膝に水が溜まって痛い、曲げにくい。原因や症状、治療法などを医師が解説

膝が腫れて曲げ伸ばししにくい、歩くと痛い、膝のお皿の周りが張っていると感じる場合、膝に水が溜まっている可能性があります。膝に水が溜まるとどんな感じなのか、どのように治療すればよいのか、痛みが出る理由、検査、再発しないようにするためのセルフケアを医師が解説します。

膝に水が溜まる

膝に水がたまるとどうなる?症状について

症状

膝に水が溜まる初期症状としては、膝を伸ばした時に、膝のお皿のやや上の部分(体幹より)がすこし腫れます。左右くらべてみると、わかることが多いです。

進行してくると以下のような症状がでます。

  • 腫れ・張り:膝全体がふくらみ、触ると“パンパン”した感じがする。
  • 曲げにくさ:正座やしゃがみ込むことができない、できたとしても制限を感じる。
  • 痛み:歩行・立ち上がり・階段で痛い、動かすとズキッとする。
  • 熱感:膝全体が熱を持った感じがする。膝がなんとなくあつい。赤く腫れている。

重要 膝が痛いのは水が溜まっているからではありません。

膝に水が溜まるのは、炎症を起こした結果、血管(主に滑膜と呼ばれる部分に)が増えて、血管からお水が漏れやすくなり起こります。(専門的には血管透過性があがるといいます)

痛みは水が漏れるから起こるのではなく、血管が増えることで神経が興奮することで起こっていると考えられています。

つまり、膝に負担がかかる→炎症をおこして血管が増える→神経が興奮していたい、血管からお水が漏れる ということになります。

溜まる場所

下の図に示しているように、膝の関節には関節腔と呼ばれる場所があり、滑膜という膜で囲まれています。膝のお皿の上付近は比較的スペースがあり、こちらに水が溜まって気づくことが多いです。

滑液 ここが水が溜まる場所
膝に水は何cc溜まる?

正常な膝にも水(関節液)は存在し、数ml程度です。
水がたまると、数十ml(多いと100ml以上)まで増加することがあります。

膝に水が溜まる原因

若い人の場合・・・外傷(スポーツなど)

半月板損傷、靭帯損傷、骨挫傷などで膝に強い炎症が起こると、水が溜まることがあります。外傷直後に急激に腫れが強くなると、血液が混じる(血性関節液)のこともあります。

  • 半月板損傷:膝のクッションである軟骨の破損
  • 靭帯損傷:膝を支えるベルトの役割をする組織の断裂
  • 骨挫傷:レントゲンには映りにくい骨内部の打撲・出血

溜まっているものが水ではない場合は要注意!

水ではなく「血液」が溜まっている可能性

怪我をした直後(受傷から数時間以内)に急激に膝がパンパンに腫れてきた場合、溜まっているのは透明な水ではなく、血液(血性関節液)である可能性が高いです。 これは関節内で血管が切れて出血しているサインであり、前十字靭帯断裂や半月板損傷など、手術が必要な重傷であるケースも少なくありません。「ただの打撲」と自己判断せず、早急な受診が必要です。

40歳以上の場合・・・変形性膝関節症

中高年の方の膝の水で最も多い原因です。 一般的には「加齢で軟骨がすり減り、炎症が起きる」と説明されますが、なぜ炎症が起きると水が溜まるのでしょうか? 最新の知見では、以下のようなメカニズムが考えられています。

長年の負担によって膝内部で「慢性的な炎症」が続くと、身体は新しく細かい血管(モヤモヤ血管)を異常に増やしてしまいます。これらの新しい血管は、壁が非常にもろいという特徴があります。そのため、血液中の水分(血漿成分)が血管の壁からジワジワと関節内に漏れ出してしまう(先ほど解説しました、血管透過性が上がる、と専門的には言います)のです。

つまり、膝の水は「湧いてくる」というより、「異常な血管から漏れ出ている」状態と言えます。この場合、水を抜いても異常な血管が塞がらない限り、またすぐに水が溜まってしまいます。

尿酸値が高い方・・・痛風

「痛風」というと足の親指の付け根が痛くなるイメージが強いですが、実は膝関節にも発作は起こります。

血液中の尿酸値が高い状態(高尿酸血症)が続くと、関節の中に尿酸が結晶となって蓄積します。ある日突然、この結晶が剥がれ落ちると、白血球がそれを異物とみなして攻撃し、激しい炎症(痛風発作)を引き起こします。

ある日突然激痛に襲われるのが特徴で、朝起きたら突然動けなくなるくらい痛くなることがあります。膝全体が赤黒く腫れあがり、強い熱感を持ち、また変形性膝関節症とは異なり、「風が吹いても痛い」と言われる通り、指一本触れられないほどの激痛です。

水(関節液)が「白く濁る」のが特徴

痛風発作で膝に水が溜まった場合、その関節液は非常に特徴的です。 通常の関節液は透明な黄色ですが、痛風の場合は「白く濁った液(白濁)」や、チョークの粉を溶かしたような液体が引けます。これは尿酸の結晶が大量に含まれているためです。

痛風の時はマッサージ厳禁

膝が腫れているからといって、痛風発作中にマッサージをするのは危険です。関節内の炎症を悪化させるだけでなく、痛みがさらに激化してしまいます。痛風の疑いがある場合は、触らず・揉まず、冷やしてすぐに整形外科を受診してください。

人工関節置換後の方・・・反復性血腫

人工関節の置換術を受けた後に(受けてない方でも起こることがあります)、膝の中に出血を繰り返し、血液が溜まってしまう疾患です。手術を受けた方の約0.3%〜1.6%に起こるとされており、手術後に厚くなった滑膜(膝の組織)と人工関節が繰り返し衝突することが主な原因と考えられています。放置すると関節の組織がダメージを受けたり、可動域が制限されたりすることがあります。

また、人工関節の手術をしていない場合でも、血友病などの血が固まりにくい持病がある方や、血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)を飲んでいる方にも起こりやすい傾向があります。

膝の痛みや腫れを繰り返す場合は、注射で血を抜く治療のほかに、出血の原因となっている異常な血管をカテーテルで塞ぐ治療(血管塞栓術)が選択されることもあります。

膝に水が溜まる原因 早見表

対象となりやすい方疾患名説明
若い人の場合半月板損傷膝のクッションである軟骨の破損。
靭帯損傷膝を支えるベルトの役割をする組織の断裂。
骨挫傷レントゲンには映りにくい骨内部の打撲・出血。
40歳以上の場合変形性膝関節症中高年の方の膝の水で最も多い原因。
尿酸値が高い方痛風膝全体が赤黒く腫れあがり、強い熱感を持ち、また変形性膝関節症とは異なり、「風が吹いても痛い」と言われる通り、指一本触れられないほどの激痛。
人工関節置換後の方反復性血腫人工関節の置換術を受けた後に(受けてない方でも起こることがあります)、膝の中に出血を繰り返し、血液が溜まってしまう疾患。

診断方法

当院では、以下の検査を組み合わせて、なぜ水が溜まっているのかを正確に診断します。

問診・触診腫れの場所、熱感の有無、膝のお皿の動きを確認します。
レントゲン検査骨の変形や隙間の狭さを確認し、変形性膝関節症などを診断します。
関節液検査水が溜まっている場所に針を刺して水を抜き、液体の色や性状を調べます。
MRI検査レントゲンには写らない、軟骨下骨、半月板、靭帯、滑膜の状態を詳細に確認します。原因不明の痛みを特定するために非常に重要です。
血液検査炎症反応をみて、関節リウマチや、感染症の可能性をチェックします。

診断チェックリスト

  • お皿を押すとプカプカ浮く感じがする
  • 左右の膝を見比べると大きさが違う、
  • 膝に熱っぽさがある、赤く腫れている

※これらに当てはまる場合は、早めの受診をお勧めします。

治療方法

安静と冷却

急性の炎症や怪我の場合は、まず安静にし、患部を冷やして(アイシング)炎症を抑えます。

薬物療法

消炎鎮痛剤(痛み止め)の飲み薬や湿布を使用して炎症を鎮めます。

リハビリテーション(運動療法)

膝に荷重がかった時にどのように負担がかかっているかをチェックして、関節への負担を減らします。再発予防のために重要な治療です。

関節液の穿刺・吸引

水が大量に溜まって痛みが強い場合、注射器で水を抜きます。「抜くとクセになる」と言われる方がおられますが、適切に原因にアプローチすれば、クセになることはありません。水を抜くことで関節内の圧力が下がり、痛みや可動域が改善します。

装具療法

サポーターや足底板(インソール)を使用し、膝の安定性を高めたり、O脚を補正して負担のかかる位置を変えたりします。

手術療法

保存療法(手術以外の治療)で改善が見られない場合や、損傷が激しい場合は、関節鏡視下手術や人工関節置換術などが検討される場合もあります。

予防方法

体重コントロール

体重が1kg増えると、歩行時の膝への負担は3kg増えると言われます。適正体重を保つことが一番の予防です。

柔軟性の向上

膝だけでなく、股関節や足首の柔軟性を高めることで、膝への負担を分散させます。

自分でできる対処法

自分で治す マッサージ・・・膝の周りをさする

膝の周りをさするマッサージ

両手のひらを膝の内側と外側にあてて、膝下から上までゆっくりとさすり上げます。

膝周りの血流を良くし、余分な水分の吸収を促すマッサージです。
※炎症が強い時期(熱を持っている時)は控え、医師の指示に従ってください。

装具・サポーター

膝の装具

膝の安定性を高める装具も有効です。比較的しっかりと関節を固定するもの、着用して楽だなと感じるものがおすすめです。

膝に水が溜まる Q&A

膝に水が溜まったら、自然治癒しますか?どのくらいの期間で自然になくなりますか?

軽度であれば自然に吸収されることもありますが、原因が解決しない限りは、水は溜まり続けます。症状が続いたり、痛みを伴っている場合は受診をご検討ください。

膝に水がたまらないようにするにはどうすればいいですか?

膝の負担を減らすことが第一です。 体重の管理と、膝周りの筋力トレーニングが最も有効です。また、正座や和式トイレなど、深く膝を曲げる動作を避ける生活様式への見直しも効果があります。

何科を受診すればいいですか?

我々のクリニック、もしくは整形外科を受診してください。その中でも、膝関節を専門とする医師がいるクリニックが望ましいです。MRI設備がある施設であれば、より詳しく原因を特定できます。

膝に水が溜まったときの湿布はどこに貼ればいいですか?温湿布と冷湿布どちらが良いですか?

痛みを感じる場所に貼ってください。急に腫れて熱を持っている場合は「冷湿布(またはアイシング)」、慢性的な痛みや重だるさの場合は「温湿布」で血流を良くするのが基本ですが、迷う場合はご自身が気持ち良いと感じる方で構いません。かぶれに注意しましょう。

ランニングで膝を痛め、症状が長引いている方へ

「何度も水を抜いているのに、またすぐ溜まってしまう」 「ヒアルロン酸注射を続けているが、痛みが取れない」もしあなたがそのようなお悩みをお持ちなら、それは「モヤモヤ血管」が原因かもしれません。

膝の炎症が長く続くと、患部に異常な「モヤモヤ血管」ができ、そこから神経過敏物質が放出され続けることが近年の研究でわかってきました。この場合、単に水を抜くだけでは根本解決になりません

当院では、通常の整形外科的治療に加え、この「痛みの根本原因」にアプローチする専門的な治療も提案可能です。 膝の水や痛みから解放され、ご自身の足で元気に歩き続けるために。まずは一度、MRI検査で「なぜ水が溜まるのか」をしっかり調べてみませんか?

いつでもお気軽にご相談ください。

著者プロフィール

澁谷 真彦
澁谷 真彦院長
オクノクリニック神戸三宮院、宮崎治療院院長。循環機器内科専門医。

医学部卒業後、循環器内科医として心臓血管カテーテル治療に従事。2012年11月~2014年10月アメリカSkirball Center for Innovation (ニューヨーク州、血管内治療デバイス研究施設)に研究留学。2016年3月大学院博士課程修了 研究テーマ「冠動脈ステント留置後の病理組織と光干渉断層法の画像の比較について」。