第54回日本人工関節学会の発表内容のご紹介

第54回日本人工関節学会が、2024年2月23日(金)~24日(土)に国立京都国際会館で開催されました。当日発表した内容を紹介いたします。

はじめに:
人工膝関節置換術(Total Knee Arthroplasty, TKA)後に発生する反復する関節内血腫は、の発生率は術後0.3-1.6%と報告されており、膝の痛みが再発する原因となる。保存的治療では約半数の症例で再発を繰り返し、結果として再手術が必要となることがある。
主な原因として、血管が増生し、肥厚した滑膜に刺激が加わる事で出血すると考えられている。
治療方法として、選択的動脈塞栓術(Genicular Artery Embolization, GAE)は、比較的侵襲度が低い治療法であり、治療の選択肢として考慮されている。
本研究では、TKA後の反復する関節内血腫に対してGAEが有効であった1例を報告する。

対象と方法:
症例は2017年に右膝の重症変形性関節症のため全人工膝関節置換術(TKA)を受けた70歳代女性である。術後4年間は特に問題なく過ごしていたが、突然の膝の腫れと痛みを訴えてかかりつけ医を受診。30mlの血性関節液が関節腔内から吸引され、一時的に症状は改善した。しかし、その後も腫脹と痛みは繰り返し発生し、1ヶ月後には45mlの血性関節液が再度吸引された。X線検査では人工関節のアライメントの異常は認められなかった。これらの症状が半年間で4回反復し、当院へ塞栓治療目的に紹介となった。
超音波検査では、膝蓋上嚢に液体の貯留が見られ、反復する関節内血腫が疑われたため、2023年1月にGAEを施行した。

Genicular artery embolization(GAE:選択的血管塞栓術)
右大腿動脈を局所麻酔した後、順行穿刺施行。3Fシース挿入後、3Fカテーテルを用いて、大腿動脈―膝下動脈を造影後、明らかな異常濃染を認めた外側上膝動脈、外側下膝動脈、内側上膝動脈を治療した。塞栓にはマイクロスフェア(embosphereR)を5倍希釈し、0.2ml-0.4mlを各動脈に使用し、濃染の消失をエンドポイントとした。塞栓後、穿刺部は用手圧迫し、1時間安静ののち独歩退院となった。

結果:
GAE施行後1年間関節内血腫の再発は認めていない。手技に関連する合併症はなく、患者は手術当日から通常の日常生活を再開することができた。

考察:
TKA後の反復性血腫の治療方針としてはまず保存療法が選択される。しかし半数の症例で再発を繰り返すと報告されている。次の選択肢として、滑膜切除術が挙げられるが、侵襲度が高い。GAEは局所麻酔で施行でき、治療時間は習熟した術者が行えば、30分程度で終了し、独歩で術同日退院できる、侵襲度の低い治療である。再発を繰り返す症例の治療選択肢としてまず考慮すべき治療方法である。

結語:
本報告は、選択的動脈塞栓術が人工膝関節置換術後に発生する反復する関節内血腫の治療において有効かつ安全な治療となり得る。