一般的です。 別の記事で記載しましたグロインペインは、筋肉の連動性の欠如、協調運動の低下、筋力の減退が主因としており、恥骨結合炎もこの範疇に該当すると考えられます。
サッカーやバスケットボールなどをしている学生(小学校、中学校、高校)に好発します。
診断方法
触診により恥骨結合部の圧痛店を確認します。またレントゲンで骨折を合併していないことを確認し、さらに精査する場合はMRIで恥骨部の炎症の有無を確認します。
治療法
恥骨結合炎の治療は、股関節を取り巻く筋肉の柔軟性の増進や筋肉の連動性・協調性の強化を中心に行います。 炎症が強く、関連動作時に疼痛が増強する場合は、当該部位の休息が優先され、硬縮や機能低下がみられる筋肉の評価と介入が求められます。
スポーツをする方にとって、股関節の痛みはときに選手生命を左右することもあります。早期発見し、リハビリテーションなどの適切な治療を早期に行うことで、悪化することを防げる事が多いです。もしお困りの方がおられましたら、ご気軽にご相談ください。
著者プロフィール
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オクノクリニック神戸三宮院、宮崎治療院院長。循環機器内科専門医。
医学部卒業後、循環器内科医として心臓血管カテーテル治療に従事。2012年11月~2014年10月アメリカSkirball Center for Innovation (ニューヨーク州、血管内治療デバイス研究施設)に研究留学。2016年3月大学院博士課程修了 研究テーマ「冠動脈ステント留置後の病理組織と光干渉断層法の画像の比較について」。
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